真のSEOを達成するための構築手法

2009年2月23日(月)
中島 公平

コンテンツ管理、運用体制・ルールの整備

 晴れて日の目を見たWebサイトですが、これはゴールではなくスタートに過ぎません。ここからが本当のサービスの始まりです。

 情報鮮度の確保は、利便性の高いWebサイトが備えるべき条件の1つです。適切な更新頻度を保つためには、コンテンツの管理方法や運用体制についてあらかじめ準備しておく必要があります。Webサイトの構築と並行して準備を行い、公開と同時に管理・運用に入れる体制を整えておきましょう。

 本稿ではマルチエントランス構造の構築手順を中心に説明してきましたが、コンポーネントという情報単位について今一度触れておきたいと思います。コンポーネントとは、共通情報の一元管理という考え方に基づくものであり、より迅速な情報発信のために欠かせない工夫の1つです。

 複数のページに掲載される情報を1回の作業によって更新できる利便性は言うまでもありません。更新作業に要する時間を削減するという取り組みは、運用業務の効率化だけではなく、ユーザーにとっても問題解決の迅速化というメリットがあるということを肝に銘じて業務に当たるべきです。

 運用体制・ルールを事前に整備することも、更新効率を上げるための重要な準備のひとつです。Webサイトに掲載されている情報の主管部署や責任者が明確にされていれば、さまざまな状況の変化にも柔軟な対応が可能です。しばしば運用スタッフの急な変更に伴い、運用の現場に混乱が生じる、ということがあります。

 このような場合、明確に定義された体制やルールが存在していれば、この問題を回避し、シームレスな担当者移行を実現することができるようになります。また、大人数での運用を行っている場合には、メンバー間での意思疎通、意識共有を促し、万が一問題が発生しても責任の所在を明確に切り分けることによって、迅速な問題解決を図ることができるようになります。

 ユーザーの問題解決ツールとして有効に機能するWebサイトを保持しようと努めることは、Webサイトの中だけではなく、それをサービスとして提供する側にも必要な取り組みなのです。

 これらの取り組みは、ツールとしてのCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を導入することによって、さらに効率的に実現することが可能です。情報をコンポーネントとして管理する方法や、体制・ルールのシステマチックな運用は、CMSと極めて親和性が高く、スムーズなシステム移行が可能です。1000ページを超えるような大規模Webサイトが前提であれば、将来的な運用を見越したCMSツールの導入も有効なWebサイト戦略といえます。

 問題解決のための努力を怠らない姿勢は必ずユーザーに伝わります。このような姿勢はビジネス成果に対して、きっと良い影響をもたらすことでしょう。

効果測定

 公開後に行うべきもう1つの重要な作業として、効果測定があります。掲げた目標に対してどの程度の結果がもたらされたのか、これを明確にしなければせっかくのWebサイトもその存在意義を証明することができません。

 Webサイトの構築前に仮説としての目標設定が必要であることは既に述べたとおりです。企業としてどこにビジネス成果を見据え、何をもって成果とするのか。それらが事前に定義されていればこそ、そして目標に向けて構築を進めてきたからこそ、この段階で自信を持って測定を行うことができるはずです。SEO施策に対する明確な費用対効果を計る意味でもここでの測定は重要です。SEO施策への投資が成功だったのか失敗だったのか、事前に定めた測定方法に基づいた明確な判断が求められます。

 こうして得られた測定結果によって、次にとるべきアクションが明確になります。もし、目標の数値を達成できていない場合は、どこに問題があったのかを分析し、新たに仮説を立てることによって次の行動指針を導くことが可能です。目標を達成できていたのであれば、その成功をより大きなものとすべく、次なる目標を掲げてさらなるステージアップを図ることが可能になります。いずれの場合においても、やってきたことの結果を正しく評価することによって、今後の進路を明確に示してくれます。

 Webサイトとは育てるメディアであり、その完成度を高めるためには細かいチューンアップが必要です。どんなに完成度が高いといわれているWebサイトであっても、放置されたままではユーザーの変化に対応できず、時代に取り残されてしまいます。そのような事態を避けるためにも、短いスパンで目標を設定し、その成否を明確にしていくこと、つまり仮説・検証スキームの確立こそがWebサイトにかかわる仕事をする人間に最も求められる姿勢と言えるでしょう。

 仮説・検証スキームの繰り返しによって得られる成功の積み重ねこそ、企業がSEOを通じて本当に欲するもの、すなわちビジネス成果にほかなりません。


【参考文献】

生田昌弘/株式会社キノトロープ著『Webブランディング成功の法則55』株式会社翔泳社(発行年:2005)

株式会社キノトロープ
広島大学教育学部卒業。デジタルハリウッド福岡校の講師を経て、2005年にキノトロープ入社。開発部にてECサイトやコーポレートサイトの構築ディレクション、業務系システムのインターフェース設計等に従事。2008年より営業・広報部副部長としてグループ全体の営業窓口・ブランド戦略を担当。http://www.kinotrope.co.jp/

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