SEOはサイト構築前に考えるべし!

2009年2月16日(月)
中島 公平

Webサイトの主役はユーザー

 今回はSEO対策のもう1つのポイント「ユーザー視点での情報発信」について説明します。まずは、Webサイトを訪れるユーザーの行動心理に沿って考えてみましょう。

 Webサイトを訪れるユーザーは、わざわざ時間とお金を使ってやってきます。自らの持つ貴重な資産を削ってでもアクセスしようとするのです。なぜユーザーはそこまでしてWebサイトを訪れようとするのでしょうか。

 その理由は、Webサイトに対して何らかの目的があるからです。そのユーザーにとって必要な情報の収集、つまり自身が抱える問題を解決するためにWebサイトにアクセスしています。何の目的もなしにWebサイトを訪れるユーザーは、ほとんどいないのです。

 しかし、企業は自分が出したい情報、自分に都合が良い情報だけをWebサイトに展開してしまいます。企業本位でユーザーのことをまったく度外視した情報を発信し続けていては、あっという間にユーザーにそっぽを向かれてしまうことでしょう。向こうからやって来てくれた貴重なビジネスチャンスを、みすみす逃すことになります。

 このようなことにならないためにも、企業のWeb担当者は、Webサイトの主役がユーザーであることをまずは自覚すべきです。では、企業のWebサイトとはどのようなものであるべきなのでしょうか。

 皆さん自身がインターネットを利用する場合を想定してみてください。多くの方が情報収集のためにインターネットを利用していると思います。なんらかの問題を抱えていて、その問題を解決する、という目的のために活用しているはずです。

 ユーザーにとっての問題解決ツールであること、これこそが企業Webサイトに求められる機能です。Webサイトは、問題解決という目的をもって訪れたユーザーに適切なサービスを提供し、確実に問題解決へと導く、という一連の流れを実現するための情報構造でなければなりません。

 問題解決によって、ユーザーと企業との間に優良で継続的な関係性が生まれます。継続的な関係を築くことで、さらにユーザーの抱える別の問題が解決されるという循環を生み出すことが、Webサイトの機能そのものなのです。

Webサイト設計の変遷

 ユーザーの問題解決ツールとして有効に機能するWebサイトについての説明に入る前に、その設計手法について少し触れておきたいと思います。

 ユーザーは問題解決のための情報収集に際して、かつては書籍に代表される紙媒体を頼りとしていました。書籍の場合、表紙から順番に読んでいくという暗黙の了解があるため、執筆者は巻頭から順に情報を構成することでその役割を果たすことができていました。本文の前に目次が用意されているのも、ひと目で書籍全体にどのような情報が存在するのかを知る意味で重要な機能といえるでしょう。これがインターネットの登場でどのように変化したでしょうか。

 インターネットの普及間もない90年代のWebサイトにおいては、トップページを頂点とするツリー構造型の情報構成が中心でした。「トップページが目次の役割を果たし、そこから順を追って目的の情報を探す」という方法です。当時はまだWebサイトの規模もさほど大きいものではなく、この方法でも目的を果たすことができていました。

 これが2000年代に入ったあたりから状況が徐々に変わっていき、検索エンジンを起点とするアクセス方法が一般化されてきました。単純にトップページだけを入り口とするのではなく、いきなりWebサイトの下層ページにアクセスし、そこから目的の情報をたどっていく方法が定着していったわけです。数千ページにまで巨大化したWebサイトから、効率的に目的の情報を探し出す手法は、ユーザーが効率的な問題解決を図る上で、自然に身につけたスキルといえるでしょう。

 ユーザーの問題解決ツールとしてWebサイトを機能させるために、ユーザーがどのようにWebサイトを使っているのかを考慮することは避けては通れない課題です。今や、検索エンジンを基点としてインターネットを活用するユーザーは全体の8割を超えています。この現実を考えた場合、ユーザーにとって最適な情報設計をするために旧来とは異なる設計手法を用いる必要があることは自明の理とも言えます。

株式会社キノトロープ
広島大学教育学部卒業。デジタルハリウッド福岡校の講師を経て、2005年にキノトロープ入社。開発部にてECサイトやコーポレートサイトの構築ディレクション、業務系システムのインターフェース設計等に従事。2008年より営業・広報部副部長としてグループ全体の営業窓口・ブランド戦略を担当。http://www.kinotrope.co.jp/

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