OpenStack Summit Tokyoキーノート初日にヤフー 、NTTグループ、NEC、GMOらが登壇
OpenStack Summit Tokyo 2015がいよいよ開幕しました。OpenStack Foundationからの情報によると、参加登録者は5,000名以上、46%がAPAC、38%が北米、13%がヨーロッパ、となっています。国別ランキングは1位アメリカ、2位に日本、3位に中国、以下インド、韓国、カナダ……と続きます。聞いた情報では日本人は1,200名くらい、全体の約4分の1とのことです。3,500名以上が海外から参加されていることになります。会場となった高輪プリンス一体がほぼOpenStack Summitの関係者でジャックされている状態です。東京でこれだけの規模で海外から参加するイベントも数少ないと思われ、OpenStackのパワーを感じます。5月にバンクーバーで開催されたときは6,000名でしたので、それに比べると減っていますが、会場がホテルということもあり、スペースが手狭で、それがよりにぎわい感を出しているように感じます。アジアからの参加者が多く、OpenStack Foundationとしてはアメリカ以外でOpenStack Summitを開催する目的を果たすことができています。今後も春は北米、秋はアジアかヨーロッパ、というサイクルを回していくであろうと予想されます。
さて、初日のキーノートの様子をレポートします。
キーノート
日本OpenStackユーザ会の長谷川氏の紹介により、FoundationのJonathan Bryceが登壇。今回の東京サミット開催に尽力した日本OpenStackユーザ会のメンバーを写真で紹介、併せて会場のWiFi環境を提供したNTTコミュニケーションズ、Foundationのゴールドスポンサー3社(NEC、富士通、日立)に感謝の意を示しました。OpenStack Summitのキーノートでローカルのユーザグループがここまでとりあげられた例は無く、関わってきた者としては感慨深いものがありました。Foundationとしては、日本のユーザ会をローカルユーザグループの成功事例として取り上げることで、他地域でも活動が活発化することを狙っていると思われます。
Foundationの新たな取り組みとして、2016年からスタートするOpenStack管理技術者認定制度「Certified OpenStack Administrator」を紹介。さらに、OpenStackの最新安定版であるLibertyリリースを紹介しました。
また、クラウドサービス/ソリューションベンダー各社がOpenStackで提供する共通APIやサービスの重要性を強調。これに関連して、DefCoreコミッティーの副議長を務めるEgle Siglerが登壇。DefCore(OpenStackの中核コンポーネントの定義)について説明しました。
その後、Jonathan Bryceが完成度と採用数を軸にOpenStackの各コンポーネントの状況を紹介しました。Nova、Swift、Horizonといった比較的古参のコンポーネントが成熟して採用が進む一方、Heat、Trove、Ceilometerといった比較的新参のコンポーネントが発展途上で採用が少ないことが示されました。
約半年前にOpenStackではIntegratedとIncubatedというコンポーネントの区分が廃止され、Big Tentというコンポーネント群の扱いだけになりました。このため、Big Tent配下のコンポーネントの成熟度が初心者には分かりにくくなり、各コンポーネントの成熟度情報の重要性が増しています。そこで、OpenStackプロジェクトのソフトウェアページ配下に、新たに各コンポーネントの成熟度一覧情報が追加されました(http://www.openstack.org/software/project-navigator)。
続いて、Lithium TechnologiesのLachlan Evensonが登壇。同社で開発した、ソースコードのコミット後のビルド、テスト、Dockerコンテナー作成、本番環境デプロイ(OpenStackとAWS上のKubernetes環境)を行う自動ワークフローシステム「Kubot」、システム状態表示ツール「Realtime」について説明。サンプルのゲームアプリのソースコード変更後に最終的にアプリケーションがアップデートされるまでのデモを示しました。
次に、ヤフーの伊藤氏が登壇。月間約650億ページビューにのぼる同社のWebサービスを支える基盤としてOpenStackを紹介。元々は自社製のクラウド基盤を使用していましたが、2013年にOpenStackを採用。これにより、アプリケーション開発者はハードウェアやハイパーバイザの違いを意識する必要がなくなり、アプリケーションの配置の自由度が向上。結果的に物理基盤のライフサイクル管理が容易になったとメリットを挙げました。
また、3回目となるOpenStack Superuser Awardの発表が行われ、最終候補4社(FICO、GoDaddy、Lithium、NTTグループ)のうち、NTTグループが受賞しました。ドコモメール基盤でのSwift採用やNTTレゾナントのgooでの採用事例、及び長年にわたるコミュニティ貢献が評価されました。
「Bringing the New Value to OpenStack Ecosystem」と題して、NEC柴田氏が登壇。「Super Integrator」をキーワードに同社の取り組みを紹介。将来IoTを支えるものとして、デバイス、OpenStack、Super Integrator、コラボレーションを挙げました。
「Banishing the Shadow Cloud」と題して、BitnamiのErica Bresciaが登壇。同社はパブリック/プライベートクラウド上のアプリケーションスタックサービスを提供しており、AWS、Azure、Google Cloud Platform、OpenStack等をサポートしています。
クラウドのユーザに重要な点は、スピード、簡便性、一貫性、キュレーション(精査)、ソフトウェアライフサイクル全般のサポートの5つを挙げ、Murano、Heatの普及・発展に期待を寄せました。
「Accelerating the Open Cloud with OpenStack」と題してIntelのImad Sousouが登壇し、新設した「OpenStack Innovation Center」について説明。社外のOpenStack開発者の雇用、OpenStack開発・評価用の大規模サーバ環境提供が柱となります。また、Mirantisへの出資、その他OpenStack関連企業との連携などの取り組みも紹介しました。
その後、GMOインターネットのパブリッククラウドサービス2種(ConoHa、AppsCloud)について紹介。ConoHaのユーザとしてモバイル動画アプリのC Channel、AppsCloudとしてモバイルゲームのAimingが登壇、それぞれのサービスを紹介しました。
1日目のキーノートを振り返ると、東京開催ということもありますが日本人の活躍が目立ちました。ユーザ、ベンダ、ユーザ会がそれぞれの立場でOpenStackに積極的に関わり、それがグローバルでも見えてきたということで、素直に喜びたいと思います。キーノートの中身では、OpenStack Summitではあるのですが、OpenStack自体の話は少なかった印象があります。OpenStackの周辺やエコシステムを整備していく話が多く、LithiumやBitnamiといった会社もOpenStackに対応はしていますが多様なクラウドを使えるサービスをビジネスとしています。これはOpenStackそのものを改めて語る必要がないほど普及したということであるのか、2日目に中の技術の話がでてくるのか、興味があるところです。
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