Windows Web Server 2008 構築と運用のポイント
Webサーバーの中のIISの位置づけ
まとめに入る前に、今後の展望を占うべくWebサーバーにおけるオープンソース+IISの位置づけについて見てみましょう。
インターネット調査会社Netcraft社によると、外部公開されているWebサーバーのシェアは世界的に見るとトップであるApacheの50.5%に次いでIISの28%、Google系の12%、nginxの4%となっており、ApacheとIISだけで市場の8割ほどを占めていることがわかります(「2009年6月度Webサーバー調査 / NetCraft」(http://news.netcraft.com/archives/2009/06/17/june_2009_web_server_survey.html」より)。
また、この資料からはIISのシェアが5年ほど前からじわじわと上昇傾向であることも読み取れます。このことからIISは外部公開用のWebサーバーとしても徐々に普及してきていると思われます。ただし、PHPとIISなどオープンソース+IISの組み合わせが、この伸びたシェアのどのくらいを占めているかというと、.NET+IISの影響が非常に大きいため、オープンソース+IISがシェア増加に与えた影響は微々たるものであるだろうというのが正直な感想です。
今後オープンソース+IISが普及するためには、次の2つのことがキーになると思います。1つ目は、.NET+IISのためにWindowsサーバーを導入した企業のうち、既存資産(Windowsサーバー)の有効活用としてオープンソースWebアプリケーションを一緒に搭載させる企業がどのくらい居るのか、2つ目は、マイクロソフト社がオープンソース+IISに対して自社サービスとの連携を容易にする仕組みを(まずはロードマップとしてですが)どのくらい提供できるかです。
本記事で扱っているIIS7.0からはFastCGIの標準搭載など、よりPHPと親和性の高い環境が行われてきており、また、マイクロソフト社のクラウドサービスであるWindows Azure上でのPHPの動作準備も整っていますので、シェアの変動はかなり底堅く、さらなる飛躍のためには上記2つのキーが絡んでくるでしょう。
Windows Web Server 2008によるサーバー構築のまとめ
本編ではIISでオープンソースWebアプリケーションを動かすための基本的な説明をしてきました。ここでは私が2回続けて参加したインストールマニアックスでの所感も含めて、Windows Web Serverによるサーバー構築についてまとめます。
まず、IISでPHPやPerlベースのオープンソースWebアプリケーションを動かしての第一印象は、「想像以上にサクサク動く。IISの開発ではPHPやPerlに関してはかなり力を入れているのか、動作にストレスを感じない」というものでした。記事には入れられませんでしたが、PHPやPerl以外にもRuby、Pythonなどで作られたアプリケーションの動作も確認ができました。
ただ難点としては、利用するアプリケーションによっては「.htaccess」が前提の実装となっている場合や、cronの設定が必要なLinux前提の実装になっている場合が存在し、IISでこれらを利用するためには手動設定が必要となることです。これらの設定を自動化できるような機能が標準でIISに実装されると良いのですが、今のところそういう話を聞いていませんので、まだ時間がかかりそうです。早い時期に拡張機能としてでも提供される可能性に期待したいです。
一方、Webサーバー市場シェアに目を向けると、ここ数年でシェアが25%弱から30%前後まで伸びています。今後もIISのバージョンアップと共に性能や機能が豊富になり、さらにはWindows Azure環境の実績増加・ニーズ増加によってIISのシェアは堅調に推移しそうです。
われわれ技術者がオープンソース+IISをマスターする価値があるかというと、ここまでに述べた状況を考慮しておそらく「YES」であると思います。今のうちにこの組み合わせを使い慣れておくことで、ぜひエンジニアとしての仕事の幅をぜひ広げてください。
次回は、Windows Server 2008 R2およびIIS7.5の導入に向けて、実際にRC版を触ってのレポートを行う予定です。
【参考文献】
「2009年6月度Webサーバー調査 / NetCraft」(http://news.netcraft.com/archives/2009/06/17/june_2009_web_server_survey.html)(アクセス:2009/07)