第3回:定性調査から見えたサーバOSの今後の動向 (3/4)

SMB市場のサーバOS動向
2006年中堅・中小企業におけるサーバOSの実態と展望

第3回:定性調査から見えたサーバOSの今後の動向

著者:ノークリサーチ  伊嶋 謙二   2006/6/13
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定性調査詳細分析

   今回の定性調査では、サーバOSとしてのWindowsとLinuxについて、双方を対比する形で意見をヒアリングした。そうして浮かび上がったサーバOS選定・導入に関わる5つの重要な要素についての各社の意見を以下で詳細に分析していく。
  1. エンジニア(技術力、技術者)
  2. サービス/サポート
  3. コスト(TCO)
  4. アプリケーション
  5. セキュリティ

表9:サーバOS選定・導入に関わる5つの重要な要素


エンジニア(技術力、技術者)

   まずはエンジニアの要素について見ていこう。

タイプA:サーバOSは「WindowsとLinuxを使い分けている」のコメント
  • Linuxは、「コマンドラインベースで操作出来るスキル」、「エラーの原因を究明するスキル」、「パッチなどサポート情報を収集し検証出来るスキル」など多岐に渡るスキルが要求される。
  • Linuxを管理するには専門のスキルが必要なので、中途でLinuxのスキルあるネットワーク系の技術者を採用した。
  • 自社のサーバ管理者がLinuxに精通している。
  • 技術者不足が深刻な中堅・中小企業へLinuxが浸透することはないだろう。
  • Windowsの管理は経験が豊富なので余裕があるが、Linuxの場合は導入時から扱いが難しい。
タイプB:サーバOSは「Windowsで統一している」のコメント
  • Windowsは経験、慣れがあるので管理できるが、Linuxはスキル的に管理できない。業務用に稼働させるには不満・不安が多い。他のLinuxユーザのように専属で管理するだけの余裕はない。
  • Linuxはエンジニア不足が致命的。Windowsはエンジニアの数も多いのが強み。
  • Windowsは経験上、導入から運用までを自社で対応出来る。Windowsは、標準的な知識として蓄積されているし、経験上使い慣れている。

表10:エンジニア(技術力、技術者)のヒアリング結果


分析ポイント

   今のところWindowsの管理・開発に要するスキルをスタンダードとして保有するエンジニアがLinuxよりはるかに多いことは明らかで、企業としても容易にエンジニアを確保することが出来る点でWindowsの優位は明らかである。


サービス/サポート

   次にサービス/サポートについて紹介する。

タイプA:サーバOSは「WindowsとLinuxを使い分けている」のコメント
  • Linuxのサポート費用に関しては、自社でサポートすることで、ベンダサポートを受けている企業に比べ2/3程度はTCO削減が達成出来る。
  • Linuxは自社サポートを行っているので、ハードウェアベンダのサポート以外は受けていない。
  • Linuxのサポートはすべて自社で行っている。高額なサポートフィーを支払ってクオリティの高いサポートが受けられるとは限らない。
  • Linuxはベンダと保守契約をしているが、大体のトラブルは自社で解決できる。
タイプB:サーバOSは「Windowsで統一している」のコメント
  • Linuxは取引先のSIerがサポート出来ない。Windowsはパッチ提供など情報提供が豊富である。
  • WindowsServer2003導入時のマイクロソフトのサポートは質的に満足いくものであり評価できる。

表11:サービス/サポートのヒアリング結果


分析ポイント

   サーバ管理者がWindowsについて経験豊富なためにそもそも外部にサポートを依頼する機会がほとんどないため、Windowsに対する意見は少ない。Linuxの場合は、サポートフィーの高さに不満が集中した。また、高額なフィーに見合ったサポートが受けられていない現状からも、サポートのクオリティに疑問が残る。

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書籍紹介
「2006年 中堅・中小企業におけるサーバOS実態調査(White paper)」

本記事はノークリサーチより発刊されている「2006年 中堅・中小企業におけるサーバOS実態調査(White paper)」からの転載です。上記調査資料には、さらに詳しいデータや分析結果が記載されています。調査資料のご購入は下記のリンクより行えます。

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有限会社ノーク・リサーチ  伊嶋 謙二
著者プロフィール
有限会社ノーク・リサーチ   伊嶋 謙二
1956年生まれ。1982年、株式会社矢野経済研究所入社。パソコン、PC(IA)サーバ、オフコンなどをプラットフォームとするビジネスコンピュータフィールドのマーケティングリサーチを担当。とくに中堅・中小企業市場とミッドレンジコンピュータ市場に関するリサーチおよび分析、ITユーザの実態を的確につかむエキスパートアナリスト/コンサルタントとして活躍。1998年に独立し、ノーク・リサーチ社を設立。IT市場に特化したリサーチ、コンサルティングを展開すると同時に、業界各誌への執筆活動も積極的に行っている。
ホームページ:http://www.norkresearch.co.jp/


INDEX
第3回:定性調査から見えたサーバOSの今後の動向
  中堅・中小企業におけるサーバOSの利用実態及び今後の動向
  導入経緯で見るサーバOS選定・導入のポイント
定性調査詳細分析
  コスト(TCO)
2006年中堅・中小企業におけるサーバOSの実態と展望
第1回 LinuxはWindowsの対抗馬か
第2回 Linuxが抱える問題
第3回 定性調査から見えたサーバOSの今後の動向

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