第5回:プロジェクト破綻への小さな一歩を食い止める (3/3)

実践型プロジェクト管理
経験が物語る実践型プロジェクト管理

第5回:プロジェクト破綻への小さな一歩を食い止める
著者:イマジンスパーク  深沢 隆司   2006/4/12
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憶測の会議

   「プロジェクタや外部モニタの使用」は「参加者が同じ情報を元に議論することを(プロジェクタなどの各種ツールの利用などによって)保証する」という目的のために「深沢式 会議法・議事録術」として、明確に行うべき事としているものです。これは、会議という活動の存在意義から考えて極めて重要なので、可能な限り努力して実現するべきです。筆者は参加者が同じ情報で議論することは必ず実現すべきだと考えていますし、参加者にとって「少しでも快適な形で」実現すべきことだと思っています。

   これほど、「参加者が同じ情報を見て議論をすること」の重要性を強調しているのには、理由があります。注意深く会議を観察していると、議論の対象が伝票などその場に実物のないものであったり、現物を用意することがちょっと面倒くさいというだけの理由で、本当に安易な憶測だけで会議を先へと進めてしまっているという事実に気がついたからです。

   皆さんが今この話をパッと読んでいる限りでは「自分たちは大丈夫だ」と思うでしょうが、日頃よほど注意していない限り、必ずプロジェクトの中で何度も憶測での会議進行をやっていると思います。一度いろいろなところで会議進行が憶測であることに気付きはじめると、何とも不思議な、まるで別世界にいるような気分になる時があります。以下にいくつか例をあげますが、本当に様々な憶測による会議進行があるのです。

  • ちょっと別のフロアまで取りに行けば伝票の実物が入手できるにもかかわらず、それをせずに、個々の参加者の記憶でのみ会議をしている
  • 会議室のドアの外には、問題提起をしたプログラマが作業をしているのに、直接聞かずに提起された意味がわからないと議論をしている
  • ちょっと電話でメーカに確認すればよいことなのに、あーでもない、こうでもないと、答えの出しようのない議論をしている

表1:憶測による会議進行例

   ソースコードは1文字打ち間違っても問題視されます。「間違った決定で実装させる」ということは、時として何千文字、何万文字も打ち間違えるのと同じ事です。どうしても憶測となってしまうのであれば、必ず憶測をどう扱うかについて議論し、それについての決定事項(いつまでに明確化して再度議論するなど)を誤解のない表現で議事録に記述します。

   実際に「深沢式 会議法・議事録術」を体験していただくと、その重要性は容易に理解していただけるようです。顧客側担当者が「今回はプロジェクタも液晶モニタもないから、コレ持ってきたよ」と、重いCRTモニタを抱えて会議室にあらわれたということもありました。

   また録音(録画)を行う理由に関して、会議のお話の中で特に記述していませんでした。これは最低限行うべきことであるにも関わらず、意外と行われていない事であるために明確に記述しています。

   目的は単純です。何かの時のバックアップ情報として純粋に「記録」するためであり、本来は書く必要のない「当たり前」のことです。結果的に「証拠」となる場合があるかもしれませんが、それは本来録音する目的ではありませんし、例えば「深沢式 会議法・議事録術」を運用する限り、過去録音した音声を証拠として提出する必要性はまったく発生していません。

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イマジンスパーク 深沢 隆司
著者プロフィール
株式会社イマジンスパーク   深沢 隆司
株式会社 イマジンスパーク 代表取締役
陸上自衛隊少年工科学校第25期生。対空戦闘指揮装置の修理要員として自衛隊に勤務。退職後に一部上場企業や官庁でのシステム開発等で仕様策定、プロジェクトマネジメントに従事し、独自の手法で成功に導く。著書は『SEの教科書』他。

INDEX
第5回:プロジェクト破綻への小さな一歩を食い止める
  プロジェクト破綻への小さな一歩
  些細なことが招くモチベーションの低下、様々な影響
憶測の会議
経験が物語る実践型プロジェクト管理
第1回 システム開発のスピードアップをはかる
第2回 会議法・議事録術
第3回 顧客業務の徹底理解や会議手順の変更では解決できないこと
第4回 実作業者のモチベーションを考慮した会議
第5回 プロジェクト破綻への小さな一歩を食い止める
第6回 あらゆることをプラスに導く顧客業務の徹底理解
第7回 急がば回れの業務分析
第8回 「ドキュメントとプログラムソースの量産」の実現とは
第9回 高品質、高効率開発を実現するドキュメントシステム

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