第5回:RFIDミドルウェアの今後の動向 (3/3)

RFID
RFIDのデータを活用するために

第5回:RFIDミドルウェアの今後の動向
著者:野村総合研究所  松本 健   2006/8/23
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最後に〜よりオープンな環境へ

   RFIDに関する注目度はどのように移っていくだろうか。まず電波を使ってモノが持つ固有の情報(ID)を読み取ることで、システムにモノを認識させる仕組みとして、RFIDタグ、RFIDリーダ・ライタに関する技術に注目が集まり発展した。

   今でもGen2の登場のようにさらなる技術的な進展がある。その後、読み取ったモノのIDを集約・加工することで、モノがある・ない・移動しているなどの上位のシステムに対して使いやすい抽象度の高いデータに変換するRFIDミドルウェアが注目され進化している。

   ここまでは同一の企業内での利用が中心、言い換えればクローズドな環境をターゲットとした技術である。今後はRFIDミドルウェアから送り出されるモノに関連するデータを、オープンな環境、つまり企業間など広い範囲で活用するための仕組み(EPC GlobalではEPCIS、ONSなどの機能)が注目されていくだろう。

   EPCIS(Electronic Product Code Information Service)は、EPCに紐付けられた商品/製品の情報を登録・検索するサービスである。サプライチェーンで生産工場/配送センター/店舗バックヤード/店頭などに設置されたRFIDリーダ・ライタで読み取られたRFIDタグ情報(ID)を、読み取った時間、場所、読み取り時になされた作業などのデータを登録し、ある時点でのモノがある場所や状態がどうたったかを検索できる。

EPCIS、ONSを含めたRFIDシステム挙動の例
図3:EPCIS、ONSを含めたRFIDシステム挙動の例
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

  1. アプリケーションがRFIDタグのEPCを読み取り指示
  2. RFIDミドルウェアはRFIDリーダ・ライタにRFIDタグのEPCを読み取り指示し、取得
  3. アプリケーションがEPCISにEPCと関連する情報を紐付けて格納するように指示
  4. メーカから配送センターなどに移動したモノのRFIDタグのEPCを読み取る
  5. アプリケーションは読み取ったEPCの情報を配送センターのEPCISに問い合わせる
  6. 配送センターにEPCISに該当する情報がない場合はONSに該当の情報を持つEPCISを問い合わせる
  7. 該当のEPCISにEPCに対応する情報を問い合わせる

表1:EPCIS、ONSを含めたRFIDシステム挙動の例の流れ

   例えば注文を受けた商品が工場から出荷された後、流通経路上の例えば配送センターでその商品に関する情報が必要になる際に利用されることが想定される。EPCISは、執筆時点ではEPC Globalで標準化される直前の状態である。

   ONS(Object Name Service)は多数あるEPCISのうち、あるIDに関連する情報がどのEPCISにあるかという情報を登録・検索するサービスである。EPCISはサプライチェーン上に1つだけであるとは限らず、様々な企業がかかわるため、その各企業がEPCISを管理する場合が自然であると考えられる。

   そうした場合、あるIDに関する情報を検索する際に、どの企業の持つEPCISがその情報を持っているかを知らないと正しい検索ができなくなる。そのためこのONSを使ってEPCISを特定することで利便性をあげることができる。ONSはEPC GlobalでONS 1.0としてすでに標準化されている。

   このようにRFIDはオープン化への道を進んでいくと思われる。

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野村総合研究所株式会社 松本 健氏
著者プロフィール
野村総合研究所株式会社  松本 健
1994年早稲田大学大学院理工学研究科卒業後、同年野村総合研究所入社。現在、情報技術本部にてシステム基盤を中心とした新技術の調査・評価を行うITエンジニアとして活動。最近ではESB/BPM/ユーティリティコンピューティング/サーバベーストコンピューティング/RFIDミドルウェアなどの調査・評価を行っている。


INDEX
第5回:RFIDミドルウェアの今後の動向
  RFIDミドルウェアを利用する際の留意点と今後
  今後の傾向
最後に〜よりオープンな環境へ
RFIDのデータを活用するために
第1回 RFIDタグの分類
第2回 RFIDミドルウェアの背景
第3回 RFIDミドルウェアが持つ機能
第4回 RFIDミドルウェア製品の現状
第5回 RFIDミドルウェアの今後の動向

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