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システム統合の要点
システム統合の要点となるビジネス−IT−組織のアラインメント

第1回:システム統合とは何か
著者:東京工業大学   飯島 淳一   2006/7/6
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システム統合とは

   本連載ではシステム統合を「経営統合/事業再編/事業改革/M&A/アライアンス/分社化などにおいて、個々の組織またはその構成要素の共利共生を目的として活動できるようなものに、各々のビジネス情報システムを変革すること」と定義する。

   ここでいうビジネス情報システムとは、人間活動システムであるビジネスシステムを支援するために存在するものであり、運用方法/アプリケーションソフトウェア/ミドルウェア/基本ソフト/ハードウェア/設備などを含んでいる。

システム統合は避けられない

   金融業を例にあげながら、システム統合が避けられない理由について説明しよう。同規模対等合併の場合、経費削減の目標値は総経費の10%程度である。したがって、総経費100ポイント同士の銀行合併の場合、新銀行の総経費は180ポイントが目標である。

   個別銀行の状況により異なるのはもちろんであるが、経費削減目標20ポイント中、85%がシステム統合(50%は店舗統廃合による削減、35%はIT関連経費の削減)によりもたらされると想定される。

   したがって、都市銀行のIT関連経費を総経費の14%とすると、経費削減目標20ポイント中の35%である7ポイントがIT経費の削減に対応する。よって、統合後の合計である28ポイントの中の25%が削減目標ということになる。すなわち、IT関連経費の削減目標は合併前の25%減である。

   もちろん、IT関連経費は経営統合における単なる削減の対象だけでは決してない。このことは金融業においても例外ではなく、欧米のメガバンクに肩を並べていくためには削減可能なIT関連経費分を新たな戦略的IT投資に向ける必要があることはいうまでもない。

情報システム統合の理由の1つ
図1:情報システム統合の理由の1つ


様々な情報システムの統合型

   システム統合における情報システムの統合は、基幹系をどのように構築するかによって、いくつかの型に分けられる。

   典型的な型は一方のシステムに合わせて統合する方式であり、一般に「片寄せ」あるいは「巻き取り」と呼ばれている。M&Aにおいて一方の企業のパワーが他を上回っている場合、ほとんどはこの形式で統合が行われており、成功しているケースが多い。この型の例としては、損保ジャパンにおける統合(2002年)やJALとJASの統合(2004年)など数多くの事例がある。

   この他の型として、両者のシステムの折衷案として部品ごとにいいとこどりをするというアプローチもあるが、これは「組合せ統合型」と呼ばれている。代表的な事例には、みずほファイナンシャルグループのケース(2002年)がある。これは統合の対象となる企業間にパワーの差がない場合に起こりやすく、うまく実現することは難しいとされている。

   場合によっては片方のシステムに吸収する、あるいはまったくの新規開発という場合もあるが、これはまれである。吸収型の例としては、住友銀行と平和相互銀行のシステム統合がある(1986年)。

   また、逆のケースとして「併存型」と呼ばれる、統合しないで各々のシステムを別個に走らせ、必要なものだけを外付けで新たに付け加えるという型もある。しかし、これは多くのシステム統合がコスト削減を意図している以上、かなりまれである。

   これらの「型」は図2に示すように、統合の対象となる情報システムの粒度(統合の対象となる情報システムの大きさ)によって順序づけることができる。すなわち、新規開発型はまったく新たに構築するため、粒度がもっとも大きい。また併存型は統合の対象となる情報システムが存在しないため、粒度がもっとも小さいと考えれば、その間にどちらか一方の情報システムに統合する「吸収型」、系という単位で統合する「片寄せ型」、より小さいAPL単位で統合する「組合せ統合型」がある。

システム統合における型
図2:システム統合における型

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東京工業大学  飯島 淳一氏
著者プロフィール
東京工業大学  社会理工学研究科  教授   飯島 淳一
1982年東京工業大学・大学院博士課程修了。1996年より現職。2006年4月より経営情報学会会長。主な研究分野は,情報システム学と数理的システム理論。主な著作は『成功に導くシステム統合の論点(共著,2005)』『入門 情報システム学(2005)』ほか。


INDEX
第1回:システム統合とは何か
  本連載のアウトライン
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