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2006年の中堅・中小企業
2006年の中堅・中小企業のIT利用実態と2007年の展望

2007年問題や日本版SOX法への対応状況

著者:ノークリサーチ  伊嶋 謙二   2006/12/22
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新ITソリューションの導入率

   最後にSCM、SFA、CRM、ナレッジマネジメント、CTI、ASPといった新ITソリューションについてだが、まだまだ検討段階にある企業がほとんどで、導入率は10%前後となっている(図3)。
新ITソリューションの導入率
図3:新ITソリューションの導入率
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   各種ソリューションの導入状況について、2005年から2006年にかけて大きな変化は認められないが、このように経年変化を追うことで「ハード充足 → インフラ構築 → 情報有効活用」というITシステムの導入の流れはパターン化したといえよう。

   現状はハードを揃え、ネットワークを構築してセキュリティを施し、その上に情報を流通、共有させ、さらに基幹系業務を「進化バージョンとしてリプレース(ERP化など)」するところまできている。2006年にかけてようやく「IT基盤としての道具立て」は揃った状態だといえよう。

   さて、来年はどうか。


大きな動きの要素の少ない2007年 - 次へのステップの準備ステージ

   2007年の大きな関心事の1つに「2007年問題」があるのは周知のことだろう。よく引き合いにだされるのが、サポートが終了した「Windows NT」ユーザに対するリプレース促進だが、今では「Windows 2000」ユーザすらも同様の状態である。

   中堅・中小企業の特徴の1つとして、「対岸の火事」的な対応が多いことがあげられる。特にITに関連した問題に対しては、事後的な対応を施す傾向が強い。すでにレガシーからオープンシステムに切り替えた企業は、ほぼインフラはでき上がっているとみていいが、「塩漬け」のシステムを利用している中堅・中小企業は果たしてどうか。

   その情報システムの部門スタッフがリタイアするのを契機に、一斉に現行のサーバやアプリケーションを新規に入れ替える動きにでるとは考えにくい。システムリプレースを1つの契機として動く可能性はあるだろうが、新たなシステムへの移行スピードは緩いだろう。なぜなら「戦略的なITシステム」は、現状なくても企業にとって困ることはないからだ。つまり「まだ十分に使えるシステムがあるならば、使える範囲で利用し続ける」ということであり、これは調査結果も物語っている。

   一方の日本版SOX法についても同様のことがいえる。これを機に一挙にERPをはじめとした関連ソリューションの導入が進むとは予想しにくい。ベンダーへのヒアリングでも、内部統制の一環としてERPが積極採用されるとの見込みは多くないことがわかっている。

   これは決して中堅・中小企業が法律に対して無知、無頓着というわけではなく、大企業に比べ従業員数が少なく、社内の風通しが良く、そこまで複雑多岐な業務フローが生じることがないため、問題や責任の所在を把握することが煩雑ではない点があるからだ。この問題に対して新たなITで対応するというよりも、既存の枠組みの中で体制を再構築し、それでも足りない部分を新たなITシステムで事後的に補完すると考えるほうが妥当である。

   以上のように考えてみると、2007年は全社的にIT投資を控え、次のステージに向かう前の準備期間としての1年となるだろう。ただし整ったインフラに対して「戦略的なIT」といえるようなシステムは、どんな形で構築、提案されるのか、それは今のところ「特効薬」がまったく見いだせないだけに、今後大いなる期待を持って見守りたい。

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株式会社ノークリサーチ 伊嶋 謙二
著者プロフィール
株式会社ノークリサーチ  伊嶋 謙二
1956年生まれ。1982年、株式会社矢野経済研究所入社。パソコン、PC(IA)サーバ、オフコンなどをプラットフォームとするビジネスコンピュータフィールドのマーケティングリサーチを担当。とくに中堅・中小企業市場とミッドレンジコンピュータ市場に関するリサーチおよび分析、ITユーザの実態を的確につかむエキスパートアナリスト/コンサルタントとして活躍。1998年に独立し、ノーク・リサーチ社を設立。IT市場に特化したリサーチ、コンサルティングを展開すると同時に、業界各誌への執筆活動も積極的に行っている。

ホームページ:http://www.norkresearch.co.jp/


INDEX
2007年問題や日本版SOX法への対応状況
  はじめに
  伸びは高いPCサーバ市場だが、一服感もみられる
新ITソリューションの導入率