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UML導入に関する考察
UML導入に関する考察

第4回:UMLの今後と展開
著者:野村総合研究所  田中 達雄   2005/8/1
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情報伝達能力(表現力)のさらなる向上

   UML2.0がリリースして間もないことから、現在はUML2.xやUML3.0に関する記述は見当たらない。今はMDAを意識して大幅に改善したUML2.0の普及啓蒙に力を注いでいる時期なのだろう。

   そんな中、筆者自身が気になるのは、ビジネスプロセスモデルに関わるモデリングとUMLの関係である。

   ここ最近、BPM(Business Process Management)やSOA(Service Oriented Architecture)に対して注目度が高まっていることから、ビジネスプロセスモデルへの注目度が高まっており、リアル世界のビジネスプロセスをビジネスプロセスモデルとして「より多くの情報を、より正確に」に伝達することは重要な要素となりつつある。

   これに対応したビジネスプロセスモデルの表記法には、BPMI(Business Process Management Inisiative)が策定しているBPMN(Business Process Modeling Notation)がある。BPMNは、BPMI自体がBPMのシステム開発を支援するために組織された団体であることから、BPEL(Business Process Execution Language)に代表されるビジネスプロセスの実行言語をサポートしている点に特徴がある。

   UMLモデリング・ツールに目を向けると、ツール自体にビジネスプロセスモデリング機能が追加され、ビジネスプロセスモデルが記述できるようになりつつあるが、その表記法は、UML(主にアクティビティ図)なのか、BPMNなのか、それ以外なのかはUMLモデリング・ツールによって異なるのが現状である。

ビジネスプロセスモデリングの対応

Borlandが2005年8月末にリリース予定のTogetherの新バージョンでは、BPMNのサポートを新機能として提供している。また、Compuwareの新バージョン「OptimalJ 4.0」では、「UML 2.0 Activety Diagramへの対応によってプロセス指向開発機能を追加した」としている。

   本来のモデリングとは情報伝達手段として効果があるため、異なるモデル表記法が乱立することは望ましくない。可能であれば1つの表記法に統一されてほしいものだが、UML(主にアクティビティ図)によるビジネスプロセスモデルの表現力は現状高いとはいえず、即座にUMLに統一するという選択肢には無理がある。

   しかしながら、2005年6月29日にBPMIとOMGがBPMにおける標準化活動を合併することを発表した。この合併により、これまでBPMIとOMGがそれぞれ行ってきた先進的な活動を継承しつつ、次のようなビジネスプロセス管理(BPM)の諸問題に総合的に取り組むことになるとしている。

  • BPMIのビジネスプロセス・モデリング表記法(BPMN)の改良と普及
  • BPMIのビジネスプロセス定義メタモデル(BPDM)の提供
  • ビジネス言語、語彙、およびルール
  • ビジネス情報管理(BIM)
  • エンタープライズアプリケーション統合(EAI)
  • ビジネス間協調(B2B)
  • Webサービスの情報およびプロセス
  • セキュリティポリシーおよび管理
  • ビジネスプロセス管理の原理、アプローチの産業界における発展と普及啓発

   これでビジネスプロセスモデルの統一がはかられると同時に、UMLはプログラムコードのみならずBPELなどのビジネスプロセス実行言語の自動生成を行う基点として、その重要性が増すことになるだろう。

   BPMNがUMLに統合される場合、BPMNとアクティビティ図が整理統合されることになると思われる。図2、3で現状のBPMNとアクティビティ図を簡単に紹介しておこう。

BPMNとUMLの違い(1)
図2:BPMNとUMLの違い(1)

   図2は単純なシーケンスを表現した図であるが、ビジネスプロセス図とアクティビティ図の間に主な違いはない。強いていえば、アクティビティの角の丸みの違いと矢印の形に違いがある。

BPMNとUMLの違い(2)
図3:BPMNとUMLの違い(2)

   図3の例では、アクティビティ図の表現力の弱さが垣間見られる。この2つのモデルでは、排他的なゲートウェイ(ビジネスプロセス図の菱形)に到着するトークンは、1つ以外すべて排除される(つまり、ゲートウェイは最初のトークンの通過を許可し、残りのトークンをブロックする)ことを表現しているが、アクティビティ図に関しては、このパターンを表現するメカニズムを持っていないため、どうしても曖昧な日本語による注釈で補うしかない。総じてBPMNのビジネスプロセス図は、分岐や合流における表現力に長けており、シンプルかつ自然に表現できるメカニズムを持っている。

   このようなビジネスプロセスモデルがBPELなどのビジネスプロセスの実行言語に変換されることを考えると、やはりUML(アクティビティ図)では物足りなさを感じる。

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野村総合研究所
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


INDEX
第4回:UMLの今後と展開
  事例からの考察
情報伝達能力(表現力)のさらなる向上
  MDA機能の精度向上
  開発ライフサイクルの支援