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UML導入に関する考察
UML導入に関する考察

第4回:UMLの今後と展開
著者:野村総合研究所  田中 達雄   2005/8/1
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MDA機能の精度向上

   MDA機能の精度向上に関して、OMGではUML2.0、XMI2.0、OCL2.0、QVTといったMDA機能の精度向上を実現可能とする標準の策定をしているが、その実現性・実効性は、やはりUMLモデリング・ツールに依存するところが大きい。
標準仕様 概要
XMI2.0 XMI(XML Metadata Interchange)は、MOF1.4を基盤としたモデル情報をXML形式に変換し、ツール間でモデルを交換可能にするための仕様。XMI2.1ではMOF2.0に対応する予定。UML2.0に対応すると共にXML1.1ではダイアグラムの情報を保存できなかったものを改善
MOF1.4 MOF(Meta Object Facility)は、メタモデル(モデルを定義するためのモデル)を記述するための構成要素を定義し、メタモデルを管理するための仕様。現在MOF2.0が最終決定待ちの状態。MOFは、XMLで例えるとDTDがモデルを定義するためのモデルで、ELEMENTやATTRIBUTEがその構成要素となる。つまりMOFでは、ELEMENTやATTRIBUTEといった構成要素を定義する仕様となる
OCL2.0 OCL(Object Constraint Language)は、UMLモデルに付ける制約を定義する仕様。例えば、引出限度額といったビジネスルール、タイムアウト時間といったシステム上のルールなどをUMLモデルに付加することができる
QVT QVT(Queries Views and Transformations)は、モデルを別のモデルに変換するための標準ルールを定義した仕様。現在、MOF2.0 QVT REPとして仕様策定中

表1:MDA機能に関連する主な仕様

   上記のような標準の策定が先行して進むものの、最新の仕様が実装されている製品は現状多くはない。依然としてUML1.4をベースにしているツールも多くある。常に最新の製品がベストであるとはいいきれない業界ではあるが、MDA機能に限っていえば、上記最新の仕様に準拠した最新製品の選択をお勧めしたい。

   現在、これらの最新仕様を実装した数少ない製品としてBorland Together 2006(コードネーム「Callisto」、2005Q3に米国で提供予定のTogether次期バージョン)の主な特徴を紹介することで、MDA機能の精度向上がどの程度のレベルにあるかを説明したい。

MDA機能の強化
UML2.0、XMI2.0、OCL2.0、QVTの仕様に準拠。QVTは策定中であるためドラフト仕様に準拠している

BPMNサポート
BPMNモデルの記述ならびにBPMNモデルからBPELを自動生成する機能を搭載

モデル記述制約機能
OCLの仕様が実装されることで、モデルを記述する際の制約を定義し、それをモデル上でチェックすることが可能となる。人によってモデルの記述には差が生じやすいが、それを抑制することが可能となり、不慣れな開発者を支援し、レビュー工数を削減する

モデル検査・測定機能
モデル記述制約やプロジェクト規約にそったモデルとなっているかを検査・測定する機能。以前は一旦ソースコードを生成した後でないと検査・測定できなかったが、モデルのみで検査・測定できるようになり、Executableなモデルを具現化した第一歩の状態。今後、この機能が成熟することでモデルのみで実行ならびにテストが行えるようになると期待される

モデル間トランスフォーメーション
モデルからモデルを生成するようなトランスフォーメーションを可能とする機能。以前はベンダー独自にクラス図からシーケンス図、クラス図から状態図へのトランスフォーメーションを実装していたが、これがQVTという仕様で標準化される予定。
モデル間のトランスフォーメーションは、製品間でもっとも違いがでる機能といっても過言でなく、同じクラス図も製品が異なれば、異なるシーケンス図にトランスフォーメーションされる(シーケンス図のメソッド呼び出しが、プログラムコードに変換される製品もあれば、メソッド名だけがクラス図に反映されるだけの製品もある)。こういった事態が解消され、よりモデル間のトランスフォーメーションの精度向上に進展すると期待できる

   MDA機能の精度向上は、モデル記述制約、モデル検査・測定、モデル間のトランスフォーメーション機能が盛り込まれることによって、単にクラス図やシーケンス図からプログラムコードを自動生成するというレベルからモデル中心での開発を「より上流からより下流工程まで幅広い工程」で可能としはじめている。従来のUMLモデリング・ツールが(極端にいえば)設計と実装工程の間を効率化する部分最適に過ぎなかったのに対し、今後のUMLモデリング・ツールは要求管理からテスト工程までの広範囲をカバーできる能力を保持した全体最適の方向へ向かうものと思われる。

   いいかえると、MDAが目指すところは開発ライフサイクル全体最適化であり、今までUMLモデリング・ツールがカバーしてこなかった範囲もその対象範囲としはじめている。MDAの役割/位置づけが大きく変化する分岐点にあるのではないだろうか(図4)。そのため、UMLモデリング・ツール・ベンダーとしては、MDAが目指す開発ライフサイクル全体最適化を1つのUMLモデリング・ツールで実装するのではなく、複数の製品を提供することで実現することになる。

今後のMDAの位置づけ
図4:今後のMDAの位置づけ
出所)野村総合研究所

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野村総合研究所
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  田中 達雄
1989年4月に富士通株式会社に入社。ソフトウェア工学を専門分野とし「UMLによるオブジェクト指向開発実践ガイド(技術評論社出版)」を共著。2001年2月に野村総合研究所に入社。現在、情報技術本部にてIT動向の調査と分析を行うITアナリスト集団に所属。Webサービス/BPMなどの統合技術、エンタープライズ・アーキテクチャなどが専門。


INDEX
第4回:UMLの今後と展開
  事例からの考察
  情報伝達能力(表現力)のさらなる向上
MDA機能の精度向上
  開発ライフサイクルの支援