第3回:ITインソース/アウトソースの判断 (2/3)

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第3回:ITインソース/アウトソースの判断
監修者:野村総合研究所  淀川 高喜   2005/11/24
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アウトソーシングのマネジメント方法

   図2は、効果的なアウトソーシング活用に向け、3つのサービス種類別にユーザ企業が行うべきマネジメントの枠組みを示したものである。
ITサービスの性格に応じたマネジメント方法
図2:ITサービスの性格に応じたマネジメント方法
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


(1)コモディティサービス

   開発の下流工程や運用オペレーションを中心としたコモディティサービスであれば、ユーザ企業の求める価値は、自社では達成困難な効率性や生産性と業務全体のローコスト化となる。いわゆる「オペレーショナルエクセレンス」と呼ばれる価値である。

   このような価値を追求するには、まず、当該工程プロセスの徹底的な標準化・効率化(ムダ取り)を行うことが必須となる。標準化・効率化なしに外部サービスへ切り替えたところで、結局、属人化された業務を社員が教え続けることになるなど、ほとんど効果を得られないことも多い。

   次に標準化されたプロセスに評価指標を設け、アウトソーサーとともにこの指標の向上策を議論していく。この際、業務改善を決してアウトソーサーまかせにしてはいけない。必要に応じて、価格の市場比較や競争原理の導入(毎年、契約時に複数社コンペを実施するなど)を行い、アウトソーサーに緊張感を持たせることも必要である。


(2)マネジメントサービス

   コモディティサービスに加え、マネジメントサービスまで含めてアウトソースする際、ユーザ企業の求める価値は、「マネジメントエクセレンス」まで広がる。要件定義以降の開発工程や運用業務を、一括してアウトソーサーにまかせる場合などが、このケースに当てはまる。

   この場合、QCD(品質・コスト・納期)の達成や、それに伴うリスク(不確実性)コントロールをアウトソーサーの責任下に置き、ユーザ企業は、主として結果(成果物)を管理するという考え方となる。

   アウトソーサーは、その会社の持つプロジェクトマネジメント手法や、開発・運用標準を導入し、自己の裁量のもとで全体のリスクをコントロールし、ユーザ企業が求めるQCDを達成する。なお、ユーザ企業は、アウトソーサーが負うリスクに対して、適正なリスクプレミアムをのせた委託料金の設定を行うことが必要である。


(3)パートナーサービス

   最後に、パートナーサービスまで含めたアウトソースについて考えてみる。パートナーサービスとは、ユーザ企業において戦略的価値が高いシステム領域まで含めた外部サービスを指す。例えば、コアとするシステム領域の企画立案支援まで含めたフルアウトソースなどがこれにあたる。

   この領域は、通常はインソースが主体となるが、アウトソーサーを活用するのであれば、自社の戦略に沿った個別性の高い価値(オンリーワンバリュー)を、アウトソーサーに求めることになる。この場合、アウトソーサー側も特定の顧客のために必要な投資を個別に行うなど、かなりのリスクを負うことになるため、ユーザ企業側は相応のリスクプレミアムの支払いを行うことが必要である。さらに、得られた利益を自社とアウトソーサーで配分する仕組み(シェアドバリュー)を織り込んでおくなど、価値を共有する考え方も必要となる。

   パートナーサービスに対する評価指標の設定にあたっては、システムのQCD達成を表す評価指標(結果評価指標)だけでなく、その先にある構築されたシステムの利用価値を表す指標(バリュー評価指標)を入れておくことが必要となる。

   具体的な進め方としては、アウトソーサーをシステムの構想・企画段階から深く関与させ、当該システムの構築のみならず、当該システムの投資効果(ビジネス効果)についても、アウトソーサーに対する評価項目として組み入れることが望ましい。

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株式会社野村総合研究所 淀川 高喜
監修者プロフィール
株式会社野村総合研究所  淀川 高喜
プロセス・ITマネジメント研究室長 兼 金融ITマネジメントコンサルティング部長。国家試験 情報処理技術者試験 試験委員会 委員。1979年野村総合研究所入社。生損保、銀行、公共、運輸、流通、製造業などあらゆる分野における幅広いシステムコンサルティングに携わる。専門は情報技術による企業革新コンサルテーション、情報システム部門運営革新コンサルテーションなど。


INDEX
第3回:ITインソース/アウトソースの判断
  インソース/アウトソースの判断
アウトソーシングのマネジメント方法
  プロジェクトの定量的な管理

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