第7回:ITにかける金をいかす (4/4)

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第7回:ITにかける金をいかす
監修者:野村総合研究所  淀川 高喜   2005/12/21
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開発生産性の向上

   技術革新の進展により、ソフトウェア開発技法に変化が起こっている。開発テーマにより、従来のウォーターフォール型の開発に代えて、RAD(Rapid Application Development)やJAD(Joint Application Design)などシステム開発の上流工程からユーザが関与する開発技法を採用することにより、早くかつ安くシステムを作ることができる。

   この他、「システム開発技術の絞り込み」「システム開発標準の整備」「プロジェクト管理体制の強化」なども開発生産性向上に寄与する。
運用業務の効率化

   UNIX機などの普及に伴い、異機種のコンピュータが混在する環境の下ではシステム監視やジョブスケジューリングなどのシステム運用業務に携わる要員数が増えている場合がある。統合運用ツールの導入により、運用業務を効率化し要員数を削減することが可能である。


要求仕様の見直し

   システムに対する要求仕様を見直すことにより、ITコストを削減する取り組みも重要である。ユーザのコスト意識が希薄な場合、ユーザはできるだけ高水準の仕様を求めがちである。

   システムの設計・開発時にはユーザが必要と認めていた機能が、システム稼働後検証してみると、実際にはほとんど利用されていないことがある。使ってしまった開発費はもはや回収できない。ただし、その機能を取り除くことで、いくばくかのシステム運用コストを削減できる場合がある。

   例えば、定期的に出力され利用部門に配送されている帳票についてエンドユーザの利用状況を調べ、不要と認められた帳票の出力業務および配送業務を廃止することで、コストを削減することができる。帳票配送業務自体を廃止するのでなく、配送時間を変えてコストを削減する場合もある。

   例えば、週次レポートを毎月曜の早朝に届けていたものを午後に変更することで、配送業務のコストを低減するといった工夫が考えられる。


サービスレベルの見直し

   エンドユーザからは見えない部分の、サービスレベル見直しによるコスト削減施策もある。例えば、ハードウェアの保守契約内容に「24時間オンサイト対応」とあるのを見直し、夜間の保守サービスを削減することで保守料金を引き下げるといった施策である。

   システムに障害などが発生した時の、バックアップの仕組みを簡素化することで、機器やネットワークなどを二重化した部分のコストを削減できる。ただし、これはリスクを伴う施策であるため、実施に際しては、業務特性や影響度を慎重に考慮すべきである。


監視体制の整備

   予期しないコストの膨張を抑えたり、継続的に生産性を向上したりするための監視体制の強化は、漢方薬的ではあるが、コスト削減において欠かすことができない体質強化策である。

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株式会社野村総合研究所 淀川 高喜
監修者プロフィール
株式会社野村総合研究所  淀川 高喜
プロセス・ITマネジメント研究室長 兼 金融ITマネジメントコンサルティング部長。国家試験 情報処理技術者試験 試験委員会 委員。1979年野村総合研究所入社。生損保、銀行、公共、運輸、流通、製造業などあらゆる分野における幅広いシステムコンサルティングに携わる。専門は情報技術による企業革新コンサルテーション、情報システム部門運営革新コンサルテーションなど。


INDEX
第7回:ITにかける金をいかす
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  評価の手順
開発生産性の向上

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