第2回:サプライチェーンにおけるRFIDの適用 (1/4)

RFID
RFIDによるシステム構築

第2回:サプライチェーンにおけるRFIDの適用
著者:野村総合研究所  藤吉 栄二   2006/3/28
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RFIDとサプライチェーン

   第1回では、RFIDの特徴を端末であるRFIDタグを中心に紹介していくなかで、その本質的な特徴は「無線」と「ID」を同時に実現できることと説明した。現在では、これらの特徴をいかしてFA(ファクトリーオートメーション)における工程管理や図書館の書籍管理、チケットなどの分野ですでに利用がはじまっている。

   現在のRFIDへの関心を支える技術的な背景はそれだけに留まらない。RFIDタグに格納された情報を流通させ、企業間での共有を可能とする基盤として、インターネット環境の充実もRFIDがもたらす可能性の幅を広げている。

   RFID適用先として感心が高いのが、サプライチェーン(注1)分野における次世代バーコートとしての利用である。これはウォルマートの取り組みやEPCグローバルの活動などに相当する。そこで、今回は、サプラチェーンにおけるRFIDの利用について紹介する。

注1: 本連載ではサプライチェーンを「生産から販売に至る、モノの流通に関わる仕組み」という意味で利用する。


サプライチェーンにおけるRFID利用事例

   まずは、当該分野での欧米での代表的なRFIDタグ導入例を示す(注2)。

導入企業/推進団体 開始時期 RFIDの利用範囲
小売業者 マークス&スペンサー(英) 2004年初頭 ケース(クレイト)レベル
メトロ AG(独) 2004年11月 ケース、パレットレベル
ウォルマート(米) 2005年1月 ケース、パレットレベル
ターゲット(米) 2005年春 ケース、パレットレベル
アルバートソンズ(米) 2005年4月 ケース、パレットレベル
医薬品 米国食品医薬局(FDA) 2007年予定 アイテムレベル
防衛 米国防総省(DoD) 2005年1月 ケース、パレットレベル

表1:欧米での代表的なRFID導入例

注2: 導入は全店舗/拠点ではなく、部分的である。また、導入企業はこれ以外にもある。

   第1回でも言及したが、世界最大手の小売業者ウォルマートが取引先へのRFIDタグ付きパレット/ケースの納入を要請して2005年より開始したことは、世界中の小売業者およびITベンダーに大きなインパクトを与えている。

   欧米の大手小売業者のRFIDタグの導入表明も、ウォルマートの取り組みへの追随といっても過言ではないだろう。そのほか、DoD(米国防総省)やNATO(北大西洋条約機構)による武器や資材管理での利用や、FDA(米国食品医薬品局)が指導する偽造薬品防止プログラムなどと様々な広がりをみせている。

   国内においては、ウォルマートのような大手小売業者が物流システムに採用したという事例はみあたらない。もちろん、SPA系のアパレルでの物流センターから店舗間での利用事例などがあるものの、小売業者が主体となった取り組みとしては2006年春の開始が予定されているヨドバシカメラの取り組みが注目を集めているという状況である。

   断っておくが、米国でのRFID導入が先行しているから日本のサプライチェーンが遅れていると評するつもりはない。米小業のRFID導入根拠として紹介される流通過程や店頭での商品の紛失・盗難、米小売業者におけるウォルマートの市場寡占度の大きさや、日本における精緻な在庫管理の実現、卸の存在など、日米で異なる事業環境が米国におけるRFID導入を促したといえよう。


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野村総合研究所  藤吉 栄二
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所   藤吉 栄二
情報技術本部 技術調査室 副主任研究員
1995年大阪大学理学部物理学科卒業後、大手電機メーカー系ソフトハウスにて無線技術の研究開発に従事。2001年に野村総合研究所に入社。情報技術本部にてIT動向の調査を実施。専門は、RFID、ICカード、無線LANなどモバイル関連技術。


INDEX
第2回:サプライチェーンにおけるRFIDの適用
RFIDとサプライチェーン
  国内の動向
  オープン領域下でのRFIDシステムには標準化が不可欠
  RFIDミドルウェアの役割
RFIDによるシステム構築
第1回 RFIDとは
第2回 サプライチェーンにおけるRFIDの適用
第3回 ユビキタスネット社会とRFID
第4回 RFIDプライバシー問題と今後の展望

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