経営革新を担うCRMの動向 2

見える化と個人情報保護法から考えるCRMの実践手法

はじめに前回は、CRMの導入の失敗例から、その根底にある原因について解説した。第2回目の今回はCRMのITシステム化の新しい視点として、表1にあげる2つの課題から検討してみよう。

匠 英一

2006年3月23日 20:00

はじめに

前回は、CRMの導入の失敗例から、その根底にある原因について解説した。第2回目の今回はCRMのITシステム化の新しい視点として、表1にあげる2つの課題から検討してみよう。

  • 顧客の経験価値(Customer Experience)を軸にしたプロセス改革(見える化)
  • サービスの深化と個人情報保護の課題
表1:今回取り上げる2つのテーマ

CRMのITシステム化は「カスタマーインターフェース」の改革からはじめよ

商品を売る際の考え方として「顧客にモノを売るのでなく体験を売れ」ということが強調されるが、これは機能として提供する商品の訴求では、部分満足しか与えられないからである。

部分ではなく全体としてのサービスの経験価値を提供するには、個別のシステムで対応できないため「ITシステムの統合」が不可欠だ。しかも、モノを売るのではなく、目に見えないサービス価値を提供するビジネス領域が年々拡大しているという現状がある。これは「顧客接点」の場が勝敗の分岐点となることを意味する

ただし「ITシステムの統合」と「顧客接点」という2つのことは、特にITの業界で新しい事柄ではない。

新しいのは、ITシステムの統合がカスタマーインターフェース(顧客と接する場)から見直されて、そのプロセスでの顧客経験を優先した形で全体(基幹系)へと拡張していくという戦略的な方法だ

欧米では、顧客接点という言葉は点を意味しているため、最近はより広い意味で接する面ということを強調する「カスタマーインターフェース(Customer Interface)」の方がよく使われるようになった。

具体的にいえば売り場はもちろんだが、企業のWebサイトやコールセンターなどがそれに相当する。ディズニーランドやリッツカールトンホテルの成功 にみられるように、サービス経験のプロセスでは1つでもどこかに穴があると興ざめとなって全体がマイナスとなってしまう。まさに、部分最適でなく全体最適 が求められているのだ。

そのことをシステム化でいえば、バックの基幹系ERPから階段をのぼるようにフロントのCRMを考えるのは誤りとなる。システム化では、より柔軟なビジネスの仕組みに即応するためのエンタープライズシステム構築の手法(ESAなど)が求められるのだ(図1)。

CRMシステム構築の正しい発想法
図1:CRMシステム構築の正しい発想法
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

そこで次に、CRMのITシステム化の成功モデルづくりに必要な視点を、生産と消費の相互プロセスを軸にした「見える化」から取り上げてみよう。

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