第2回:ナレッジマネジメントを具現化するツール (1/3)

エンタープライズ・サーチ
社内の情報資産を最大限に活用するエンタープライズ・サーチ

第2回:ナレッジマネジメントを具現化するツール
著者:アイ・ティ・アール  上村 陽子   2006/4/19
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業務の分類とエンタープライズ・サーチの役割

   企業の情報システムの多くは日常的に発生する定型的な業務を対象として構築されています。例えば会計システムは、各部門で発生する取引伝票の記録/集計/残高確認/財務諸表作成などの日次・月次で行う業務を対象としています。つまり定型業務のシステム化にあたっては個々の作業や作業間の流れを詳細に分析し、定型化することが前提となるのです。

   定型業務のシステム化はスタッフの生産性を高めます。上記の会計システムの例では企業の財務状況の判断に必要なトランザクションが短時間に処理されることから、企業の意思決定の迅速化にも貢献しているといえるでしょう。

   企業にとって悩ましいのは、システム化するにあたって定型化できない困難な業務です。日常の業務のすべてを定型化することはおそらく不可能でしょう。経営課題を分析して今後の企業戦略を立てるといった業務はすべての企業に存在し、そのつど必要な情報を収集して分析レポートを作成します。その際にはその時々の状況にあった最新データと分析の視点が必要であり、ある時点の作業プロセスをシステム化してもすぐに陳腐化してしまいます。

   顧客からの問い合わせ対応業務をみても、オペレータによる電話番号案内のように定型パターンが決まっているものはまれであり、問い合わせごとに回答や対処方法が異なることの方が一般的でしょう。定型化が困難な業務を無理にシステム化して、現場のニーズにあわず使われなくなったシステムは数多く存在します。

   また定型的に処理できる業務であっても、年に数回しか発生しないような業務に多大なコストをかけてシステム化することは非現実的です。採算があわないとシステム化を諦め、結局担当者が前回のやり方をなんとか思い出しながら処理することは多々あります。

   エンタープライズ・サーチを利用することにより、これまで企業においてシステム化が困難とされた非定型もしくは非定常業務の領域で業務を遂行する際に必要な情報は発見しやすくなります。このことは従業員の作業効率化/意思決定の迅速化に効果を発揮する仕組みといえます。例えば、「突然発生したトラブルに対処する」「年1回の棚卸し作業の手順マニュアルを確認する」など様々な場面でエンタープライズ・サーチは役に立つ技術となると考えられるのです。

業務の分類
図1:業務の分類


エンタープライズ・サーチに期待される効果

   エンタープライズ・サーチの効果は情報発見までの時間の短縮だけにあらわれるわけではありません。ユーザの利用状況のキーワードランキングやアクセスランキングなどのデータを活用すれば、ビジネスのトレンド(現在引き合いの多い案件、競合情報の速報など)や有益な情報(参考になる提案書サンプル、必読の社内ニュースなど)を得る機会が増大します。

   複数の部門サーバを相互に検索できれば、縦割りで閉鎖的な組織の情報共有を進めることができます。また、縦割りの組織では複数の部門で似たようなドキュメントを作成しているケースが多々みられますが、エンタープライズ・サーチはそういった冗長的な業務を減らすきっかけにもなるでしょう。

   さらに新たなプロジェクトを企画する際に、その分野の専門家を探すといった活用方法もあります。更新日付や作成者などで情報検索が可能なシステムであれば、利用次第で様々な活用が可能であることは容易に推測できると思いますし、ナレッジマネジメントに大きな効果が期待できるでしょう。

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アイ・ティ・アール  上村 陽子
著者プロフィール
株式会社アイ・ティ・アール  シニア・アナリスト
上村 陽子(かみむら ようこ)

データウェアハウス、BI、CRM、コンテンツ管理分野の市場調査を担当する。慶応義塾大学理工学部卒業後、ユーザ企業の情報システム部門を経て、1999年より現職。


INDEX
第2回:ナレッジマネジメントを具現化するツール
業務の分類とエンタープライズ・サーチの役割
  ナレッジマネジメントとは
  ナレッジマネジメントを具現化するツール
社内の情報資産を最大限に活用するエンタープライズ・サーチ
第1回 エンタープライズ・サーチが求められる背景
第2回 ナレッジマネジメントを具現化するツール
第3回 エンタープライズ・サーチの機能を見極める
第4回 各社エンタープライズ・サーチの機能を見極める
第5回 企業導入における留意点

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