ERP導入の失敗とは何か、成功のためには何をすべきか
ERP導入で重要な点は
ERPの導入における成功や失敗とは何であろうか。
多くのERP導入事例で、初期に予定していた期日までに完成しなかった事例や、予定した費用を大幅に超えてしまったという話は専門誌などによく紹介 されている。そのため一部の経営者や経営企画担当者などは、多額の投資をしてもうまくいかないERPの導入に懐疑的になっていることも事実である。
そこで今回は、ERP研究推進フォーラムから発行されている「ERP導入リーダーを目指す人のための実践ガイド」から、その一部を紹介しつつERP導入における重要な点を解説する。
ERPの導入に携わる管理者やプロジェクトマネージャーなどのリーダー向けの実践ガイドブック。
http://www.erp.gr.jp/book/book/057/book057.html
ERPの導入は単にERPパッケージの導入ではない
ERPの導入とは、図1にあるように3階層の構造で捉えることができる。
ここで示した3階層の1番目は企業の基盤となる企業文化・風土の企業基盤層、2番目はその上に展開される企業の活動を支えるビジネスプロセス層、3番目はそのビジネスプロセスを支える企業情報システム層から構成されている。
企業基盤層とは企業の文化や風土であり、企業を牽引する経営者や従業員などから構成されるものだ。最近の話題では、MITのErik Brynjolfsson教授が書いた「インタンジブル・アセット」にも、ITシステムの導入の成功を支える重要な点として目に見えない資産(インタンジ ブル・アセット)を指摘している。具体的な内容としては従業員への教育などの重要性を述べている。
原著:Erik Brynjolfsson、翻訳:CSK、ダイヤモンド社刊。
また経営者の強力なリーダーシップも重要な点である。なぜなら企業文化をいかにして変革していくかが、企業の成長の原動力であるからだ。 このように、企業を取り巻く環境を3階層で捉えるときに、ERPを導入することは単にコンピュータソフトウェアの導入ではなく、企業の風土や文化や従業員の意識の変革、ならびにビジネスプロセスの改革、BPR(注)を伴わなければならない。
その理由としてはERPの目的が企業に存在するあらゆる資源・人・金・物・情報の最適計画にあるからである。
ビジネスプロセス層では、変化する経営環境や顧客の要望の変化、取引先の変化などに俊敏に対応可能な新しいビジネスプロセスを創造できることが求められている。それらを支える企業情報システム層では、企業活動の変革、BPRが不可欠である。