第2回:製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化 (1/3)

経営の可視化
企業活動と経営の可視化

第2回:製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化

話者:オープンストリーム  赤穂 満   2007/3/6
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製品ライフサイクル管理の意義

   製品の企画段階から設計(開発・生産)段階および量産段階、最終的には納品後まで、製品のすべての付加情報が見えるようにしたい。このような製品ライフサイクル管理(PLM:Product Lifecycle Management)は多くの製造業の経営者が望んでいることである。

   ここ数年来、製品ライフサイクル管理というコンセプトが提唱されている。しかしその実現にあたっては、製品に紐づく情報がドキュメントとして各担当部署に保管されていることから、顧客や製品単位で品目に関するすべての情報を見ることができないという現実に直面する。

   また実際に現状の基幹システムに組み込む場合、データベースの構成を見直し、製品構成を再定義するという膨大な工数が発生するために、厄介な作業になることは想像に難くない。

   では、そのような膨大な作業を行う意味があるのだろうか。ここでは製品ライフサイクル管理の意義について改めて整理していこう。

今、製品構成を可視化することの意義

   現在の製造業では、開発期間の短縮や製品の高度化・複雑化・多機能化により、設計者の負担が増大する傾向にある。

   また製品への安全性や環境への配慮に加え、2007年以降においては熟練技術者の大量退職が迫っており、数多くの経験やノウハウを持つこの世代の知識の有形化が企業にとって急務となっている。

   これらの課題を解決するには、過去の製品やトラブル情報などを共有できる仕組みを検討する必要がある。


企業に眠る資産

   実際に多くの企業では、過去の失敗や経験から得た貴重な資産である製品情報が相当量蓄積している。しかしその中から必要な情報をうまく検索・抽出できていないため、結果的に死蔵しているのである。

   これらの情報を各製品ライフサイクルに応じて抽出する仕組みによって、生産段階での不具合予測や調達先、必要コストなどを事前に共有することが可能となる。その結果、早期段階での製品品質を作り込むことができるのである。

   可視化の対象となる製品情報とは、以下のようなものが考えられる。

  • 設計構成および生産構成の親子関係
  • 構成品目やコスト情報
  • リビジョンごとの適用機
  • 規格品/購入品/材料と調達先
  • 注記管理(材料の表面処理など)
  • パーツリスト構成(図番に対応した部品の展開)

表1:可視化の対象となる製品情報

   今回はまず製品ライフサイクルについて解説し、製品構成について定義していく。その後、製品の品目情報を製品ライフサイクル管理として基幹系システムの外側に位置づけ、製品単位での情報収集をスピードアップさせる実現方式について検討していく。


製品ライフサイクル管理とは

   製品ライフサイクル管理とは、製品の構成や情報を「企画 → 設計 → 製造 → 販売 → 保守 → 廃棄」までの一連の流れ(バリューチェーン)に応じて、情報を付加しつつ、製品の収益性向上とコスト削減を目指すものである。

   これにより、各バリューチェーンにおける製品の構成情報や変更情報、それらにかかった費用も「見える」仕組みが容易に実現できるようになる。その仕組みとして「BOM(Bill of Materials)」がある。

設計プロセスと製品ライフサイクル管理概要
図1:設計プロセスと製品ライフサイクル管理概要
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

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株式会社オープンストリーム  赤穂 満
著者プロフィール
株式会社オープンストリーム  赤穂 満
サービス推進兼SAXICE推進担当 統括ディレクタ
活動状況:これまでに、製品ライフサイクル、製品構成情報管理やビジネスモデルなどに関する解説記事、論文多数。
所属学会:日本設計工学会、経営情報学会、ビジネスモデル学会、正会員。


INDEX
第2回:製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化
製品ライフサイクル管理の意義
  BOMの概念
  変更管理の見える仕組み
企業活動と経営の可視化
第1回 企業の生産活動をどのように可視化していくか
第2回 製品ライフサイクルの観点から見る製品情報の可視化
第3回 原価企画の観点から見るコスト情報の可視化
第4回 戦略的調達の視点から見る調達情報の可視化
第5回 経営の可視化の実現策

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