ネットワーク全体から見る「スイッチ超入門」
まずはネットワーク全体を見る
本連載では、ネットワークの根本技術であるスイッチとルーター、そしてVoIP(IP電話)のそれぞれの基礎技術を、ネットワーク全体を俯瞰(ふかん)しながら分かりやすく解説します。
昨今のネットワーク環境は、多種多様なベンダー製品を組み合わせて構築するのが一般的です。さらに、ルーター、スイッチ、ファイアウォールなど、さまざまな役割を果たすネットワーク機器が混在しています。全体を見渡すのが難しい状況にあると言えます。
「木を見て森を見ず 」ということわざがあります。ネットワークの世界でも同じです。個々の技術に心を奪われてネットワーク全体を見ないがゆえに、結果としてトラブルの復旧に時間がかかってしまう。実際の現場ではよくあるケースです。読者の皆さんの中にも経験がある方がいることでしょう。
ここで、提案があります。読者の皆さんには、「個々の技術をひとつひとつ極める」という従来の考え方を、いったん脳裏からすべて捨てていただきたいのです。まずは、ネットワーク全体を俯瞰(ふかん)してネットワークの全体像を把握したうえで、個々の技術を学んでほしいのです。
以上のような筆者の身勝手な願いも込めて、今回の連載をはじめさせていただきたいと思います。
ネットワーク全体におけるスイッチの位置づけ
スイッチは、図1-1のようにLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)の中心的な機器として位置づけられており、イーサネット(Ethernet)技術を利用しています。実際のネットワークは、レイヤー2スイッチやレイヤー3スイッチと呼ばれる機器を中心に構築します。
今回は、その基礎である「レイヤー2スイッチ」に焦点をあて、解説します。
レイヤー2スイッチの用途
レイヤー2スイッチとは、ネットワーク機器の1つで、OSI参照モデルの第2層にあたるデータリンク層(TCP/IPではネットワーク・インタフェース層)においてデータの行き先を判断/転送する中継装置です。イーサネットを前提としており、イーサネット・フレームに含まれるMACアドレスを見て、データの行き先を決定します。
また、レイヤー2スイッチは、多くのネットワーク機器の中で、ユーザーにとっては最も身近なものです。なぜなら、各種のネットワーク端末やサーバー機はもちろんのこと、現在ではテレビ・カメラや電話までもがケーブルを介してレイヤー2スイッチに接続されているからです。LANを構築するにあたり、レイヤー2スイッチは無くてはならない存在です。
このように、レイヤー2スイッチは、オフィスのフロアにある端末や無線LANアクセス・ポイントなどを接続するエッジ(境界)に位置するネットワーク機器(エッジ・スイッチ)です。こうした特徴から、レイヤー2スイッチは、フロア・スイッチやアクセス・スイッチなどとも呼ばれます。
レイヤー2スイッチはまた、コンシューマ製品から企業向け製品まで、さらに通信事業者向けにさまざまなプロトコルに対応した製品まで、用途に応じてさまざまです。しかし、規模の大小や使用場所に関係なく、イーサネット・フレームを転送するという基本的な仕組みは同じです。
次ページからは、レイヤー2スイッチの基本動作について解説します。