今後のUnified Communications
オンデマンド型とオンプレミス型(内部構築)
3回にわたり、UCツールの現状を解説してきました。最終回となる今回は、UCの今後の姿について解説します。
オンデマンドとオンプレミス(内部構築)、パブリック・クラウドとプライベート・クラウドなど言葉はさまざまですが、(第三者がSaaS型で提供するネットワーク・サービスを必要なときに利用する)オンデマンド型アプリケーションの活用は、UCにおいても広がっていくと考えられます。
アプリケーションの反応速度やセキュリティの問題から企業内部に残るUCツールもありますし、オンデマンドで外部からサービスを受けることでコスト削減が見込めるUCツールもあります。今後は、どちらかに偏るのではなく、状況によってUCツールをどこに置くかを選択することになります。
処理速度を重視するアプリケーションに、音声通話があります。音声を扱っているUCツールは内部構築を選択する場合が多いと考えられます。一方で、そのほかのUCツールの場合は、費用とセキュリティ要件の比較でオンデマンドとオンプレミスを選択することになると考えられます。
例えば、Web会議とチャットのアプリケーションをオンデマンドで調達しつつ、電話と留守番電話のアプリケーションに関しては内部システムで実現する、といったハイブリッドなシステムが考えられます。こうした使い方がストレスなく実現できることが、UCツールとして重要です。
仮想環境での利用にUC特有の注意点
社内で構築/稼働させる情報システムは、時代の流れからサーバー仮想化環境を利用することが一般的になりつつあります。これはUC環境も同じです。
しかし、UCはリアルタイム性の高いアプリケーションであるため、サーバー仮想化環境で構築する際にはUC特有の問題に対処する必要があります。
例えば、UCでは、保留音や留守番サービスの音声ガイダンスがサーバーから流れる場合があります。つまり、サーバーが定期的に音声パケットを生成/送信するだけの性能が保証されなければなりません。音声パケットの送信間隔がずれた状態で再生音を聞くと、音が崩れて聞こえてしまいます。
サーバー仮想化環境においては、音声パケットの定期的な生成/送信を保証することは難しいです。今のところ、この問題に対する明確な解決法はないようです。
解決策として考えられるのは、運用上の工夫として、仮想サーバーの設定や動作環境を限定するというものになると考えられます。つまり、仮想化のメリットの1つであるサーバー統合や別物理サーバーへの移行/移動が制限されることを意味します。
サーバー仮想化環境でUCアプリケーションを動作させるメリットとしては、まずはハードウエアからの独立になると考えられます。ハードウエアから独立することにより、きょう体が故障した際のメンテナンス(交換)が容易になります。
今後は、UCアプリケーションにおいても、1台の物理サーバーに複数の仮想サーバーを統合する使い方ができるかどうかや、サーバー仮想化環境に特有な運用管理機能を利用できるかどうかが課題となります。根本的には、サーバー仮想化環境においてI/Oの厳密なコントロールや命令の優先付けが可能かどうかがキーとなります。
次ページからは、異なる企業間のネットワーク接続と、端末の進化について解説します。