OSSでできること/できないこと
統合運用管理ソフトウエアとは
昨今、企業の情報システムの現場は、多数のサーバー/ネットワーク機器で構成されています。こうした時代、システムの運用管理に苦労されている方も多いでしょう。この連載では、商用ソフトとの違いに着目しつつ、OSS(オープン・ソース・ソフトウエア)を生かしたシステム運用管理について解説します。
システムが正常に動作しているかどうかの監視、データのバックアップ、ソフトウエアの構成管理などなど、システムの運用管理に要求される作業は多岐にわたります。
システムの規模が小さく、サーバーやネットワークの機器が少ないうちは、これらの作業をOSの標準機能だけで解決したり、自作のスクリプトで対処したりというように、個別での対処も可能ですし、実際そうされている方も多いでしょう。
一方で、システムの規模が大きくなってくると、これらの運用管理作業がとてつもない手間となってくるのは容易に想像できます。
こうした背景の下、統合運用管理ソフトあるいは統合運用監視ソフトと呼ばれる分野が確立しています。運用管理を統合的に一括して行うことができるソフトウエア群です。商用製品の有名どころでは、JP1(日立製作所)、Tivolli(米IBM)、SystemWalker(富士通)、WebSAM(NEC)、HP Software(旧OpenView含む)(米Hewlett-Packard)といった大手ベンダーの製品があります。
一方、この分野のソフトには、OSSも存在します。商用ソフトに比べると知名度が低いですが、OSS界隈(かいわい)では比較的有名なものがあります。代表的なOSS統合監視ソフトとしては、ZABBIX、Hinemos(NTTデータ)、Nagios、Xymon(元hobbit)などがあります。
OSSにはまた、もっと個々の機能に特化したツール、例えば監視専用のツールや収集したデータをグラフなどで表示するツールなど、種々雑多なものが多数存在しています。単独で使われるソフトだけでなく、ほかの製品に組み込まれて連携して動作するものもあります。
図1に、統合監視ソフトの典型的な使われ方を示します。
OSS統合監視ソフトウエアと商用製品の違い
OSSの統合監視ソフトは、商用製品に比べると機能が少ないと言われています。商用ソフトは統合「管理」であるのに対し、OSSの方は統合「監視」とうたっているものが多く、監視機能に注力しているものがほとんどです。それ以外の、商用ソフトに見られる以下のような機能は「OSSにできないこと」になります。
- 構成管理
- ジョブ管理
- ユーザー管理
- バックアップ管理
- 資産管理
- 帳票管理
これらの機能のすべてをすべての商用ソフトが持っている訳ではありませんが、OSSにとって足りない機能であることに違いはありません。逆にこれらの機能が不要であれば、OSSでも十分使えるということになります。
一方、OSSの統合監視ソフトが得意としている監視機能にはどんなものがあるでしょうか?各ソフトによって少しずつ違っていたり、同じものでも別の表現をしている場合がありますが、おおむね以下のような機能がOSSの得意分野です。
- リソース監視(CPU使用率、ディスク容量など)
- アプリケーション/プロセス監視(アプリケーションとしての動作の監視や、プロセスの死活監視)
- ログ監視(ログにエラーなどの異常がないかを監視)
- サービス・ポート監視(サービスを提供しているネットワーク・ポートの監視)
- SNMP監視(SNMPポーリングで得た情報の監視)
- ファイル監視(ファイルの存在、サイズの確認などの監視)
単に監視を行うだけでなく、監視対象の異常を検知したことをイベントのトリガーとして、管理者にメールで通知したり、あらかじめ設定しておいた管理コマンドを実行したりする機能を備えたものがほとんどです。これまで統合監視ツールをまったく使っていなかったのであれば、これだけでも、かなりの助けになるでしょう。
OSSの良さは、使ってみて気に入らなければ気兼ねなく別のものに乗り換えられるという点です。気軽に試してみるとよいでしょう。
次ページからは、OSSの統合監視ソフトの例として、GroundWorkというソフトを紹介します。