ユーザビリティ向上はプロセスが大事!

2008年9月29日(月)
田邉 耕平

Webサイトを知ることがユーザーを知ることにつながる

 第1回(http://www.thinkit.co.jp/article/130/1/)、第2回(http://www.thinkit.co.jp/article/130/2/)では、基本的なユーザビリティをチェックする手法について、第3回(http://www.thinkit.co.jp/article/130/3/)では、Webサイト独自のユーザビリティをチェックするために、実際のユーザーにチェックしてもらうことの重要性と、その調査方法であるユーザビリティ調査について説明しました。

 ユーザビリティ調査は、Webサイト内におけるユーザーの導線上のどこにボトルネックがあるのかを仮説検証する調査です。アクセス解析だけではわからないWebサイトのユーザビリティを改善できる非常に有効な調査ですので、ぜひやってみてください。

 このようにしてWebサイトのユーザビリティを調査することは、同時に「ユーザーを知ること」でもあります。コミュニケーションの主導権がユーザー側にあるインターネットでは、「ユーザーを知ること」がなければ「ユーザーに知ってもらうこと」ができないと考えて良いでしょう。ユーザビリティは、Webサイトの価値を高める上で非常に大切な要素なのです。

ユーザー中心設計「ISO13407」

 ここまで「Webサイトのユーザビリティを調査し、改善する」ということを中心にご説明してきました。しかし実はそれは、ユーザーを中心に添え、Webサイトを設計・構築していくユーザー中心設計プロセスの一部分にすぎません。本当に重要なことは、この「プロセス」にあります。Webサイトの目的やユーザーによってユーザビリティをどうとらえるかということは変化します。つまり、ユーザビリティというものは1つの物差しですべてはかるものではなないということです。

 その意味で、アウトプットではなくプロセスを管理することがユーザビリティ向上に大きく寄与します。このプロセスを考える上で非常に参考になるのがヒューマンセンタードデザインに関する国際規格「ISO13407」です。

 「ISO13407」とは国際標準化機構(International Organization for Standardization)により1999年に制定された規格です。この語名は「Human-centred design processes for interactive systems」と言い、日本においては「インタラクティブシステムの人間中心設計過程」と翻訳されています。ユーザビリティを向上させるため、設計プロセスそのものを人間中心にすることで、ユーザビリティの向上をはかるためのものです。

 ISO13407では、まず「人間中心設計の必要性の特定を行う必要がある」とし、その次に以下4つのステップを一連のプロセスとして回していきます。

1.利用状況の理解と明示
2.ユーザーと組織の要求事項の明示
3.設計による解決策の作成
4.要求事項に対する設計の評価

 最初に行うべき「人間中心設計の必要性の特定」はこれから構築するWebサイトのそもそもの目的を定義しましょうということを意味します。実はこれが最も重要なことで、これがなければ何も生産的なことは生まれません。そしてこの定義に基づき、「1.利用状況の把握と明示」から「4.要求事項に対する設計の評価」までのプロセスを経てWebサイトを設計・構築します。

 前回(http://www.thinkit.co.jp/article/130/3/)説明した「ユーザビリティ調査」はこの「4.要求事項に対する設計の評価」にあたるものです。この一連のプロセスですが、おそらくWebサイト構築に携わったことのある方なら、なんとなく理解できるものではないでしょうか。

 このプロセスにおいて筆者が最も重要なことだと考えるのは、「1.利用状況の理解と明示」から「4.要求事項に対する設計の評価」の4ステップは「循環するプロセス」として定義されていることです。事実、この循環するプロセスを実現させるためにISO13407ではユーザビリティ調査を行う施設の整備、そのための部署や人員の配置、教育の実施なども求めています。

株式会社クリエイティブホープ
Webプロデュース局 ディレクター。1980年生まれ。2006年より株式会社クリエイティブホープにて多くのWebサイト構築プロジェクトに従事。現在はディレクターとして調査・戦略・設計・構築フェーズを担当。趣味はソースづくり。http://www.creativehope.co.jp/

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