ユーザビリティ向上はプロセスが大事!
ユーザーエクスペリエンスを設計・構築する
それでは、なぜ「プロセスの循環」が大切なのでしょうか。重要なことはユーザビリティ調査の結果を基にWebサイトを改善するための「循環プロセス」だと言うことです。ただし、Webサイトの改善と言っても単純に画面設計や見た目上のデザインを改善するだけではありません。本当にユーザー中心にWebサイトを設計しようと思えばユーザーの利用体験(ユーザーエクスペリエンス)そのものを設計・構築する」という考えが必要になります。
「ユーザーエクスペリエンスを設計・構築する」と考えた時には、循環プロセスにおいて「1.利用状況の理解と明示」までさかのぼる必要があります。ユーザーの利用状況というのは日々変化していきます。同じWebサイトでも、ユーザーが昨日と同じ目的で同じように使ってくれるとは限りません。
例えば、競合Webサイトで新たな機能を提供すれば、ユーザーはそれを求めるかもしれません。社会状況が変われば、利用目的が変わるかもしれません。常にユーザーを取り巻く環境は変化しています。
ユーザーエクスペリエンスを中心にWebサイトをとらえた場合、どんなにユーザビリティに気をつけて構築したWebサイトでも、それがいつまでも優れたユーザーエクスペリエンスを生み出すとは限りません。それはユーザーが感じ体験するものであり、Web技術の進化や社会情勢の変化など外的要因を多く含むものだからです。だからこそ、循環プロセスにおいて「1.利用状況の理解と明示」までさかのぼる必要があるのです。
ユーザー主権時代におけるWebサイト
筆者は今の時代を「ユーザー主権時代」と勝手に呼んでいます。インターネットにおいて、ユーザーがコミュニケーションの主導権を握っています。広告においてもよりユーザーの趣味趣向にあわせた形で配信ができるターゲティング手法が日々進化しています。
ユーザーの興味や目的に合致しない情報はそもそもアクセスされることがありません。そしてたとえユーザーの興味や目的に合致する情報が存在していたとしても、ユーザーがそこにたどり着くことができなければそれは存在しないことと一緒です。その意味で、インターネット上での活動にはユーザビリティが非常に重要になってきます。
しかし、ユーザビリティとは概念であり、正解のないものです。そこで「アウトプット」ではなく「プロセス」を管理することが重要になります。今回ご紹介したISO13407は、人間を中心にした設計のプロセスを定義した国際規格です。これがWebサイト設計・構築においても非常に参考になり、Webサイトのユーザビリティはユーザーによって変化します。そしてユーザーはさまざまな外的環境によって変化します。
例えば、Eコマースの大手Amazon.comのWebサイトで新しい技術が使われれば、それがデファクトスタンダードになることもあります。このように外部環境の変化をふまえ、自Webサイトを中心にしてユーザーをとらえるのではなく、ユーザーを中心にして、自Webサイトのあり方をとらえることが重要なのです。