ゲーム理論を用いたプロジェクト管理
再び、「論理力」とは?
今回のテーマは「ゲーム理論をプロジェクト管理で利用する」です。本連載は、論理力を鍛えて上手なプロジェクト管理を実現するという企画ですので、ここであらためて論理力というものについて整理しておきましょう。
論理力という言葉は非常によく用いられる言葉です。明確な合意があるわけではありませんが、論理学などの観点から正しい手順により厳密に理詰めで考えることによって意思決定や実行の質を高めることができる力であると考えてください。
また、論理力を用いて何らかの問題を解決するということは「事実を丹念に積み上げること」「積み上げた事実を元に理詰めで考えること」そして「考えた結果を基に一貫した行動を取ること」の3つのプロセスから構成されます。
論理力を用いたプロジェクト管理もこのプロセスに基づいて実行されるものです。「第1回:論理力とは何か?(http://www.thinkit.co.jp/article/139/1/)」でも説明しましたが、プロジェクト管理は、その性質上、多くの不確定な事象から意思決定がなされ、実行も人のモチベーションや感情が関与することから不確実性を伴います。そのため、論理力が使えないと考える方も少なからず存在します。
しかし、この考え方は逆だと思います。プロジェクト管理のような不確定・不確実要素の多い行為こそ、論理力を使うか、もしくは使えるかどうかを検討することが重要なのです。筆者が重要だと考える最大の理由は、論理力を用いて実施した意志決定・実行は「検証でき」「再現可能である」からです。
プロジェクト管理に論理力が必要な理由
皆さんもプロジェクトが終了した際は通常プロジェクトの振り返りを実施するでしょう。その際にどのように振り返りを実行しますか?また振り返った内容をどのように活用しますか?
例えば、KPT法などを使い、よかったので次もやりたいこと(Keep)、問題だったので次はやめたいこと(Problem)、次にやってみたいこと(Try)などを整理すると思います。KPT法はその簡易さもあり大変強力です。
この時プロジェクトの意志決定や実施を、先ほど示した論理力を用いた3つのプロセスに基づいて実施していれば、さらに効果的です。なぜなら、Keepにあげた項目のどこがなぜよかったのか?Problemにあげた項目のどこがなぜ問題だったのか、Tryにあげた項目のどこをなぜ次やるべきなのか、論理的な検討に基づいた仮説と現実で生じた事実を元に検証することができるからです。
その結果KPTにあがった項目を汎用的な性質とプロジェクト独自の性質にわけて把握することができ、次のプロジェクトの条件に基づいた正しい管理を再現可能になります(図1)。
さて、プロジェクト管理に論理力が必要であるという説明をしたわけですが、どのように鍛えればよいのでしょうか?論理力自身は考え抜いた仮説形成とその実行・検証を繰り返す基礎的な力です。しかし、この力を発揮するために事実を整理し、評価するための技法は先人たちの多くのやり方を実践することで「鍛える」ことができます。本連載では今回からそのさまざまなやり方を紹介します。今回は「ゲーム理論」です。