連載 :
  インタビュー

INFINIDATのストレージを使ったクラウドサービス、Neutrix Cloudとは?

2021年11月10日(水)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
関西電力系列のオプテージが100%出資するクラウドサービス、Neutrix Cloud Japanとは?

INFINIDATは、ストレージ業界の伝説的エンジニアであるMoshe Yanai(モシェ・ヤナイ)氏がイスラエルで創業したエンタープライズ向けのストレージ製品を開発販売するベンチャーだ。そのストレージにCPUインスタンス、ネットワーク、ポータルなどの管理機能と組み合わせてクラスターとして実装、東西2箇所にデータセンターを配備し、クラウドサービスとして提供するのが、Neutrix Cloud Japan株式会社である。Neutrix Cloud Japanは会社名でもあるが、INFINIDATが北米で展開する同様のクラウドサービスの名前であるNeutrix Cloudをそのまま引き継いで、日本でのクラウドサービスに参入したとも言える。

今回は、Neutrix Cloud Japan株式会社のCEOである田口勉氏と、製品・技術本部本部長の高橋信久氏にインタビューを行い、戦略などを聞いた。

INFINIDATについては以下の記事を参照されたい。

参考:イスラエルのハイエンドストレージベンダーINFINIDAT、日本での積極的な展開を発表

大阪からテレビ会議で参加した高橋氏(左)とCEOの田口氏(右)

大阪からテレビ会議で参加した高橋氏(左)とCEOの田口氏(右)

ビジネスの概略から教えてください。

田口:2020年9月に会社を設立しました。今はNeutrix Cloud Japan株式会社の代表として仕事をしています。会社自体の資本金は、関西電力の系列であるオプテージが100%出資しています。私自身はアイネットでずっとクラウドサービスに関わってきた経験があります。関西電力にとっては、関連会社の代表を社外から連れてくるというのは初めてだったと聞いています。モシェさんとは、直接日本でのビジネスに関して意見交換をしてお互いが納得できたことが大きかったですね。そこでかなり踏み込んだ議論をした上で、こういう風にビジネスをしようというのに対して合意ができたという感じです。モシェさんとNir Simonさん(INFINIDATのExecutive VP)にエグゼクティブアドバイザーとしても参加してもらっています。

INFINIDATの製品を使ってクラウドサービスを提供するというのは、すでに北米で展開されているサービスだと思いますが、日本市場への展開に際して日本法人が決められる範囲はあまり多くないのでは?

田口:実際のところ今回の件に関しては、かなり大きな部分まで日本で決められるようになっています。価格設定もこちらでできますし、提供するサービスも自由に設計できます。Neutrix Cloudの多くの部分がソフトウェアとして実装されていますが、そのソースコードも貰っています。

ハードウェアとしてInfiniboxを使うので、INFINIDATにとってみれば自社製ハードウェアが売れるので、問題ないということですか?

田口:そうですね。Neutrix Cloud Japanとしては、このスライドにあるように本格的にマルチクラウドの利用が進んでくるという状況に合わせて、大容量で低価格というINFINIDATの特徴を活かせるようなエリアにフォーカスしています。これが我々の戦略です。

Neutrix Cloud Japanのフォーカスエリア

Neutrix Cloud Japanのフォーカスエリア

低価格という話がありましたが、もう少し具体的に教えてください。

田口:基本的に容量に対しては課金されますが、データ転送量については無料になっています。データサイズに対する単価も、AWSなどと比べると非常に安価になっています。スナップショットやIOPSについてもAWSだと個別に課金が発生しますが、すべて無料です。ブロックストレージで比べてみると、AWSのブロックストレージの最大のボリュームサイズは16TBですが、Neutrix Cloudであれば約64倍の1PBまで利用できるので、ここでも大容量という特徴が活かされていると思いますね。

またINFINIDATのInfiniboxにはオブジェクトストレージは実装されていませんが、Neutrix Cloudではそれを実装しています。ですので、AWSで実現されているストレージの機能を安価に実現した、大容量のストレージと言えます。

ストレージサービスの概要

ストレージサービスの概要

ハードウェアにオールフラッシュなどを使わなくても高速であるというのはINFINIDATの特徴ですが、実際にスナップショットを無限に取っても遅くならないなどの特徴がそのまま活かされている感じですね。

高橋:スナップショットの辺りは、INFINIDATの良さがそのまま出ていますね。コンピュートの部分は仮想マシンとして実行されますが、そこはVMwareのテクノロジーを使って実装されています。CPUやストレージの使い方も複数のモードで利用できるようになっています。

コンピュートインスタンスの利用モード

コンピュートインスタンスの利用モード

高橋:すべてを共有するモードがパブリッククラウド型ですね。他に、サーバーのCPUだけを専有するモード、そしてすべてを専有するモードがあります。パブリッククラウドの方法だとマルチテナンシーで実行されますが、INFINIDATのソフトウェアはノイジーネイバー問題も上手く回避できるように設計されています。

Neutrix Cloudの良さを知ってもらうには、ハードウェアであるInfiniboxに対する理解を深める必要があるのでは?

田口:確かにそういう面もありますが、そこを無理に訴求しようとは思っていません。なぜなら、すでに多くの顧客が利用を始めていますし、徐々にそのユースケースが出てくれば理解は拡がっていくのかなと思っているからです。

またマルチクラウドの機能として、CPUインスタンスだけAWSなどに置いておいてストレージを安価で高速なNeutrix Cloudにするという方法があります。それについても、すでにヘビーにパブリッククラウドを使っているユーザーに無理矢理移行してもらうというのではなく、今、パブリッククラウドを使おうとしているユーザー、つまりこれからパブリッククラウドを活用しようというユーザーに対して魅力的な提案になるのではないかと思っています。

高橋:AWSもAzureもGCPもサービスとして連携しているので、必ずしもパブリッククラウドが競合というわけではなく、彼らともちゃんと話をしています。また従来のストレージとの連携という意味では、NetAppのバックアップとしてNeutrix Cloudを使うということも可能なのです。

完全に置き換えるという発想ではなく、従来のシステムに組み込んで行く形が取れるということですね。

田口:そうです。その上でコストの比較から言えばNeutrix Cloudは非常に競争力がありますから、そこを理解してもらえば良いと思います。

Neutrix Cloud Japanの目標は?

田口:Neutrix Cloud Japanは100%パートナー販売ですので、まずはパートナー100社、10年で売上100億を達成するというのが目標ですが、すでに今期は半分を過ぎて目標を達成しているので、このままのペースで行きたいですね。

最後に課題があるとすれば何ですか?

田口:知名度の向上ですね。

関西電力が認めたエンタープライズグレードのINFINIDATストレージ、そしてそれをベースにしたクラウドサービスがNeutrix Cloud Japanのコアバリューだ。また田口氏は、マネージドサービスとしては非常に安定していることを特徴として強調していた。ここには書けないが、イスラエルのINFINIDATとは破格の条件で日本市場に参入したNeutrix Cloud Japanが知名度の低さをどうやって挽回していくのか、注目したい。

公式サイト:Neutrix Cloudとは?

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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