DevRelの視点で見るカンファレンス
はじめに
今日、WWDCやGoogle I/O、PHPカンファレンス、PyCon JPなど、さまざまな開発者向けカンファレンスが世界中で開催されています。主催は企業の場合もあれば、コミュニティや非営利団体などさまざまです。それぞれ異なる規模感、雰囲気で開催されていますが、こうしたカンファレンスに参加してみたいと思う方も多いのではないでしょうか。
DevRelの視点から見ても、カンファレンスがもたらす影響は大きいものです。今回はこのカンファレンスに注目して、DevRelの視点からその裏側(?)を紹介していきます。
カンファレンスの種類
カンファレンスは、主催者の立場によって2つに区分できます。
- 企業主催カンファレンス
- コミュニティ主催カンファレンス
企業主催カンファレンスは、その名の通り企業が主催するカンファレンスです。企業のブランディングやサービスの紹介、技術力アピールなどを目的として開催されます。一方、コミュニティ主催カンファレンスは、コミュニティや非営利団体が主催するカンファレンスです。コミュニティの活性化や技術の普及を目的として開催されます。
なお、コミュニティ主催と言っても個人が集まって行っている場合と、一般社団法人などを設立して行っている場合があります。
企業主催カンファレンス
企業主催カンファレンスの目的は、主に3つに分類して考えられます。
- 自社サービスを紹介する
- 自社の技術力アピール
- 収益化
自社サービスを紹介する
もし純粋なDevRelという考え方があるとすれば、こちらはよりDevRel向きなカンファレンスと言えるでしょう。AppleのWWDC、GoogleのGoogle I/O、GitHubのGitHub Universeなど枚挙に暇がありません。ざっと一覧すると下表のようになります。
企業名 | カンファレンス |
---|---|
Apple | WWDC |
Google I/O | |
GitHub | GitHub Universe |
Meta | Meta Connect |
Microsoft | Microsoft Build |
AWS | AWS Dev Day |
IBM | IBM Build |
Twilio | Twilio Signal |
外資系企業が日本国内でカンファレンスを行うケースもありますが、内資企業がこうしたカンファレンスを開催するのは非常にまれです。例を挙げるとすれば、SORACOMのSORACOM Discoveryや、楽天のRakuten Technology Conferenceなどがあります。
こうしたカンファレンスにおいて、参加者が得られるものとしては以下のようになります。
- 新しい機能リリースを知る
- 豊富なテクニカルセッションによる情報吸収
- 実際にサービスを開発しているエンジニアに直接質問できる
- 他の開発者とのコミュニケーション
DevRelに携わるエバンジェリストやアドボケイトはセッションを行うほか、ブースで開発者の質問に答えたり、コミュニケーションが求められます。また、海外のカンファレンスに日本から多くのユーザーが訪れる場合、エバンジェリストがツアーコンダクターを務めているケースも少なくありません。
自社の技術力アピール
日本国内において、開発者向けに開催されているカンファレンスの多くは、この技術力アピールのカンファレンスになるでしょう。求められるのは自社のブランディング向上、そして求人エントリーです。また、最近では社内エンジニアに登壇機会を提供するために行われる場合もあります。
2023年に開催される(または予定)だけでも、下表に示すカンファレンスがあります。
企業名 | カンファレンス |
---|---|
MIXI | MIXI TECH CONFERENCE |
Abema | ABEMA Developer Conference |
Classmethod | DevelopersIO |
DeNA | DeNA TechCon |
DevRel担当者としては、人事やマーケティング担当者と一緒にカンファレンスを企画するのが主な役割になるでしょう。人事担当者などでは、開発者が喜ぶカンファレンスの体裁が分からないことが多いので、エバンジェリストやアドボケイトには数多いカンファレンスへの参加経験からのコメントが求められます。また、登壇が求められることもあります。
収益化
あまり多くはありませんが、カンファレンスの開催で収益を上げるケースもあります。スポンサーを募り、参加費を集めることで収益化します。著名な方たちが登壇し、それに引きつけられる開発者の人たちが数多く参加します。
例えば、翔泳社のDeveloper Summit(デブサミ)があります。他の事業と比べた際の収益規模は分かりませんが、おそらくそれほど大きくはないでしょう。とはいえ、開発者とのつながりを作ることでメディアサイトへの送客を促し、ブランディング向上にも貢献しているはずです。
海外であればWeb Summitが有名です。ポルトガルのリスボンで行われているカンファレンスですが、実態は約20近くのカンファレンスが集まったイベントになります。周囲360度、どこでも同時にカンファレンスが行われており、非常に熱気あるカンファレンスです。
コミュニティカンファレンス
コミュニティ主催のカンファレンスは国内外、多数行われています。日本だけでも下表のようなカンファレンスが知られています。
カンファレンス名 | 主催コミュニティ |
---|---|
PyCon JP | Python JP |
DevRel/Japan CONFRENCE | DevRel Meetup in Tokyo |
PHPカンファレンス | 日本PHPユーザ会 |
Vue Fes Japan | Vue.js 日本ユーザーグループ |
PostgreSQL Conference Japan | 日本PostgreSQLユーザ会 |
JAWS DAYS | JAWS-UG |
PWA Night CONFERENCE | PWA Night |
海外であれば、以下のようなカンファレンスがあります。多くは技術テーマやプログラミング言語、フレームワークなどをテーマにして行われています。コロナ禍はカンファレンスを休止していたり、オンラインで実施されていましたが、最近ではオフラインに回帰しています。
- PyCon
- RubyConf
- DjangoCon
- KubeCon + CloudNativeCon
- WordCamp
- DrupalCon
- FOSDEM
- RustConf
- JSConf
- React Summit
- Wasm I/O
コミュニティカンファレンスの目的
コミュニティカンファレンスの目的は、主に以下のようなものになります。
- コミュニティの活性化
- テクノロジーの普及
- 参加者同士のコミュニケーション
- ナレッジの共有
カンファレンスは大規模に参加者が集まる分、大きく情報が共有されます。また、参加者同士のコミュニケーションに重点が置かれており、懇親会などを通じてコミュニティの活性化を図ります。
コミュニティカンファレンスの運営
コミュニティカンファレンスは一般的にユーザーグループ主体で行われますが、スポンサー収益などの管理もあるため社団法人を設立したり、幹事企業として法人が間に入ることがあります。また、コミュニティカンファレンスはボランティアで運営されることが多いため、運営メンバーの入れ替わりが激しいことも特徴です。
DevRelの役割
こうしたコミュニティカンファレンスにおいて、DevRelの役割は以下のようになります。
- スポンサード
- 登壇
- 一般参加
自社が利用している技術がテーマとなっているカンファレンスにおいては、スポンサードする価値があります。そのテーマに興味のある開発者が多く集まるので、自社のブランディングに貢献します。ブースを出せれば、そこで開発者と対話もできるでしょう。
また、登壇することで自社の技術力アピールにもつながります。コミュニティカンファレンスでは直接登壇依頼があったり、公募(CFP)が行われます。登壇依頼される場合にはどういった内容を話してほしいか打診されるでしょうし、公募の場合には採択されやすいように内容を考える必要があります。
一般参加は最も手軽な参加方法です。開発者とのコミュニケーションを図ることができますし、登壇者の話を聞くことで自社の技術力アピールにもつながります。また、登壇者とつながりを作ることで別なイベントでの登壇をお願いするなど、業界内でのリレーション形成に役立つでしょう。
おわりに
日本では技術イベントが多数行われており、カンファレンスもまた数多く実施されています。特に、秋(9〜11月)はカンファレンス開催が多い期間でもあります。ぜひ興味のあるカンファレンスを探し、参加してみてください。そこにはエバンジェリストやアドボケイト、コミュニティマネージャーと言ったDevRel関連職の方々が数多く参加していることでしょう。
逆にDevRelに関わる人たちも、ぜひカンファレンスに参加しましょう。コロナ禍を抜け、オフライン回帰しているカンファレンスは開発者とのつながりを作る絶好の機会です。
国内に限らず、世界各国で行われているカンファレンスにも目を向けてください。そこには日本とはまったく異なるカンファレンスがあります。開発者としての視野を広げることにもつながるはずです。