ロンドンで「DevRelCon London 2023」開催。その発表内容を振り返る

2023年10月12日(木)
中津川 篤司
今回は、2023年9月7〜8日にロンドンで開催された「DevRelCon London 2023」について、カンファレンスの様子を紹介します。

はじめに

DevRelConは、世界各国で行われているDevRelに関するカンファレンスです。最初に開催されたのが「DevRelCon London 2015」で、それ以降は中国・東京・サンフランシスコ・中南米・チェコなどで実施されています。

今年は、9月7〜8日にロンドンで「DevRelCon London 2023」が開催されました。今回は、このカンファレンスについて発表内容等を紹介していきます。

世界各国より約200名が参加

今回参加した人たちの主な国は以下の通りです。ロンドンでの開催なので、ヨーロッパ圏内が一番多いですね。

  • イギリス
  • アメリカ
  • フランス
  • オランダ
  • カナダ
  • 中国
  • インド
  • イタリア
  • ドイツ
  • ナイジェリア
  • チェコ
  • 日本
  • その他

今回、日本からは3名が参加しています。アジア系としてはインドからの参加者が一番多かったようです。また、国籍はインドや中国でも、勤務地はオランダやイギリスというケースも多いため、国籍=勤務地ではありません。

開催規模はこれまでと比べて若干縮小

DevRelCon Londonは2019年、コロナ禍前に実施して以来の開催となります。カンファレンス規模は年々拡大しており、2019年には400名規模で開催したのですが、今回は200名くらいに縮小しています。

これはヨーロッパやアメリカの経済停滞、レイオフ、物価高が影響しています。主催者から「今年は規模を縮小する」とあらかじめ連絡をもらっていました。実際、2023年3月に開催したDevRelCon Yokohama 2023でも、アメリカやヨーロッパからの参加者は思いのほか少なかったのが実情です。

なお、この物価高は来年以降も改善される見込みはなさそうだと聞いています。そのため、ロンドンでの開催自体が難しくなりそうとも言われていますし、サンフランシスコはすでに諦めているようです。

日本も徐々に物価高になっていたり、給与が上がらないといった課題がありますが、ヨーロッパやアメリカはそれ以上に難しくなっています。

セッション内容の紹介

ここからは、いくつかのセッションをピックアップして、その内容を紹介していきます。

The Power of DevRel by Wesley Faulkner

本キーノートセッションでは、エバンジェリストやアドボケイトの立ち振る舞いについて紹介されていました。「自分の行動は自分の評判に直結するため、常に正しい選択をしなければならない」と説明しています。

また「自分1人の力で現状までたどり着けたわけではなく、周りの人たちのサポートがあったからこそ、ここまで来られた」とも説明していました。これはプログラマーが先輩や同僚、そしてコミュニティのサポートで成長するのと同じです。

最後に「PAY IT FORWARD(先払い)の精神を大事にし、見返りを求めるのではなくまず相手に尽くすのが大事」と締めくくりました。

DevRel Insights - what we learned from 650,000 +
developers over 10 years by Jon Gottfried@MLH

Jon Gottfriedは世界最大級のハッカソンコミュニティ「MLH(Major League Hacking)」の共同創設者です。MLHは世界各国でハッカソンを開催しており、日本でも2019年に開催されました。

本セッションでは、そんなMLHのイベントを通じて得られたインサイトを紹介してくれました。特に面白かったのが「技術トレンドは2年先に分かる」というものです。ハッカソンでAngularの採用件数が減少傾向にあり、それがGoogleトレンドやStack overflowに現れたのは2年後だったとのことです。

Empowering Developers through Open Governance:
A Case Study of SegmentFault’s Success by Nadia Jiang@SegmentFault

SegmentFaultというQ&Aサービス(中国版Stack overflow)を提供する企業の共同創設者兼COOであるNadia JiangによるLTです。中国のエンジニアは、各国に比べるとまだまだ年齢層が低いのが特徴です。40代以上はわずか数%しかいないとのことです。

また年齢層が低いこともあり、ブースではノベルティとして遊べるグッズなどが配られるそうです。日本ではステッカーやメモ帳、ボールペンなど実用的なものが多い傾向がありますが、中国では遊び心が優先されるようです。

Tooling and timing:
Building high impact DevRel programs by Trevor Spires@Common Room

マーケティング系のセッションです。通常、マーケティングではファネル分析としてAARRRモデルが使われます。つまり、入り口から出口(徐々にロイヤルティが上がる)流れを、以下のステップで考えます。

  1. Acquisition(ユーザー獲得)
  2. Activation活性化)
  3. Retention(継続)
  4. Referral(紹介)
  5. Revenue(収益)

それに対して、本セッションでは、以下のようなファネル分析が提示されていました。これは他に2つくらいのセッションでも紹介されていました。

AARRRモデルがサービス提供側の視点なのに対して、こちらは利用者側の視点になります。

  1. Awareness(認知)
  2. Consideration(検討)
  3. Conversion(利用)
  4. Loyalty(忠誠)
  5. Advocacy(支持)

あくまでも感覚値ですが、AARRRモデルはファネルの下の方に紹介(Referel)があり、個人的にしっくりこない部分がありました。今回紹介されたモデルの方が理解しやすい印象があります。

レセプションパーティー

今回はカンファレンス後のアフターパーティーはなく、1日目の終わりにパーティーが開催されました。「ドリンクトークン」という紙を渡され、それと交換で飲み物を受け取ります。トークンは1人2枚なのですが、途中で帰る人が他の人に譲渡したりして、結果的に飲み放題と変わらない状態になるのが常です。

アワード

DevRelCon Londonでは、各種のDevRel施策に対する表彰が行われます。今回は以下のようなアワードがありました。

SnykはDevSecOpsで知られているサービスですし、Salesforceはすでに有名です。Infobipはメッセージ系サービスとして最近日本でも知られるようになっています。今回アワードを受賞したサービスは、これから日本でも知られるようになるかも知れません。

おわりに

DevRelCon LondonはDevRelConシリーズ発祥の地でもあり、今なお最新のDevRelに関する知見が集まるカンファレンスとなっています。規模こそ前回と比べて縮小されていますが、それでも新しい学びが多数ありました。

また、DevRelConは世界中にいるDevRel関係者が多く集うこともあり、カンファレンスでありながらコミュニティのような雰囲気があります。DevRelに関わる人には、ぜひ参加をお勧めします。

もし「いきなり海外は…」と躊躇されている方は、DevRelCon Tokyo(今年はYokohamaでしたが)への参加をお勧めします。ただし、こちらは日本にいながらグローバルなカンファレンスの雰囲気を味わえるよう、英語セッションによるカンファレンスとなっています。

オープンソース・ソフトウェアを毎日紹介するブログMOONGIFT、およびスマートフォン/タブレット開発者およびデザイナー向けメディアMobile Touch運営。B2B向けECシステム開発、ネット専業広告代理店のシステム担当を経た後、独立。多数のWebサービスの企画、開発およびコンサルティングを行う。2013年より法人化。

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