プロセス検討の第一歩
プロセス検討の第一歩
さて、「社内バックオフィス業務最適化に向けたシステム導入」を実現するために、株式会社キャッチネットワークの担当者は業務フロー図の作成から取 りかかられていました。しかしながら、第2回目に記述したように著者が以前陥った「業務の粒度が合わない」「業務の前後関係が分からない」という状況に株 式会社キャッチネットワークも陥ってしまわれました。
そこで株式会社キャッチネットワークの担当者は、業務プロセスを記述するためのツールを討されました。その検討の中で、ARISという製品を見つけられ、実際にARISを利用して業務プロセスをモデリングされました。
しかしながら、IDSシェアー社からの「ARISという整理の方法論とARISというツールの両輪が重要である」という訴求メッセージ不足もあったためか、業務プロセスの整理の方法論は従来のままでARISというツールの機能のみを利用してプロセスを記述されたために、図2に示す状況に陥られてしま いました。
これは静的情報の整理もなく、担当者が把握している身の回りの細かな作業フローから記述し始めたため、よくいう「森を見ずに枝葉を見る」という状況に陥ったわけです。

図2:陥りやすい状況
第2回でも言及しましたが、この状況はよく陥りやすいものであり、株式会社キャッチネットワークも著者である私も特殊ケースに陥ったわけではありません。しかし、株式会社キャッチネットワークも著者もARISという方法論とツール機能の両方に出会うことで、改めて「森を見て全体を鳥瞰する」ことの重 要性を認識することができたわけです。
この「森を見て全体を鳥瞰する」ことの重要性こそ、今回の事例紹介でお伝えしたいことの1つです。読者である皆様のうち、業務プロセスを整理したのはいいが、業務粒度やその前後関係に悩まれている方は、是非とも「森を見て全体を鳥瞰する」ことから始められることをお勧めします。
今回の事例でお伝えしたい重要な点は、もう1点あります。
それは、「森を見て全体を鳥瞰する」ことの重要性に気づくためには、自らの手を動かしてプロセスをモデリングすることが重要であるということです。
株式会社キャッチネットワークは、弊社とのプロセス可視化のプロジェクトにおいて、終始一貫して「自社プロセスは、自ら描く」という姿勢をとられました。あくまでプロセスを可視化する作業の主体は、株式会社キャッチネットワークにあり、IDSシェアー社はその支援を行うという役割分担でプロジェクトを進めました。このプロジェクトへの姿勢/役割分担は、以後のIDSシェアー社からの様々なスキルトランスファーや作業を実施する状況において非常に重要 な要素となりました。
プロセス検討プロセスを通じた効果
さて、前述の「森を見て全体を鳥瞰する」ことの重要性を認識するという定性的な効果は、「自らが自社プロセスを検討するプロセス」を体験することで得られたわけですが、それ以外にも大きな効果がありました。
それは、可視化された自社プロセスを通じて部署内の担当者や他部署の社員とのコミュニケーションを取りやすくなったという定性的効果です。例えば、 現場担当者から日々の改善提案を収集する際に、プロセスが可視化されていない状態現場担当者から日々の改善提案を収集する場合、担当者間の利害関係なども あり、せっかく提案された改善案に関して現場で合意を得ることが、よく困難な状況が発生していました。
しかし、「この改善案は、可視化されたこのプロセスで発生するこの課題を解決するものであり、有効である」と可視化されたプロセス・モデル上で議論 することで、今までの担当者間の思い込みやイメージ、そして口頭ベースでのコミュニケーションと比較して、無駄な論争が減り、社内のコミュニケーションが取りやすくなったという効果がありました。
この改善提案についてですが、企業の担当者の方々は、自らが実行するビジネス・プロセスの問題点や改善点に気づいていることが大半です。しかし、いざそれを他者に説明し、実行するとなると非常に大きな困難を伴うということを経験則から分かっていらっしゃいます。従って、それら改善案を提示して実行す ることに多少なりの警戒を持っていらっしゃる場合が多々あるかと思います。
このような問題点に対しても、可視化されたプロセスを通じ、現状の課題を明確にし、それをもって関係者とコミュニケーションをとることで、実際に様々な改善策を実施できる状態に至りました。