HTMLとJavaScript非互換性の問題
HTMLとJavaScript非互換性の問題
教材コンテンツが表示できない、あるいは表示が乱れる原因の多くはHTMLとJavaScriptの非互換性にあります。
前述の動画インライン再生では、
もっと簡単な例として、音声ファイルの自動再生を見てみましょう。これも
表示の乱れの原因の1つに、HTMLの仕様の違いがあります。例えば、行間をきっちり合わせるために、
タグで行間を設定したペー ジがありました。しかし、本来は
タグで行間は設定できません。この場 合には、
タグを
このように実際には些細な違いが多いのですが、ちょっとした非互換性でまったく表示されなかったり、乱れたりすることが分かりました。互換性の高いHTMLの記述方法の知識を啓蒙することが必要だと痛感しました。
起動時間の遅さの問題
今回使用したLinux PCで子ども達に不評だった点に起動時間の遅さがあります。アカウントを共通にして、自動ログインを設定したこともあり、だいたい起動に3〜4分を要しま す。子ども達の1回の集中力の限界が3分といいますから、この起動時間の遅さはかなり問題でした。
ただ、子ども達は柔軟でした。PCラックにLinux PCを取りに行き、その場で電源を入れ、モニタを開けたまま運んでくるという技を開発したのです。教室に戻ってくる間に起動がはじまり、机の上において先 生の話を少し聞くと、もう立ち上がっているという寸法です。
外部メディアの操作の問題
本実証実験では、USBフロッピーディスクドライブとUSBメモリを使用しました。デジカメ写真のコピーや、作成途中のファイルの保存が目的です。しかし、これらの外部メディアの操作は、子ども達にとって思いの外難しいものでした。
特にドライブやメディアの「マウント」という概念は、小学生には理解しにくいようです。また、マウント先が「/mnt/media/sda1/…」のように、ホームから遠いディレクトリにあるだけで、たどり着けない子どもが続出です。
マウントボタンを用意したり、マウント先にシンボリックリンクを張るなど、改良を重ねて実験後半はかなりスムーズになりました。これは一例ですが、 この他にもメニューを並べ替えたり、英語だった表記をひらがなに直すなど、数多くの細かい改良を行いました。Linuxデスクトップの操作性は最近急速に 向上しましたが、初心者にとっては、まだまだ使いづらい面があるのは確かです。

写真3:改良されたLinuxデスクトップ
つくば市の実証実験を終えて
つくば市の5つの小中学校の約2000名の子ども達にLinux PCを使って頂きました。すでに述べたように課題や苦労も多かったのですが、子ども達が生き生きとLinux PCを使っている姿を見ると、「Linuxもここまで来たか」と感慨深いものがありました。
ある学校では、授業がはじまるときに「ノートPC取ってきて」と子ども達にいうと、少し古いWindows PCではなく、自然とLinux PCを持ってくるようになったそうです。もっとも「リナックス」という単語は、OSの名前ではなく、最後までメーカの製品名だと思っている節もありまし た。
子ども達にとって、WindowsかLinuxかというOSの違いよりも、動作が軽快な新しいLinux PCの方が人気があるというだけのことかもしれません。でも、それは本来あるべき姿です。大切なのはメーカやOSの種類ではなく、IT活用教育の中身なのですから。
Linux PCが単にIT活用授業に使うコンピュータの1つとして認知されたこと、それ自体が大きな成果ではないでしょうか。