ニューラルネットワークとは何か?
2008年3月の特集「ネットワーク教習所」の水曜日では、「ニューラルネットワーク」を取り上げる。読者の皆さんも1度はニューラルネットワークという言葉を耳にしたことがあるのではないだろうか。
ニューラルネットワークを端的に説明するならば、人間の脳をソフトウェアで再現することと表現できる。人間の大脳は、140億個のニューロ ン(細胞)から構成されている。それらのニューロンは相互に結合し、巨大なネットワークを築いている。このネットワークを再現するのがニューラルネット ワークというアプローチなのである。
ではなぜニューラルネットワークが注目されているのであろうか。

コンピュータの限界
近年、コンピュータの飛躍的な性能向上により、膨大な計算量を必要とする処理が可能となってきた。高性能なスーパーコンピュータを用いた分 野では、大いに成果をあげている。例としては、気象情報や原子/分子のふるまいのシミュレーションなどがあげられる。さらに、インターネットにつながって いる複数台のPCを利用した分散コンピューティングの分野では、さらに膨大な計算が必要な処理が行われている。例えば、地球外知的生命体を探査する SETI(http://www.seti.org/)や、メルセンヌ素数を発見するGIMPS(http://www.mersenne.org/)などのプロジェクトが有名だ。
これらの処理はその膨大な計算量から、人間が実際に行うことが難しいものである。つまり、計算処理という分野では、明らかにコンピュータは人間を超えている。
その一方でコンピュータがまだまだ及ばない分野というものがある。例えば、音声や画像から意味のある情報を選別するパターン認識や、統計な どの大量のデータから知識を取り出すデータマイニングなどがある。このような分野では、判断基準が変化し、定式化が難しい。つまり、プログラムによる処理 が困難なのである。しかし、人間の脳は判断基準が変化しても、処理を行うことができる。そのため、人間の脳をモデルとしたニューラルネットワークの適用が 考えられているのである。
また、現在普及しているコンピュータは、ほとんどがノイマン型コンピュータである。ノイマン型コンピュータとは、記憶装置に格納したデータ を順番に読み込んで処理するコンピュータのことだ。このノイマン型コンピュータは物理的な限界、例えばメモリの読み込み速度などがあり、処理に限界がある といわれている。そこで非ノイマン型の1つであるニューラルネットワークが注目されているのである。