本連載では、最近よく耳にするUbuntu Serverを入門編と実践編に分けて、Ubuntuの基礎から、スケールアウト基盤構築ノウハウ、システム管理などの勘所を紹介していきます。入門編では、Ubuntu Serverが選定される背景、スケールアウト型サーバー基盤、ベンダー保守、バージョン確認、動作認定等の基礎的な内容を2日にわたってご紹介します。
なぜ今、Ubuntu Serverなのか?
近年、企業で利用されるサーバーシステムにおいて、Ubuntuという単語をよく耳にします。Ubuntuには、大きく分けてUbuntu ServerとUbuntu Desktopの2種類がありますが、サーバーシステムにおいては、Ubuntu Serverが利用されます。Ubuntu Serverの開発を手掛けるのはイギリスに本社を置くCanonical社です。
Ubuntu自体は世界中の開発者の間でデスクトップOSやワークステーションでの開発環境として昔から広く利用されていましたが、近年、パブリック・クラウド環境での利用が拡大するにつれ、Ubuntu Serverの採用が増えてきています。Ubuntuは、既に2013年時点でAmazon EC2環境での利用においてNo.1の成長率を誇るサーバーOSとなっており、IDCの調査によれば、WebサービスプラットフォームにおいてUbuntu Serverは年間43%の成長率です。
Ubuntuが注目されている理由の一つにOpenStackとの関係があります。OpenStackはクラウド基盤を実現するソフトウェアで、UbuntuはそのOpenStackの開発のリファレンスOSとなっています。そのため、OpenStackの開発者やユーザーの多くがUbuntu Serverを使用しており、クラウド環境を実現するプラットフォームとしてUbuntu Serverが無視できないものとなっています。また、OpenStackの開発に伴い、OpenStackのバージョンと、それに対応するUbuntuのバージョンが明確に定められているため、OpenStackの開発者とUbuntu Serverの開発チームとの意思疎通が取りやすく、OSSクラウド基盤とLinux OSの整合性が高い点も見逃せません。具体的には、OpenStackのEssex, Folsom, Grizzly, HavanaというバージョンはUbuntu 12.04 LTSに対応、さらにその先のIcehouseを含む4つのバージョンはUbuntu 14.04 LTSに対応する予定です。
OSとクラウド基盤の整合性の高さと対応するバージョンが定められていることは、導入前設計において非常に重要な点です。なぜならば、Linux OSとクラウド基盤の組み合わせを考慮する際、様々なバージョンのOSSが絡み合うOSSスタックの複雑さに起因する構築の様々な考慮点を低減させることができるためです。Canonical社がUbuntuだけでなくOpenStackの開発や管理を手掛けていることもOpenStackとUbuntuの親和性の高さを示す根拠の一つになっており、OpenStackクラウド環境を語る上で、Ubuntu Serverは欠かせないものになっています。