次世代ストレージ第二章の幕開け、ティントリがオールフラッシュ含むポートフォリオを発表
仮想化ストレージのティントリは24日、オールフラッシュ含む同社の新たなポートフォリオを発表した。先日Think ITでも第一報を伝えたVMWorldでの発表内容に関する国内向けのアナウンスとなる。本社からCSO(Chief Sales Officer)であるマイク・マクガイア氏が来日、ゲストスピーカーとしてネットワールドの森田社長も登壇した。
マクガイア氏はティントリの歴史を振り返りながら、同社の特徴として仮想化やクラウドに特化したストレージであることを強調。VM-Awareと呼ばれる仮想環境に特化したストレージとして、近年急速に進む仮想化の流れの中で他社にはない強みを見せているとアピールした。現在グローバルで40万VM(出荷台数2000台、導入企業800社)の実績があるが、これを来年早々には100万VMまで拡大していきたいと意気込みを語った。
今回の発表は製品のポートフォリオの刷新とファンディングにある。従来のハイブリット型製品であるT800シリーズに加えて、オールフラッシュのT5000シリーズがラインナップに追加された。また、125Mドルの追加投資を受けてキャピタル合計260Mドルとなったことも併せて発表された。
今後はソフトウェア面の改良も進め、世界規模でのマネージメントツールの提供、ハイパーバイザーの対応機能拡張、そしてにわかに注目を集めるコンテナのサポートをロードマップとして示してみせた。
なぜいまオールフラッシュを投入するのか
続いて日本支社で技術本部長を務める村山 雅彦氏と職務執行者社長の河野 通明氏が登壇し、技術的な視点も含めたオールフラッシュ製品の紹介があった。
前述のとおりこれまではハイブリットのみだったものにT5080、T5060(T5000シリーズ)というオールフラッシュ製品が加わる。ただし、搭載しているOSはハイブリットのものとほぼ同じで、既存ユーザーでもシームレスに使用できるという。オールフラッシュ版はSSD採用により筐体が小さくなり、集積率も最大で5000VMを誇る(上位機種の5080の場合)。
各モデルの適用範囲として、ハイブリッドは、VDI、サーバー仮想化、プライベートクラウドを、新しいオールフラッシュでは大規模なDWHや3D-CAD向けのVDIなどの利用シーンを想定しているという。村山氏の説明の中で、ハイブリッドで99%のヒット率が実現できているのになぜオールフラッシュを投入するのかという投げ掛けがあり、それに対して同氏は99%のヒット率を担保する範囲が違うと表現した。
そもそもTintriのストレージはフラッシュ活用を前提に設計されている。収容するVMごと、最適なSSDとHDDを割り当てており、データIOをまずフラッシュ側で受けて、アクセスが少ないコールドデータをHDD側に保存するアーキテクチャになっている。オールフラッシュ製品ではコールドデータをHDDに保存する作業がなくなる分高速化され、重複排除機能でデータ容量も効率化される。データアクセスに偏差を持つ、つまりデータ全体に対して一部にしか頻繁にアクセスしないような用途ではフラッシュに保持されたホットデータへのアクセスだけで済み、ハイブリッドで事足りることも多い。オールフラッシュが活きてくるのは、主にデータ活用の分野だ。データの偏差が少なくアクセス比率が高いBIツールなどが仮想化されてくると、ホットデータのみではなく全般的なIOが必要になってくるという。
マイクを引き継いだ代表の河野氏は改めて今回の発表を総括し、これまでは物理環境で実施してきたような仮想化が進んでいなかった分野のアプリケーションが仮想化に対応してきている、そういったニーズに対応していくためオールフラッシュの投入を決断した、と語る。また、従来型の仮想化されてきた業務やアプリケーションは引き続きハイブリッドが最適だとも話し、ハイブリッド対オールフラッシュは8対2くらいの比率を想定していると説明した。
最後にゲストスピーカーとしてネットワールド代表取締役社長の森田 晶一氏が登壇。ブロックストレージ、ファイルストレージにつぐ、第三のオブジェクトストレージが台頭しており、今後はデータやコンテンツの中身や、データが活用されるアプリケーションを知る必要があると語った。
仮想化分野で言えば、VMWare社自身もVM-aware StrageとしてのVSAN(VMware Virtual SAN)を投入しており、最新のvSphere 6.0ではVVol(Virtual Volumes)もアナウンスされている。仮想化インフラに適したストレージのニースが顕在化している中で、リーダーはTintriであると太鼓判を押す。
ここからは、発表会に先立って実施されたThink ITの単独インタビューの内容をお伝えする。
グローバルセールスのトップが語るTintriの今と今後
Tintriにおいてグローバルセールスのトップ(Chief Sales Officer)を務めるマイク・マクガイア氏。今回の単独インタビューに先立ってマイク氏はTintriに関するプレゼンを行った。その中から同社が8月、9月に行った2つの大きなアナウンス「125ミリオンの追加融資」と「新たな製品ポートフォリオ」について、主にグローバルセールスの局面から話を聞いた。
125ミリオンの追加投資を受ける
Tintriはこれまで135ミリオンの資本金があったが、先月125ミリオンの追加投資を受けて合計260ミリオンの資本金となった。今回の追加投資にあって、マイク氏は「米国のメジャーな投資会社であるシルバーレイク社が投資してくれたことが一番大きい」と話す。シルバーレイク社はテクノロジー関連企業に特化した投資会社として知られているが、これまでストレージ分野への投資は行っていなかった。Tintriが同社の投資指針とする「テクノロジー分野で成熟していく見込みのある企業がターゲット」として認められたことで今回の投資が実現したものと言えるだろう。
版図拡大に向けた拠点の設置
追加投資の使い道の1つとして重視しているのが拠点の設置だ。日本法人を2012年に設立し、現在では北米、日本、アジア、オーストラリア、イギリスに5拠点を設置している。マイク氏は「5つの拠点それぞれのグローバルマーケットに対するセールスへの投資を行っていく」と話すが、ここで大きなポイントとなるのは「日本とアジアを明確に分けている」点だ。Tintriには国ごとの証券や商習慣の違いなどを踏まえた上で的確な投資を行い、また金銭面以外の面も含めて支援を行っていく習慣があると言う。前出のティントリジャパン河野社長も「本社では、こういったこともしっかり考えてくれている。これは他社には見られない非常にやりやすい側面だ」と胸を張る。
日本のビジネス規模はTintri全体の10%
Tintriのビジネス基盤となるのは「サーバー仮想化」「デスクトップ仮想化」「クラウド」の3つの分野だ。日本市場におけるTintriのビジネス規模として、マイク氏は「各分野でおよそ10%を占めている」と言う。また、Tintriは仮想化環境に特化した製品構成を取っていることから、「仮想化を導入していない産業はなく、その意味ではすべての業界で採用いただいているという状況がすでにでき始めている。業界によって早い遅いというのはあるが、立ち入っていない産業はない」(マイク氏)と主張。クラウドの分野で古くからの顧客であるNTTコムウェア社では1社で16台ものストレージを使用しているほか、サーバー仮想化の分野ではトヨタやソニー、デスクトップ仮想化の分野ではNTTや京都大学といった顧客で利用が進んでいるという。
オールフラッシュ投入の背景
昨今のストレージベンダは汎用ストレージとしてのオールフラッシュを出しているが、過去には「オールフラッシュが必要なアプリケーション」は仮想化されていなかった。しかし、昨年あたりからあらゆるアプリケーションが仮想化される状況が見え始めたことから、Tintriもオールフラッシュが必ず必要になると判断し、1年半ほど前から着々と準備を進めてきたという。「オールフラッシュが必要なアプリケーションは全件検索といった動きをするが、このような動きはTintriのハイブリッドでは割とウイークポイントだった」(河野社長)と振り返る。また、ハイブリッドでも高度なヒットレートをマークするアーキテクチャを持つTintriにとってハイブリッドをオールフラッシュとして実装することはそれほど難しくなく、意外にできてしまう話として製品化を実現できたとも語る。「これから仮想化されるようなアプリケーションであってもVM-Awareな環境をお客様に提供できるようにしたい、だからハイブリッドだけじゃなくオールフラッシュも出すというのがTintriの考え方だ」(河野社長)。
ハイブリッドクラウド環境を見越した製品戦略へ
サーバー仮想化の分野では、これまで「物理サーバーからVMへ移行する」フェーズにあったが、これからは「VMをどのように運用していくか」に顧客の目が向いてきているとしたうえで、マイク氏は「VMをもっと載せるかという問題よりも、ハイブリッドクラウドを利用してオンプレミスとオフプレミスに分けて使用するというところへ移ってきている」と話す。RedHatやCitrix、MS、VMWareも同様に考えているとして、Tintriもハイブリッドクラウドに適用できる製品群を拡張していこうと考えているようだ。
そのための方法として、マイク氏はまず「現在10万VMとしている一括管理を100万VMまで管理できるようにしたい」と話す。また、「実際にVMがどのような動きをしているかを簡単に確認・検査できるようなソフトウェアを追加していこうと考えている」とし、さらにこのソフトウェアの中でセルフサービスとロードバランシング等の自動化も行っていこうと考えていると言う。ロードバランシングでは、100万VM上の負荷分散環境を顧客自身ではなく、Tintriが自動的に判断して実行するものを提供したいと考えているとした。
また、今後もこれまでと同様にVMのスケールアウトや診断・調査などをより一層強化していくほか、さらに多くのハイパーバイザーを積極的にサポートしていくという姿勢を示した。また、最近注目の技術であるコンテナについても「いち早くサポートをさせていただこうと考えている」(マイク氏)と話す。コンテナについては現在デモシステムでは動いているものの、製品化にはもう少し時間がかかるようだ。
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