VMware vSphere 6の新機能と用途
2015年 仮想化プラットフォームの新事情
VMware vSphere 6.0、Microsoft Hyper-V、RHEV 3.5の仮想化プラットフォームについて、新機能と機能拡張を中心にその最新動向を探る。 この特集のまとめPDFを無料でダウンロードできるようになりました!vSphere 6の新機能について
vSphereの機能の中でvMotionは象徴的な仮想化技術の1つです。ESXiホスト間で仮想マシンがどのようにvMotionで移動するのか知りたくて、多くのエンジニアの方が興味を持たれたのではないでしょうか。実は、vMotionは10年以上前に実装されており、非常に安定した技術となっています。2008年には、Storage vMotionなどのいくつかの機能が追加されています。
すでに、VMwareの仮想化プラットフォームが登場して10年以上が経ちますが、vSphere 6.0ではまだまだ新たな機能が追加されています。ここでは、vMotionなどを中心にvSphere 6.0の新機能とその用途をご説明します。
最大構成の拡張
vSphere 6の最大構成については、第1回でも説明されていますので、ここでは簡単な説明にとどめますが、やはり最初に押さえておくべきは、拡張性です。VCPの認定試験の問題にも出てくる項目です。これからVCPを受験する方は、改めてチェックしておきましょう。vSphere 5.xからはホスト当たりの仮想マシン最大数や、仮想マシン当たりのvCPUなどは大きく変わっています。
クラスタおよびホストの拡張
- クラスタ当たり最大64台のホスト (vSphere 5.xでは32台)
- クラスタ当たり最大8000台の仮想マシンをサポート(vSphere 5.xでは4000)
- ホスト当たり480 CPUをサポート(vSphere 5.xでは最大320 CPU)
- ホスト当たり最大6 TB(メモリをサポート (vSphere 5.x では最大4 TB of RAM) (12TBまでサポート可能だが、制限事項あり)
- ホスト当たり1024 台の仮想マシンをサポート(vSphere 5.x では最大512 VMs).
クラスタ当たりの最大ホスト数は、vSphere 5.xの32台であったのが、2倍の64台となっており、より大規模な構成のクラスタを構築することが可能となっています。クラスタを64台までのホストを接続できますので、クラスタを巨大な1つのコンピュータリソースとしてとらえることができると、DRS(Distributed Resource Scheduler)を利用して、より効率的にリソースを利用できるようになります。
仮想マシンの拡張
- 仮想マシンハードウェアをバージョンアップ(vmx-11)
- 最大128vCPUをサポート
- 最大4TBのメモリをサポート
- VDDM 1.1 GDI対応のグラフィックアクセラレーションをサポート
仮想マシンに割り当てるCPUやメモリが大幅に増えましたので、たとえば、Hadoopなどの多くのリソースが必要な処理にも対応できるようになりました。VDDM 1.1 GDI対応のグラフィックアクセラレーションもサポートされましたのでVDI 環境で3D CADなどをより快適に利用できるようにもなります。
FT関連
- 仮想マシン当たり最大4vCPUをサポート
- 仮想マシン当たり最大64GBをサポート
FTについては、後述します。
vSphere 6.0の最大構成をより詳しく知りたい場合は以下の資料をご覧ください。
https://www.vmware.com/pdf/vsphere6/r60/vsphere-60-configuration-maximums.pdf
Long Distance vMotion
vSphere 5.xまでは、vMotionは基本的にローカル環境内(L2ネットワーク)だけの機能でしたが、vSphre 6.0からは、Long Distance vMotionと呼ばれる機能がサポートされました。Long Distance vMotionでは、首都圏から近畿圏などのデータセンター間だけではなく、条件さえ満たせば、日本国内と国外のデータセンター間などでも利用することが可能になります。以前もLong Distance vMotionの機能は一部実装されていましたが、遅延条件が大幅に緩和されています。
Long Distance vMotionを利用するための条件
- データセンター間の遅延が100ms RTT(Round Trip Time)以下であること(以前は10ms RTT以下)
- ネットワーク帯域が250Mbps以上あること
ほかにも諸条件はありますが、ネットワーク経路については以上の条件を満たせば基本的にLong Distance vMotionを利用することが可能です。帯域の確保はなんとかなるとしても、遅延が10ms以下という以前の条件は厳しいものでしたが、遅延が100msでもvMotionが利用可能となれば、使い勝手は大きく変わるのではないでしょうか。
Long Distance vMotionの用途
Long Distance vMotionはどのような利用用途があるでしょうか。データセンター間でも仮想マシンの移動が可能となりますので、さまざまな用途が考えられますが、プライベートクラウドとパブリッククラウドを結び付けるというのがキーワードの1つになるのではないでしょうか。最近ではベアメタル(物理サーバー)型のパブリッククラウドなどが登場してきています。自社データセンターのプライベートクラウドと、外部のベアメタル型のパブリッククラウドにvSphere 6を導入することで、ハイブリッドクラウドの構築が可能になります。この際、データセンター間の移動にLong Distance vMotionを利用できます。セキュリティへの考慮は必要ですが、公開されているサービスをサービス停止することなく、外部のサービスプロバイダーが提供しているクラウド環境に移行して、セキュリティ上重要なデータを管理するサーバーのみ、自社データセンターに置くといった使い方が可能です。
vSphere 6.0 Fault Tolerance
Fault Tolerance(以下FT)は、仮想マシン当たり4vCPUと64GB RAMがサポートされるようになり、大幅に機能強化されました。ESXiホスト間でまったく同じ仮想マシンが2台動作しており、一方のESXiホストに障害があっても、仮想マシンが停止することなく動作し続けるというのがFTの機能です。よく似た機能にVMHA(High Availability)がありますが、VMHAの場合は、障害のあったESXiホスト上の仮想マシンはいったん停止して、正常なESXiホストで再起動することになります。FTの場合は、別々のESXiホスト上で動作する2台の仮想マシンが、まるで1台の仮想マシンのように動作します。vSphere 5までは1vCPUといった制限があり、パフォーマンスが求められるサービス用途では利用できませんでした。しかし、vSphere 6からは4vCPUとなりましたのでパフォーマンスがある程度必要で、できればサービス停止したくない仮想マシンにも利用できるようになります。
ただし、FTでは当然のことながら仮想マシン間でCPUやメモリの同期をとる必要があるため、仮想マシン同士はネットワークを通じて同期されます。今までは、1Gbit/secのネットワーク帯域でも動作しましたが、vSphere 6のFTでは、10Gbit/secでの利用が推奨されています。
vSphere 6.0 Fault Toleranceの用途
FTの用途としては、複数のCPUを利用しハイパフォーマンスかつ無停止が必要とされるサービスが該当することになります。実際に、どのようなサービスがあるでしょうか。正直にいうと、vSphere 6のFTでなければできないことは思いつきませんでした。これまでも、ハイパフォーマンスかつ無停止で運用するシステムは、仮想マシン同士でMSFTやクラスタソフトウェアを利用して、複雑なクラスタ構成にすれば、vSphere 6のFTを利用せずとも、ほとんど構築が可能だからです。しかし逆にいえば、複雑なクラスタ構成をとらずに、FTの機能を利用すれば管理を簡素化するということもできるということです。ソフトウェア的なクラスタ構成をとった場合は、クラスタ間のハートビートやら共有ディスク、サービスの監視など複雑な設計と設定が必要となりますが、FTではvSphere上の設定だけで冗長性を確保した仕組みを利用することができます。
ストレージ関連
ストレージ関連の新機能もいくつかありますので簡単にご紹介したいと思います。vSphere 6のストレージ機能については、別の連載で具体的なシステム構成も含め、詳細に解説される予定です。
VSAN 6.0
VSAN(Virtual SAN)の機能は、ESXiホストのローカルディスクをホスト間で共有できるSANストレージとして利用する機能です。クラスタ構成のESXiホスト間でディスクを共有することができ、冗長性、パフォーマンス、拡張性などを兼ね備えています。要点をまとめると、以下のようになります。
- 以前のバージョンと比べて2倍のパフォーマンスアップ
- 最大64ホストで構成可能
- ホスト1台当たり最大200仮想マシンを構成可能
- 仮想ディスクのサイズが62TBまで
- JBODをサポート
また、SSDとJBOD(SATAまたはSAS)での構成に加え、すべてSSDで構成されるオールフラッシュの構成もとることができるようになりました。これらの機能が強化されたことで、エンタープライズ環境でも本格的に利用することができるようになったのではないでしょうか。
vSphere Virtual volumes
vSphere Virtual Volume(以下VVols)は、vSphere 6で実装されたまったく新しい機能です。今までストレージを利用するにはFC、iSCSI、NFSなどのプロトコルを利用する必要がありました。しかし、VVolsでは、APIを通じて直接ストレージをコントロールすることによって、仮想マシン用のディスク領域を確保することが可能になります。ストレージ領域は、ストレージコンテナ(Storage containers)と呼ばれ、VMDKなどはオブジェクトとして管理され、APIでコントロールされます。スナップショットなどの機能もAPIを通じて提供されており、ほとんどの処理は、ストレージにオフロードされることになります。
これまで、ストレージのパフォーマンスが求められる仮想マシンの場合は、ローデバイスマッピングという方法を使い、ストレージに直接アクセスするなどの方法をとっていましたが、これからは、VVolsで代用することも可能です。VVols対応のストレージは、2015年の中頃までに、さまざまなストレージベンダーから出荷される予定です。
【参考文献】
vSphere 6.0 New Features – What is VMware Virtual Volumes (VVols)? | VMware Arena
http://www.vmwarearena.com/2015/02/vsphere-6-0-what-is-vmware-virtual-volumes-vvols.html
vSphere 6 Features - New Config Maximums, Long Distance vMotion and FT for 4vCPUs - ESX Virtualization
http://www.vladan.fr/vsphere-6-features-long-distance-vmotion
vSphere アップグレード センターで vSphere を比較 | VMware 日本
https://www.vmware.com/jp/products/vsphere/upgrade-center/compare
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