仮想化環境での運用監視とは?
仮想化環境での監視対象要素
物理環境から仮想化環境に移行すると、新たな監視対象要素として「ハイパーバイザー」という要素が加わります。そのため、VMwareであれば「VMware vCenter Server」、Microsoft Hyper-Vであれば「System Center Virtual Machine Manager」という、仮想化製品ごとに提供される管理ソフトウエアを導入する必要があります。
その一方で、ハードウエア監視やストレージ装置監視のためには、従来ある専用の管理ソフトウエア(IBMの場合はIBM Systems Directorなど)が必要になります。つまり、仮想化環境における監視では、複数の管理ソフトウエアを使い分ける方法を選択せざるを得ない状況にあります。
そこで、複数の管理ソフトウエアを常に利用するのではなく、一つの管理インターフェースで効率的に仮想化環境を監視するソリューションとして、IBMはIBM Systems DirectorのVirtualization Managerによる監視方法を提供しています。
今回は、物理環境と比較して仮想化環境での運用監視が具体的にどのような違いがあるのか、またIBMが提供するVirtualization Managerのメリットについて、解説していきます。最後に、まとめとして下記の疑問について回答します。
・ハイパーバイザーが増えたが、何か監視する必要があるのか。また、新しい管理ソフトウエアが必要になるのか?
・物理環境で行っていたリソース監視やプロセス監視は同じ運用で大丈夫か?
・あのOSは今どのサーバー上で稼働しているだろうか?
・物理環境と同じ管理インターフェースで仮想化環境を管理することができないか?
まず、物理環境と仮想化環境との運用監視方法の違いについて解説していきます。仮想化環境での監視対象要素として、次の3つが挙げられます。
・ハードウエア
・ハイパーバイザー
・ゲストOS/アプリケーション
このうち「ハードウエア」および「ゲストOS/アプリケーション」に関しては、物理環境と同様の監視を行うことが可能ですが、ハイパーバイザーに関しては、仮想化製品専用の管理ソフトウエアを導入した運用監視方法が必要となります。それぞれの項目に関して具体的な監視方法を見ていきましょう。
ハードウエアの監視方法
ハードウエアの障害を監視する方法は、仮想化環境であっても、物理環境と同様の仕組み(専用ソフトウエアもしくは専用ハードウエアによる監視)のを利用が可能です。IBMが提供するブレードサーバーであるIBM BladeCenterを利用する場合の監視方法は大きく分けて、アドバンスドマネージメントモジュールの利用とIBM Systems Directorの利用の2つに分けられます。
まず、アドバンスドマネージメントモジュール「Advanced Management Module(以降AMM)」の利用について解説していきましょう。図1をご参照ください。
AMMは、IBM BladeCenterに標準で搭載されるシステム管理専用のモジュールです。専用のWebインターフェースを持ち、IPアドレスを割り当て、Webインターフェース経由でアクセスしサーバーを含むハードウエアの監視を行います。
AMMでは、各ブレードサーバーに搭載されているシステム管理プロセッサーと連携し、ブレードサーバーのハードウエア障害や、冷却ファンや電源機構等の共通ハードウエア障害を検知することができます。例えば、IBM BladeCenter HS22の場合、次の障害検知項目が監視対象になります。
・ブレードサーバー:CPU、メモリー、温度、電圧、PFA(CPU、メモリー、VRM)
・共通ハードウエア:冷却ファン、温度、電圧、電源機構、PFA(冷却ファン、電源機構)
※PFA(Predictive Failure Analysis)障害予知機能とは、各コンポーネントの状況を監視し、24時間から48時間以内に障害が発生する可能性が高いことを事前に通知。
※VRM(Voltage Regulator Module)とは、主にCPUに対して一定の電圧を維持するモジュール。
障害発生時には、AMMのイベントログに障害内容が記録され、どのコンポーネントに障害が発生したかブラウザを通じて確認することができます。また、管理者に障害が発生したことをメールで通知するアクションや、SNMPマネージャーに対してSNMPトラップを送信することも選択できます。
次のページでは、「IBM Systems Director」の利用について解説していきます。