2016年がオープンソースにとって素晴らしい年になる3つの理由
Netscapeが1998年にウェブブラウザのソースを一般公開した時、これはMicrosoftに苦戦を強いられる同社の起死回生の賭けのように思われた。
今ではコマーシャルな技術企業からの新しいプラットフォームやアプリ、拡張機能およびそのソースコードの公開がほとんど毎週のようにあるが、当時のMicrosoftのCEO スティーブバルマーは2001年にLinuxをガンのようなものだと評した。
昨年はAppleからSwiftによるコードがリリースされたほか、GoogleのマシンラーニングフレームワークのTensorFlor、MicrosoftのJavaScriptエンジン、そしてFacebookによるReact NativeやRelayを含む多くのオープンプロジェクトが出てきた。
FacebookやAirbnb、Squareの様な商用ソフトに依存しないビジネスを行っている企業の登場は、オープンソースを面白いものにしている。そのやり方はLinuxのような古典的オープンソースの原則を踏襲しているものかもれないが、彼らがオープンソースに拠る理由はただの利他的な考え方や大義などといった単純なものではない。
オープンソースのものをリリースすることは彼らのイノベーターとしてのイメージを高め、エンジニアを集めるためにも役立つ。また、スタートアップ企業はオープンソースによる開発を受け入れていることから、デファクトスタンダードの形成にも繋がり、場合によっては業界全体の開発が推進されることになる。
次に述べるのは2016年、そしてその先のオープンソースを推進している、大まかな傾向だ。
|オープンソースによって新しい業界が生まれる
2014年に電気自動車メーカーのTesla Motorsが自社の特許ポートフォリオを、知的財産がらみの裁判を起こさないことを条件にオープンにした。GMはTeslaの申し出を断ったが、これは自動車業界全体で多くの電気自動車のイノベーションを呼び起こすことになり、より多くの電気自動車及びその為のインフラが出揃うことで、人々はTeslaを含む自動車会社から車を購入しようと考えるようになるだろう。
|オープンソースによってマシンはより賢くなる
同じように去年の11月、Googleがオープンソースのマシンラーニングプラットフォーム、TensorFlowを発表した。TensorFlowはもともとGoogle Brainチームでマシンラーニングとディープニューラルネットワークの研究を行っていたチームによって開発されていたものだ。コアの部分はC++、フロントエンドはPythonで書かれている。
オープンソースに熱心な人々を巻き込むことで、人工知能の実用化はより近くなるとGoogleは考えている。周りの人たちがこれらのツールをGoやJava、あるいはJavaScriptなどの言語でも扱えるようにすれば、プログラマはより多くの人工知能を使ったアプリをつくる方法を得ることになる。
同じ分野でTeslaのCEO イーロン・マスクは、マシンラーニングの専門家たちと、数十億ドルを掛けた人工知能研究の為の非営利企業、Open AIの設立を発表した。
「非営利団体ということもあり、我々の目的は株主というよりあらゆる人たちにとって価値あるものをつくり上げることだ。研究者達はその成果を論文やブログの投稿、あるいはコードを通して発表するように強く後押しされることになる。そして、もし特許が出来たとしてそれが世界中でシェアされれば、その他多くの団体とも自由にコラボレーションすることができ、企業とも研究開発を行い新しい技術を世に出していくことができると考えている。」
マシンラーニングは難しい問題であるが、この分野での達成がシェアされることになれば、その進歩はすこし楽になるかも知れない。
|オープンソースで開発者は幸せになれる
他人のためにオープンソースプロジェクトのバグを潰したり、機能を追加したりするプログラマ達は、オープンソースの代表的なイメージである。しかし現実は少々複雑だ。
プログラマたちにとってGitHubは履歴書としても通用するものとなった。オープンソースプロジェクトに貢献することで、プログラマはその片鱗をみせつけることができ、面接でバツの思い悪いをすることなく雇用担当に印象付けることができる。
GitHubの共同設立者であるトム・プレストンは以下のように言っている。
「もし誰かを雇用する場合、技術を確かめる上で最も良いインタビューとは、わざわざ確かめる必要もないインタビューをすることである。候補者たちの腕前は既に参加しているオープンソースプロジェクトで分かる。それで技術的な優秀さが確認できたのであれば、あとは会社で上手くやっていけるかどうかを見た上で、自分の会社に来るよう説得するだけのことだ。」
他にも、仕事上、あるいはソーシャルな意味での利点もある。オープンソースへの貢献は、すなわちその人が何に興味を持っているかということの現れでもある。プロジェクトの協力者を探したいのであれば、自分と同じコードベースで開発をしている誰かとチャットすればいい。メッセージキューイングソフトであるRabbitMQに携わっているアルベロ・ヴィデラの場合は、結果として本を出版することになり、カンファレンスでもスピーチに招かれた。
オープンソースは文句なしに正しいものではない。プロジェクトに携わるプログラマや企業にとってマイナスの面もある。この点については今後触れていくことにしよう。だがオープンソースがソフトウェアイノベーションの中心を占めるに至った大きな推進力は、今年も、そして今後も変わることなく続くことだろう。
ReadWriteJapan編集部
[原文]
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