データセンター視点で考える全体最適化
電力の変換ロス
よく知られているようにデータセンターでは3段階の変換ステップを経てサーバーに給電しており、各ステップの変換効率は80~90%程度であると見積もられています。実際に受電した電力の内およそ(80%~90%)^3=(51%~73%)しかサーバーやストレージは使用できません。
- 高電圧交流商用電源→降圧→直流:UPSに蓄えるため
- 「1.」で変換した直流→交流→100VACあるいは200VACへ降圧:サーバールーム内の各機器に給電するため
- 交流→直流→降圧:サーバー機器内部への給電、各パーツにあわせた電圧に降圧
さらに変換設備の冗長性や安全率を考慮した許容量設計により上限が押さえ込まれ、実質的な変換効率はさらに落ちているかもしれません。ようやくサーバーに供給された電力も、その大部分はジュール熱として捨てられてしまいます。
図2:給電の流れと電力変換効率(クリックで拡大) |
単純にはこのAC⇔DC変換、および降圧の回数を減らすことにより、電力効率の改善が期待できます。また直流給電に対応しているサーバーを使用することで、「2.」「3.」に相当するステップを省くことができ、電力効率が80~90%になることが期待されるため、現在ではデータセンターの給電設備からサーバー機器への直流給電が注目を集めています。
直流給電設備を考える中でいくつかの副次的なアプローチを考えることができます。
一つは高電圧直流を採用することです。サーバー機器に到達するまでの間の電源ケーブルも電気的には抵抗であり、電流が流れることによってジュール熱が発生し電力損失(電圧降下)を招きます。この電力損失の大きさは、電流の二乗と電源ケーブルの抵抗値の積で表され、また電源ケーブルの抵抗値はその長さに比例し、断面積に反比例します。同じ電力量を供給する場合には電圧が大きいほど電流が小さくてすみます。
これは同じ電源ケーブル(=抵抗の大きさが同じ)の場合には、電圧が高いほど電力損失も少なくなることを意味します。翻って電力損失量をこれまでと同程度に抑えたまま、電源ケーブルを細くすることができますので、電源ケーブルの取り回しなど設備実装面での効果が期待できます。
もう一つはUPS(蓄電設備)の取り扱いです。現在では直流から交流に戻すステップがあるため、データセンターで「共通の」蓄電設備を持ち、それがある程度の空間を占めていました。直流給電を実現できれば、UPSをサーバールーム側にサーバールーム単位で押し込めるようになります。あるいはもう少し小さく、ラック単位、サーバー単位に押し込めることができるかもしれません。これにより、「共通の」蓄電設備として占有されていた空間をサーバールームとして利用できるようになり、かつ蓄電設備をモジュール化できるようになり、システム規模に応じた蓄電設備投資を考えることができるようになるのではないでしょうか。
しかしながら、既存の機器やデータセンター設備は交流配電を前提に作られており、直流電源の導入は、ファシリティエンジニアの教育をどうするのか、導入によってどれほどの費用対効果があるのかなどの検討が始まったばかりの段階と言えそうです。特に高電圧直流については、標準電圧や、コネクタ形状、電源ケーブルの太さに対する標準化、規格、デファクトスタンダードあるいは経験値といったものがなく、実証実験がようやく行われつつある現状です。
Rackableの直流対応
Rackableシリーズの製品はいち早く、直流受電に対応したサーバー、ラックを提供してきました。Foundation Rackは直流給電に対応した設計になっており、-48VDCを直接受けることができます。直流給電による電力効率の改善はPUEの改善につながっています。