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T-Kernelを使った組み込み開発の実際

2010年8月27日(金)
松為 彰

T-Kernelベースの開発に利用できるTeamacaron

T-Kernelが動作する開発評価用ボードには、いろいろな製品があります。代表的なものの1つが、厚さ16mmで50mm角という超小型の組み込み制御用コンピュータにT-Kernelを搭載した「Teamacaron(ティーマカロン)」です。色や大きさが菓子のマカロンを連想させることから「マカロン型コンピュータ」という愛称で呼んでいます。

TeamacaronのCPUコアは、英ARMのARM1176です。パソコン用のLCDモニターに接続可能なアナログRGB出力、LAN、USB、microSDカード、シリアルなどの入出力機能を持ちます。USBには、RFIDリーダーやUSBカメラを接続することも可能です。RFIDタグや非接触ICカードを使ったユビキタス応用システムの試作や開発、カメラに画像認識ソフトを組み合わせたAR(Augmented Reality、強化現実)システムの試作や開発など、アイデア次第で多様な用途に活用できます。

Teamacaronは、組み込み機器の試作やプロトタイプ開発に加えて、そのまま最終製品に組み込むことも可能です。また、開発する組み込み機器に合わせて、Teamacaronのハードウエアやソフトウエアをカスタマイズすることもできます。

図2: 手のひらに乗せたTeamacaron(クリックで拡大)

テーブル1: Teamacaronのソフトウエア

ターゲット用
PMC T-Monitor、PMC T-Kernel、PMC T-Kernel Extension、
各種デバイスドライバ、TCP/IP、PMC T-Shell(GUIミドルウエア)、
マイクロスクリプト(ビジュアル言語)、
基本文章編集(ワープロソフト)、基本図形編集(図形編集ソフト)、
基本ブラウザ(HTMLのブラウザ)、多漢字フォント、
各種ユーティリティなど
開発ホスト用
Eclipse for PMC T-Kernel(GUI統合開発環境)、Cygwin、
GNU C/C++コンパイラ、標準Cライブラリ、T-Kernel関連ライブラリ、
サンプルソースなど

T-Kernel/x86評価キットと、そのほかのT-Kernel応用製品

x86を搭載したハイエンドな組み込み制御用コンピュータ上では、「T-Kernel/x86評価キット」を利用できます。この製品は、x86で動作するT-Kernelに、ミドルウエア、デバイス・ドライバ、開発環境などを含めたソフトウエア・パッケージです。

T-Kernel/x86評価キットが主として試作開発や評価を目的とするのに対して、実際の組み込み製品への搭載を想定してライセンスやソース・プログラム付きのパッケージとした「T-Kernel/x86製品開発パッケージ」もあります。

近年では、組み込み機器の高機能化やマルチメディア化にともない、パソコンやサーバー向けのx86互換CPUが組み込み向けに利用される例も増えました。米Intelも、組み込み向けに電力消費を抑えたAtomを発売するなど、x86を用いた組み込み機器の需要が急激に増えています。こうした用途を想定したリアルタイムOSが「T-Kernel/x86評価キット」と「T-Kernel/x86製品開発パッケージ」です。x86を使ったFA機器やパネル・コンピュータなどに広く採用されています。

図3: T-Kernel/x86評価キットのソフトウエア構成(クリックで拡大)

このほかにも、SH系、MIPS系、ARM系、Powerアーキテクチャなど各種のCPUを搭載した「T-Engine開発キット」、タッチ・パネル付きLCDボードを搭載した「Teatouch」、ハンディ端末にRFIDリーダーを内蔵した「業務用UC」など、いろいろなT-Kernel応用製品があります。

業務用UCは、火災報知器など住宅部品のトレーサビリティ・システム、公園に設置された遊具の維持管理システム、標識や境界杭などの公物管理システム、RFIDタグを組み込んだ測量用基準点(「インテリジェント基準点」と呼びます)の維持管理システムなどにおいて、タグの読み取り用端末として利用されています。

図4: 業務用UCの外観

T-Kernelを搭載したボードや応用製品には、上記のようにいろいろなものがあります。これらの機器の外見やハードウエア構成は異なりますが、T-Kernelを中心としたソフトウエア構成はいずれも同じであり、Eclipse for PMC T-Kernelやgccコンパイラなどを含む開発ツール類も、ほぼ共通です。このため、上記の製品で動作するアプリケーションなどのソース・プログラムには互換性があり、CPUや機種が違っても、再コンパイルだけで容易に別の機種に移行できます。この点は、T-Kernelによる標準化の大きなメリットの1つです。

また、T-Kernel/x86評価キットでは、仮想環境によるクロス開発によって、実機がなくてもパソコン上でT-Kernel用アプリケーションの実行やデバッグが可能です。こうして開発した組み込み用のプログラムは、再コンパイルだけでほかの機種でも使えます。このため、仮想環境によるクロス開発の方法は、x86以外のCPUを使ったT-Kernel応用製品のソフトウエアを開発する際にも有用です。

パーソナルメディア株式会社 代表取締役社長

1985年に入社以来、TRONやT-Kernelに関連した各種の製品の企画と開発に携わってきた。組込み向けのほか、パソコン用のTRONである「超漢字V」、多漢字検索ソフト「超漢字検索」、TRONを応用したデータ消去ソフト「ディスクシュレッダー4」などを商品化している。2010年4月よりT-Engineフォーラム T-Kernel 2.0 WGの座長。

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