「システム運用は必要経費」という認識は大きな間違い!?
「運用コスト」こそが成功のための重要なファクター
このように、「運用コスト」は、システム開発や導入をめぐる投資活動の成功、または失敗を決定する重要なファクターの1つであり、決して「開発が終わったあとの後始末、消化試合」的な位置づけのものではない。
ところで、「開発にきちんと必要なコストをかけないと、運用コストが跳ね上がってしまうため、無闇に開発コストを圧縮しないほうがいい」という話を聞く。現にこのような話は、SIerが顧客からの値下げ圧力を跳ね返すための理屈に使っていたりもする。しかし、ここで言う「保守運用コストが大きい/小さい」とは、実際には、「開発プロジェクトのアウトプットとしてのシステムのクオリティが高い/低い」と言い換えることができる。
例えば、開発フェーズでそれなりにコストをかけて、それなりのスキルのエンジニア(プログラマー)を使って開発したり、優秀なプロジェクトマネージャー(プロマネ)をプロジェクトに投入することで、それなりに気を利かせたしっかりしたものができたりする。しかし、開発コストを極限まで圧縮し、集められた開発プロジェクト要員のスキルが不十分だったりすると、「プログラムの出来が悪くてシステムが使いにくい」「使うことそのものに手間がかかる」ようになる。さらには不具合が頻繁に発生し、実稼働に入ってからも修正や再投入等の手間が頻発し、結果として運用コストが跳ね上がる、といったことは当然ありうるだろう。
だが、これは「開発にコストをかけると、運用保守コストが小さくなり、投資の回収が早まる」ということではなく、「システムのクオリティそのものが低いために、実運用フェーズになっても発生する開発フェーズの後始末(後処理)のコスト」が大きいのであって、「システムを安定稼働させるために必要なランニングコスト」とは別の部分だ。ここは、明確に区別していただきたい。
この「システムを安定稼働させるために必要なランニングコスト」については、無闇に削減してはいけないが、コストをかければいいというものでもない。
本連載では、「賢くコストを抑えながらシステムを安定稼働させるための運用とは?」というテーマで、我々アールワークスが、これまでシステム運用監視サービスの中で培ってきた数々の経験を、お伝えできればと思う。