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Zabbixの未来を探る第2回Zabbixカンファレンスレポート

2014年12月4日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

オープンソースのシステム運用監視ツール、Zabbixのプライベートカンファレンス、「Zabbix Conference Japan 2014」が2014年11月21日に東京で開かれた。Zabbixはシステム監視ツールとして広く使われているソフトウェアで、開発しているのはラトビアに開発拠点があるZabbix SIA。今回は昨年に続き2回目の国内での開催となり、Zabbixの最新情報やユーザー事例の発表、他の監視ツールの比較などバラエティに富んだ内容であった。今回は、ZabbixのCEOによるセッションとユーザー事例セッションなどを中心にレポートする。

ZabbixのCEO、Alexei Vladishev氏とZabbix Japanの代表、寺島広大氏

ZabbixのCEO、Alexei Vladishev氏とZabbix Japanの代表、寺島広大氏

カンファレンスに関する公式ページ

Zabbixの次バージョンの改善点

まずはZabbixの開発を行っているラトビアのZabbix SIAのCEOで創設者のAlexei Vladishev氏が「5 Things to improve in Zabbix」と題されたオープニングスピーチでZabbix内部の開発言語やシステムの構成などについて紹介したうえで、今後、開発を進めていく方向性について解説した。

それによるとZabbixの次期バージョン、3.0において以下の改善点を計画しているという。

  • フロントエンドであるWeb UIの改善(「Click until Die」と呼ばれるほどクリック数が多いインターフェースをシンプルにする、高速化、ドロップダウンメニューの削減)
  • APIの改良(高速化、キャッシュの利用、APIコールをまとめたバルクオペレーションの採用、APIをフロントエンドからサーバーサイドに移動)
  • レポート機能の機能追加(分析レポート、アドホックなレポート作成機能の追加、レポートパラメータ保存機能、ビジュアライゼーション機能の強化、イベント相関図の追加)
  • スケーラビリティの強化(構成データと履歴データの分散化、HA構成の強化)
  • 暗号化と認証を実装(サーバーとプロキシ—間通信の暗号化など)

Zabbixの開発当初の話からC言語の採用、PHPによるフロントエンドの開発、そしてさまざまな改善点の解説もいわゆるアメリカのIT企業にありがちな「俺たちはスゴイ!ほら、もっとスゴくなるからよく聞いておけ!」的なトーンは一切無く、ユーザーからのフィードバックをちゃんと咀嚼して、直すべきところは直す、不具合は素直に認めた上で最良の選択を行うという態度が非常に好感の持てるセッションであった。

なお、イベントの最終セッションで日本のZabbix Japanの代表、寺島広大氏がZabbixのリリースについて解説し、上記改善ポイントが確実に進捗していることを説明した。Zabbixの開発はいわゆるオープンソースソフトウェアとは異なり、ラトビアのZabbixのエンジニアが100%開発を行うというものだ。つまり一般の商用ソフトの開発形態と変わらず営利企業が開発を独占的に行っている。違いは開発されたコードがオープンソースコミュニティに公開されること、欲しい機能があれば資金を支払って開発を依頼することが出来ること、ただしその特別な機能も全てコミュニティに公開されることなどだ。また各バージョンのリリースについても長期間のサポートを保障するLTSリリースと機能追加ごとに短期間でリリースされるポイントリリースがあり、使う側にとってどのリリースを使うべきか、サポートはどうなるのか、エンドユーザーが判断がし易いのが特徴だ。なお、現行の最新バージョン、2.4から3.0のロードマップも紹介され、次期バージョンが2015年5月に予定されていることを説明した。

Zabbixのリリーススケジュール

Zabbixのリリーススケジュール

続いてユーザー事例としてニフティ株式会社の日下部雄也氏が登壇。ニフティクラウドを支える仮想化基盤上の仮想マシン5000台をZabbixで監視している事例を解説した。他にもVPNゲートウェイとルーターの監視事例を紹介するなど運用の場面でZabbixが活用されていることを紹介した。

ニフティでの事例

ニフティでの事例

次にサイバーエージェントの長谷川誠氏が登壇し、サイバーエージェント内で開発されたミドルウェアやデータベース監視のためにZabbixサーバにデータを送るプラグイン、Blackbirdが紹介された。Zabbixは監視対象からデータを取得する際にネットワークコネクションが発生するが、監視時間を短くしたり、パラメータを多く設定した際に多くのコネクションが発生し、結果的にシステムに負荷をかけてしまうことを防ぐために開発されたという。Blackbirdはネットワークセッション数を減らしつつ、専用ソフトをインストールしなくてもサーバープロセスを監視するツールで既にGithubにも公開されているという。より詳しくは以下のスライドを参照して欲しい。

Zabbix Conference Japan 2014 about blackbird

最後にTIS株式会社の森元敏雄氏によるシステム監視ツールの比較のセッションを紹介しよう。Zabbixを始めとしたオープンソースソフトウェアによるシステム監視ツールの比較をWebでのリファレンス数などから人気度を図り、アーキテクチャーや特徴などを調べ上げて紹介した。ここで特徴的だったのはZabbixにはそれほど言及せず、いわゆる競合他社の製品を解説したことだろう。主にZabbixユーザーが集ったカンファレンスだったので大部分の参加者はZabbixのことは周知しており、その上で現在の他のシステムの概況を知りたいというニーズにはマッチしたセッションであった。中でもVagrantを開発しているHashiCorpが開発したSerfを取り上げ紹介。Serfはサーバーを必要としない軽量な自律分散型のクラスター監視やオーケストレーションなどに利用できるツールだ。Zabbixと組み合わせてサービスの自動検知などに使えるという。森元氏によると今後システム監視は自動化だけではなく自律運用の方向に向かっているという。

今後のシステム監視ツールの潮流は「自律運用」

今後のシステム監視ツールの潮流は「自律運用」

全体的に派手さは無いものの、最新リリースの説明やZabbix独自の開発方針、内部で使用されている言語やアーキテクチャーの解説、大規模データセンターでの事例やM2Mでのシステム監視の事例まで幅広く紹介され、既にZabbixを導入しているユーザーにとって収穫のあるイベントだったと言えるだろう。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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