全国各地で盛り上がりを見せるゲーム開発イベント
今回は少し趣向を変えて、日本各地で開催されているゲーム開発イベントについて紹介します。前回までに学んだ3Dゲーム製作のノウハウやチーム開発におけるバージョン管理の知識を駆使して「もっとゲーム開発を楽しみたい!」とお考えの皆さんには、本稿を通してイベントの雰囲気を体感し、ぜひ実際に参加していただければと思います。
ゲーム開発イベントには、大きく分けて2つあります。1つは、その場で組まれたチームでゲームを開発するイベント「Game Jam」、もう1つは、開発したゲームを投稿するコンテスト形式のイベントです。
全国各地で行われている「Game Jam」
ここでは、Game Jamについてイベント全般の流れに沿って解説していきます。Game Jamのイベント名がいくつか出てきますが、全般の流れを解説後に紹介します。
第5回でも少し触れたGame Jamは、基本的に「2日間で1本のゲームを製作する」イベントです。学生やゲーム開発のプロの人たちが混合で1つのチームを結成し、チームによるゲーム開発を行います。
Game Jamにはプログラマー、2D/3Dグラフィック、サウンド、プランナーなど様々な専門分野の人が参加し、協力しながらチームとして1本のゲームを製作します。製作するゲームはそれぞれのグループに任せる形になりますが、ほとんどのGame Jamでは共通のテーマが決められています。
それでは、Game Jamがどのようなイベントなのかを詳しく紹介していきましょう。
Game Jamの主なタイムライン
Game Jamは、様々な会場で開催されます。大学や専門学校、企業内オフィスで開催されることもありました。そのため、会場によっては24時間開いている会場もあれば、建物のセキュリティ上「入館は20時まで」と決められている場所もあります。
表は24時間出入り自由な会場で開催された「Global Game Jam 2015 in 琉球大学」のタイムラインです。どの会場で開催される場合でも、大枠はこのようなタイムラインになっています。会場によっては、中間発表の回数を増やしたりすることもあります。
時間 | 内容 | |
---|---|---|
1日目 | 9:00 | 開場 |
9:30 | 開会式・テーマ発表・グループ編成 | |
10:00 | Game Jam開始 | |
14:00 | 企画発表 | |
18:00 | 中間発表 | |
2日目 | 15:00 | ※ゲームアップロード |
15:30 | 発表(終わり次第試遊会) | |
18:40 | 閉会式 | |
19:00 | 全日程終了 |
製作テーマの発表
Game Jamでは、様々なテーマに沿ってゲームを製作していきますが、テーマが発表されるのは開催当日です。これまでにどのようなテーマが出題されたのか、「Global Game Jam」を例に、ここ数年のテーマを挙げてみましょう。
Global Game Jam 2013テーマ
「心臓の音(音のみ)」
https://www.youtube.com/watch?v=h_lTq6XL-AE
Global Game Jam 2014テーマ
「We don’t see things as they are, we see them as we are.」
https://www.youtube.com/watch?v=z2w9VIMDN5o
Global Game Jam 2015 テーマ
「WHAT DO WE DO NOW?」
https://www.youtube.com/watch?v=N1W5VxdNyNk
いずれも抽象度の高いテーマとなっています。これをどのように解釈するかは各チームに委ねられています。チームメンバー各自がテーマから思いついたことを挙げて話し合い、まとまった方針に沿ってゲームを製作していくことになります。
チーム決め
Game Jamでは、誰と同じチームになるか当日まで分かりません。そのため、知人・友人で参加しても初対面の人たちとチームを組むことも多くなりますが、チームの組み方には次の2パターンがあります。
- 事前に作られた企画に対してイベント当日に賛同者を募る
- 事前アンケートを考慮してチームを編成
事前に作られた企画に対してイベント当日に賛同者を募る
「Oculus Game Jam 2014」で採用された方法です。このGame JamではVR(Virtual Reality)ヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」を利用するため、参加者は事前に「どのようなコンテンツを作るのか」をアイディアシートに書き込みます(図3)。
そして、イベント当日にどのようなアイディアかを短時間で発表してもらい、全アイディアに対して「このアイディアは面白そう!」というアンケートを取ります。アンケートで選ばれた上位数アイディアに各個人が製作したいゲームのチームへ行くような流れです。
事前アンケートを考慮してチームを編成
琉球大学を会場に開催されるほとんどのGame Jamはこの方式を採っています。参加登録時に自分の役割(プログラマー、3D/2Dグラフィック、サウンド、プランナーなど)を1つ以上選択してもらい、その役割に対してどれぐらいの経験があるかを記述してもらいます。
IGDA 琉球大学では、参加者へ専門分野や経験年数のアンケートを取り、なるべく全チームが公平になるように編成します。さらに、なるべく1チームの構成メンバーは所属の学校・会社が被らないようにしています。なるべく新しい人々と1つのゲームを製作することで新しい考え方や技術が他のコミュニティにも広がってほしい、そしてそれらが融合し発展してほしい、という想いからこのような形を採っています(図4)。
様々なGame Jam
Game Jamは全国各地で開催されています。ここですべてを列挙することはできませんが、規模の大きなGame Jamを紹介します。
Global Game Jam
「Global Game Jam」(以下、GGJ)は、ギネス記録を持つ世界最大のGame Jamです(図5)。
全世界で同日同時間、同テーマでゲームを製作するイベントです。初開催の2009年から年々規模が大きくなり、2014年には世界72の国・地域で488会場が設置され、23,198人が参加しました。日本では北海道から沖縄まで20会場が設置され、約600名が参加者しています。2015年も大盛況のうちに終了しましたが、日本でGGJ 2015を開催した会場は以下のWebサイトから確認できます。
GGJ2015 日本の会場一覧−Global Game Jam JAPAN
http://ggj.igda.jp/sites-list/
なお、GGJ 2016の開催日は2016年1月29、30、31日に決定しました。興味のある方は、公式サイト(英語)がありますので、そちらを参照してください。
「Global Game Jam」公式サイト
http://globalgamejam.org/
福島Game Jam
「福島Game Jam」(図6)は、NPO法人「IGDA日本」が2011年から毎年夏に開催しているGame Jamです。
2011年3月に発生した東日本大震災により東北三県は多大な被害を受けてしまいましたが、デジタルゲーム産業を含むIT/ICT産業は復興途上にある被災地で有望視されている産業の1つであり、風評被害などを受けません。復興に寄与することを目的として開催されているGame Jamと言えます。
2015年は8月22、23日に開催され、世界5の国・地域でメインと連携会場含め18会場が設置され、551名が参加者しました。
東北ITコンセプト「福島GameJam 2015」公式サイト
http://fgj.igda.jp/
Oculus Game Jam
「Oculus Game Jam」は、常名 隆司氏が主宰で2013年から開催しているGame Jamです。このイベントはこれまで紹介したGame Jamとは少し異なり、必ずVRヘッドマウントディスプレイを使用したコンテンツを製作します。
VRヘッドマウントディスプレイの代表例として、Oculusの「Oculus Rift」、SCEの「Project Morpheus」、Samsungの「Gear VR」などが挙げられます。また、Game Jamと名付けられていますが、VRを使用したコンテンツであれば何でもOKです。
昨年度は東京2会場、大阪1会場、沖縄1会場の計4会場で開催されました。開催時期は毎年11月で、今年度も11月末に開催される予定です。現在は各会場の最終調整段階に入っている段階ですので、続報をお待ちください。
企画提案書−「Oculus Game Jam in Japan 2014」
http://www.slideshare.net/takashijona/oculus-gamejam-proposal
誰でも参加できるゲームコンテスト
実際にゲームを製作しているほとんどの人たちが「このゲームをどこに出そうか?」「どこかで公開できないかな?」などと考えていると思います。現在であれば、個人で公開できる場として同人イベントやApp Store、Google Playなど、様々なマーケットがありますので、それほど苦労しないでしょう。
また、Unityをはじめ多くのゲームエンジンが個人で利用できるようになってから様々なゲームコンテストが始まり、個人でのゲーム製作も盛んになってきていることが窺がえます。
そこで、ここでは定期的に開催されているゲームコンテストをいくつか紹介します。もしかすると、筆者も把握していないゲームコンテストがあるかもしれません。皆さんもどこかでゲームコンテスト開催のお知らせ等を見聞きした場合は、ぜひ「こういうゲームコンテストがあるよ」と筆者までご連絡いただければと思います。
なお、各コンテストのレギュレーションに関しては、各自公式サイトよりご確認ください。
ニコニコ自作ゲームフェス
「ニコニコ自作ゲームフェス」(図7)は、「ニコニコ動画」の株式会社ドワンゴが主宰するゲームコンテストで、2013年ごろから開催されています。
ニコニコ自作ゲームフェスは「ゲームを作るひと」「遊ぶひと」「二次創作をするひと」をつなぎ、個人で作ったゲームがもっと多くのひとにプレイされるようになることを目指すお祭りです(公式ブログより抜粋)。
また、優秀作品には大賞が、その他の作品にも選考委員特別賞などが贈られ、自作ゲームを応援する各企業が選考する協賛賞では、それぞれの作品に商品が贈られます。コンテストでの応募手順にはゲーム紹介動画の作成・投稿も含まれているので、今までどのような作品が投稿されたのかをすべて見ることができます。
ニコニコ自作ゲームフェス5受賞作品のコメント発表!−ニコニコインフォ
http://blog.nicovideo.jp/niconews/ni054591.html
なお、現在は「ニコニコ自作ゲームフェス6」への作品募集が始まっています(応募締切は2016年1月3日)。応募資格等は不問なので、自作したゲームがどのように評価されるのか、ぜひ投稿してみてはいかがでしょうか。
ニコニコ自作ゲームフェス2016 応募要項−ニコニコインフォ
http://blog.nicovideo.jp/niconews/ni055284.html
Unityインターハイ
「Unityインターハイ」(図8)は、Unity Technologies Japanが主宰するゲームコンテストで、2014年から開催されています。
日本全国の高校生や高専生、小中学生向けのゲーム開発の全国大会で、Unityを利用したオリジナルゲームを製作し全国優勝を目指します。
予選を通過した場合は、製作したゲームの発表会が東京で開催されます。また、予選を通過した場合、開発メンバーが発表会へ参加する際の往復交通費をUnity Technologies Japanが負担してくれるとのことです。今年の作品提出期間は8月31日をもって終了しましたが、また来年も開催されると予想されます。
プログラミング教育が盛り上がっている昨今、このようなイベントも開催されているので、高校生以下の学生や兄弟姉妹がいらっしゃる方は、本イベントを目標にすることをアドバイスしてみてはいかがでしょうか。
Unityインターハイ公式サイト
http://inter-high.unity3d.jp/
ゲームクリエイター就職大作戦
「ゲームクリエイター就職大作戦」(図9)もUnity Technologies Japanが主宰するゲームコンテストで、Unityインターハイ同様に2014年から開催されています。
本イベントはプロのゲーム開発者を志望する学生やアマチュア開発者を対象としたゲーム開発コンテストです。優秀なゲーム開発者を見つけ出したい企業と、スキルを磨いてゲーム開発会社に就職したい若手開発者を結びつけることを目的としています。
応募資格は企業に正規雇用されていない25歳以下の社会人、もしくは就職活動を控えている学生・就職活動中の学生であることです。予選通過者はUnityインターハイと同様に東京で発表会があり、往復交通費もUnity Technologies Japanが負担します。
ゲームクリエイター就職大作戦
http://daisakusen.unity3d.jp/
今回は、ゲーム開発をテーマにした各種のイベントについて紹介しました。ハードウェアやソフトウェアの目まぐるしい進化により、個人でゲームを開発したり、開発したゲームをリリースしたりすることが以前よりも容易になり、今回紹介したようなたくさんのコンテストも開催されるようになりました。
今回の連載が、これからUnityによるゲーム製作を始めたいと考えている人たちのモチベーションになり、またすでに始めている人たちにはもっとたくさんのゲーム製作に取り組むきっかけになればと思います。
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