回帰試験、英語では何ていう?

2008年7月12日(土)
石川 俊行

機能の度重なる追加

 The fruition of their labor was a new database that garnered a reputation for rock solid stability. With the start of its new life in the open source world, with many new features and enhancements, the database system took its current name: PostgreSQL. ("Postgres" is still used as an easy-to-pronounce nick-name.)

 "fruition"は「実を結んだ物」、果物のフルーツからの派生です。"garner"は「獲得する」。"reputation"と言うと「名声」ですが、ちょとおおげさなので「好評」でしょうか。

 意訳すると、「グループによる作業で達成されたこれまでにないデータベースは岩のようにびくともしない安定性ゆえ好評を獲得しました。」"solid"は「堅牢な」という意味ですから、「びくともしない」が適当です。

 括弧の中で"Postgres"は発音のしやすいニックネームとして今でも使われています、というのは各国共通でしょうか。ユーザ会の理事としてはあまりお薦めではありませんが、日本では「ポスグレ」が一般的なようです。

 The four years following (versions 7.0 to 7.4) brought the Write-Ahead Log (WAL), SQL schemas, prepared queries, outer joins, complex queries, SQL92 join syntax, TOAST, IPv6 support, SQL-standard information schema, full-text indexing, auto-vacuum, Perl/Python/TCL procedural languages, improved SSL support, an optimizer overhaul, database statistics information, added security, table functions, and logging enhancements and significant speed improvements, among other things. A small measure of PostgreSQL's intensive development is reflected in its release notes.

 長い文章ですが、内容は機能の羅列です。「その後4年間、PostgreSQLのリリースでいうと7.0から7.4において、数多くの先端的な機能、(あれこれ...)が追加されました」

 PostgreSQLはエンタープライズでの運用に耐える強力な機能の追加に邁進していることが理解できます。エンタープライズとは、大規模企業、政府および公共団体、大学など教育研究機関を総括した組織を表す言葉です。

 データベースエンジンの改良は元より、アプリケーションとのインターフェイスも充実化が計られています。可用性ということがよく言われますが、PostgreSQLはこの分野でもユーザーの要求に充分答えられる開発体制と実績を誇っています。

 "optimizer"は「オプティマイザ」あるいは「最適子」で、PostgreSQLのバックエンドがクライアントからの問い合わせに対し解答を戻す過程の一連の内部処理の1つです。ここは次回の連載で詳しく説明します。このオプティマイザの"overhaul"「オーバーホール(分解掃除・総点検)」も行われたと書いてあります。

今日のPostgreSQL

 Today, PostgreSQL's user base is larger than ever and includes a sizeable group of large corporations who use it in demanding environments. Some of these companies such as Afilias and Fujitsu have made significant contributions to PostgreSQL's development.

 「今日PostgreSQLの利用者基盤は以前より大型で、シビアな環境で使用する大手企業のまとまった集団も含まれています。たとえばAfiliasおよび富士通などのようにこれらの企業のうちのいくつかは、PostgreSQLの開発に多大な貢献をしています」

 "a sizeable group of large corporations"は「大手企業のまとまった集団」。"sizeable"は「かなりの」「相当な大きさの」です。次の"large"と重ならないよう「まとまった」としてみました。横道ですが、"sizable"ではなく、"sizeable"と綴っているので、米国ではなく英国系の筆者が原文を起草したことがわかります。"demanding environment"は「シビアな環境」。

 And, true to its roots, it continues to improve in both sophistication and performance, now more than ever. Version 8.0 is PostgreSQL's long awaited debut into the enterprise database market, bringing features such as tablespaces, Java stored procedures, point in time recovery, and nested transactions (savepoints). With it came a long awaited feature --- a native Windows port.

 さらに、8.0バージョンがエンタープライズデータベース市場にデビューを果たすための必須とされる諸機能が列挙されています。

 「テーブル空間」「Javaによるストアドプロシージャ」「ポイントインタイムリカバリ:トランザクションログを使った差分バックアップによりデータベースを過去のある時点に戻す機能」「入れ子状のトランザクション(セーブポイント):複数のセーブポイントをトランザクション内に定義して、ロールバックする位置を選択」などです。そして、8.0からネイティブWindowsへの移植が提供されました。"port"は「移植」ですから、ポータビリティは「移植性」と訳します。

 いかがでしたでしょうか。次回はPostgreSQLデータベースエンジンの内部処理がどうなっているのかを説明します。

NPO法人日本PostgresSQLユーザ会
昭和21年、東京都生まれ。小樽商科大学数理経済学専攻。PostgreSQLオフィシャルマニュアル和訳プロジェクトに深くかかわる。日本PostgreSQLユーザ会・組織運営担当理事。「ものつくり大学」データベース講座・非常勤講師。http://www.postgresql.jp/

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