Hyper-VでいよいよOS仮想化本番へ
Hyper-V 2.0 の強化点
Hyper-V 2.0では、よりダイナミックなデータセンターに対応するため、主に可用性、管理性、パフォーマンス、スケーラビリティについて強化されています。
可用性、つまりサービスの継続性を向上させるための新機能として、Live Migrationが追加されました。これは稼働中の仮想マシンを、ほとんど停止させることなく、別の物理コンピューターに移動させる機能です。
ハードウエアを追加した時の仮想マシンの引っ越しや、管理OS(親パーティション)のメンテナンスのための一時的な移動など、サービスを止めることなく切り替えることができます。ユーザーは仮想マシンが移動したことは気付かず、仮想OS自身も移動を考慮する必要はありません。
Live Migrationと同時に、仮想マシンのディスクイメージを格納しておくストレージにも新方式が追加されました。Cluster Shared Volume (CSV)とよばれる、共有可能なネットワークストレージです。Live MigrationとCSV については、次回以降で詳しく解説します。
パフォーマンスとスケーラビリティについては、64個の論理プロセッサーをサポートし、384個の仮想OSが同時稼働可能になりました。新しいCPUでサポートされる仮想化支援機能である、AMDのRapid Virtualization Indexing(RVI)や、IntelのExtended Page Tables(EPT)に対応し、これらのCPUを搭載したコンピューターでは、よりパフォーマンスが向上しています。
また、CPUのコアに分散している処理を少数のコアに集めて、そのほかのコアを休止させる、コアパーキングに対応することで、より消費電力を節約することができるようになりました。
ネットワークは10ギガビット・イーサネットやジャンボ・フレームに対応し、特にネットワーク経由のストレージに仮想マシンのイメージを置いている場合にも、パフォーマンスを大きく下げることなく運用できます。ネットワーク処理のオフロードにも対応しているので、多くの仮想マシンでネットワークカードを共有する場合でも、カードの性能を生かすことができると同時に、CPUの負荷を軽減できます。
ストレージについては、ハードディスクイメージであるVHDファイルや物理ハードディスク(パススルーディスク)を、仮想マシンの稼働中でも動的に接続、切断できるようになりました。これは仮想マシンのSCSIインターフェース経由で利用できます。
またHyper-V 1.0ではパフォーマンスの観点で容量固定の仮想ハードディスクの使用を推奨していましたが、Hyper-V 2.0では容量可変の仮想ハードディスクの速度向上を図り、容量固定に近いパフォーマンスが得られるようになりました。それでも容量固定の方が高速ですので、スピードが要求される運用環境では容量固定の仮想ハードディスクを使う方が有利です。
リモートデスクトップのパフォーマンスを大幅に強化
シンクライアントシステムでは、ユーザーの手元には入出力を中心にした、最小限のシステムを配置し、データセンターで実行しているクライアントの仮想OSのスクリーンを、ネットワーク経由で表示させます。WindowsでもリモートデスクトップやVDIのソリューションが提供されています。
Hyper-V上にWindowsのサーバーやクライアントを展開し、ユーザーからの接続を受け付けることで、シンクライアントシステムが構築できます。これまでリモートデスクトップのスクリーンはローカルコンピューターのスクリーンと異なり、動画などの動きの速い表示は苦手としていました。したがって、用途もOfficeや業務アプリケーションなどの、スクリーンのパフォーマンスをそれほど必要としないものが中心でした。
そこで、Windows Server 2008 R2とWindows 7では、リモートデスクトップのパフォーマンスが大幅に強化され、Windows Media Playerで高品質の動画などのマルチメディアも再生できるようになりました。マルチモニターにも対応し、補助としてではなく、本格的なシンクライアントシステムを構築できるようになりました。
手元のWindows 7からネイティブまたはHyper-V上のWindows Server 2008 R2のアプリケーションを使うリモートデスクトップや、Windows 7からHyper-V上に展開されプールされているWindows 7を使うVDIともに、高品質なマルチメディアを含む高い操作性が得られます。Hyper-Vによって柔軟な構成が可能になるとともに、ユーザーにも十分に高い操作性が提供できるようになりました。