MR・AI・量子コンピューティングが重要テクノロジー 〜Microsoft Tech Summit 2017レポート
日本マイクロソフトは11月8〜9日に、カンファレンスイベントMicrosoft Tech Summit 2017を開催した。インフラエンジニアやアーキテクト、IT戦略に関わる人など、IT技術者を対象に、Microsoftの技術を紹介するイベントだ。
初日の基調講演では、9月に米国で開催されたイベントMicrosoft Igniteで発表された内容や、日本での新発表を中心に、最新の技術やソリューションが紹介された。
三菱ふそうトラック・バスのConnect Xを支援
基調講演はまず、同日11月8日に発表となった、三菱ふそうトラック・バス株式会社(MFTBC)のデジタルトランスフェーメーション戦略「Connect X」の支援の話題で始まった。この発表では、Microsoft HoloLensを活用した開発やメンテナンスの変革、Microsoft Azure IoT Hubを活用した運用管理システム「Truckonnect(トラックコネクト)」、社内ヘルプデスクでのAIチャットボット導入が支援内容となっている。
MFTBCのルッツ・ベック氏(CIO)が壇上に登場し、Microsoftのジャン・フィリップ・クルトワ氏(グローバルセールス マーケティング & オペレーション エグゼクティブバイスプレジデント兼プレジデント)が話を聞いた。
ベック氏は、トラックのビジネスにおいてもデータが重要となってビジネストランスフォーメーションを迎えていることを強調。特に、顧客とどこからでもつながる時代になったことや、自動車業界の外からも参加する企業が現れて競争が激しくなっていることを語った。
85年の歴史を持つ企業がインターネット企業と競争するためにどうするかについてクルトワ氏が尋ねると、ベック氏は「イノベーションが大切」と回答。そのために、チーム構成を変えて国際的なコラボレーションをはかったことなどを紹介した。
Microsoft 365で働き方改革
続いて登場した日本マイクロソフトの伊藤かつら氏は、「働き方改革+デジタルトランスフォーメーション」として、モダンワークプレイスについて語った。一人の天才に頼るのではなく、社員全員が活躍する働き方を実現するものだという。その要件として「創造力を最大限発揮」「チームワークを強化」「統合によるシンプルな管理」「インテリジェントセキュリティ」を伊藤氏は挙げた。
具体的なMicrosoftのソリューションとして「Microsoft 365」が紹介された。Microsoft 365は、Office 365とWindows 10、Enterprise Mobility + Security(EMS)を組み合わせた企業向けのプランだ。
伊藤氏は、Microsoft 365導入による変革について、「資料や作ったものなど、すべてがデジタルアセットとしてアクセス可能になる」という「Microsoft Graph」を取り上げた。Microsoft Graphを有効に使う例が、Microsoftが2016年に買収したLinkedInだ。「社内の連絡先を参照するように、LinkedInの情報を参照できる」と伊藤氏は説明した。それに加えて、データをアクセス可能にすることで、AIと結びついたOffice 365のサーチエンジンが有用なデータをアドバイスしてくれることも伊藤氏は語った。また、「(業務)システムも変わる」としてクラウド型業務システムのDynamics 365を紹介。要件定義を何ヶ月もかけて開発するのではなく、モジュラー化して早く実装するというコンセプトを語り、部門ごとなどに「モダンなアプリケーションをすぐ実装できる」と述べた。
伊藤氏はさらに、これらのプラットフォームがAzureにシームレスにつながるとして、「エンドツーエンドを1つのプラットフォームで実現できる」ことを強調した。
モダンワークプレイスの話の最後として、伊藤氏はMicrosoft 365について「大企業向けだけではない。中堅中小や、現場で働くファーストラインワーカー(F1)、教育機関などにも使って欲しい」と語った。
モダンワークプレイスのデモは春日井良隆氏により行なわれた。まず、検索のインテリジェンスの例として、Office 365で「伊藤かつら」さんを検索すると、イターネット上の情報やSharePoint上の文書が検索され、さらにいる場所などもわかる様子が実演された。
また、チームワークの例として、Surface Hubと、離れたところにいるデザイナーのタブレットとで1つのホワイトボードを共有して共同作業するところも実演した。
そのほか、PowerPointで、簡単な箇条書きだけ入っているスライドに対してAIがデザインを提案してくれるところや、スライドに3Dのデータを貼って視点を動かして見せるところも実演された。さらに、会場のリアルタイム動画に3Dオブジェクトを重ねる、一種のMR(Mixed Reality)の例も見せ、「最新のWindowsで今日から使える」ことを春日井氏は語った。
小柳建設の「Holostruction」をデモ
続いて、MRを「モダンワークプレイスを変える可能性がある」として取り上げた。「MRというとエンターテイメントと思われるかもしれないが、ビジネスこそMRのインパクトが大きいと思っている」と伊藤氏。特に、工場のファーストラインワーカーがMRで作業のヘルプを見る用途や、インフォメーションワーカーがMRでコラボレーションする用途など、さまざまな活用シナリオを紹介した。
MRのデモとして、小柳建設の「Holostruction」が実演された。「多くの観客のいる場所でデモするのは初」とのことだ。1年半かけて橋を建築するプロジェクトにおいて、3Dで再現された橋の様子が、工程タイムラインのそれぞれの時点にあわせて確認できる。
また、コラボレーションの例として、その場に現場監督がアバターとして参加したり、3D空間に資料を表示して共有するところ、一人称視点の橋に建機の3Dオブジェクトを置いてみるところなども実演した。
セキュリティの境界はファイアウォールからIDに
次に登場した澤円氏は、生産性とセキュリティについて説明した。澤氏は、いままで生産性とセキュリティは両立が難しいと考えられていたと語る。そして、これまでのセキュリティはファイアウォールの内側にいることによって守るものだったが、いまは企業の機会は外にあると指摘した。
それを守るのにAzureではインテリジェンスを用いて自動的に賢くなっていくことや、サイバークライムセンターが脅威やセキュリティを分析していること、さらにはさまざまな認証機関から認証を受けてマイナンバーにもフルコミットしていることなどを澤氏は説明した。
さらに澤氏は「境界はファイアウォールからIDに移っている」として、認証のIDをいかにして守るかが重要になっていると語った。
そのデモとして、まずAzure Activre Directoryの条件つきアクセスの機能を実演した。会社のSalesforceアプリケーションへのアクセスをAzure Activre Directoryの認証で管理しており、iPadでアクセスできるというシチュエーションだ。澤氏は「モバイルデバイスは置き忘れる危険性があるので制限をかける」と言って、iOSによるオフィス以外からのアクセスについて制限を加えたり、多要素認証を求めたりという設定を追加。実際にそれが適用されるところを見せた。
Linux/DockerのSQL Server 2017で機械学習をデモ
続くテーマはハイブリッドクラウドだ。澤氏は「クラウドは場所のことではなくモデルを指す」として、共通のアイデンティティで、統合された管理とセキュリティで、一貫性のあるデータプラットフォームで、統一されたDevOpsで利用できることを要件とし、自社のAzureとオンプレミス製品を並べてみせた。さらに、Azureの機能をオンプレミスで使えるAzure Stackを紹介した。
さらに水平のハイブリッドとして、SQL Server 2017がLinuxやDockerに対応したことを紹介して、デモを見せた。Mac上のDocker for Macで、用意したdocker-compose.ymlによりDocker HubからダウンロードしたSQL Serverのイメージを、Docker環境で10秒程度で起動するところを見せた。また、そのデータベースに外部から接続してテーブルをクエリする様子も実演した。
SQL Server 2017年については、機械学習への対応も紹介。PREDICT文を使って、次シーズンのスキーのレンタル数を予測する例を実演した。
- NAVITIMEのCosmos DB利用事例
- 重要テクノロジー「MR」「AI」「量子コンピューティング」など
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