連載 :
  インタビュー

AppDynamics、アプリケーションモニタリングの次はネットワークとストレージ

2016年12月9日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
アプリケーションパフォーマンスモニタリングのAppDynamicsの製品担当VPに、今後の製品計画を伺った。

アプリケーションパフォーマンスモニタリングを手がけるAppDynamicsは、2016年11月15日、ラスベガスでイベント「appshere/16」を開催した。期間中に同社のVP, Market Development & InsightであるJonah Kowall氏にインタビューを実施し、同社の製品戦略について伺った。

まず自己紹介をお願いします。

私はAppDynamicsでプロダクト戦略の立案、パートナーとの戦略的な提携などに携わっています。前職は、Gartnerで情報システム分野の運用に関わる領域のリサーチ部門のVPを4年間やっていました。その当時、アプリケーションパフォーマンスモニタリング(APM)についても関わっていましたので、AppDynamicsについてもよくリサーチをやっていましたね。

ブレークアウトセッションに登壇した製品戦略担当VPのKowall氏

ブレークアウトセッションに登壇した製品戦略担当VPのKowall氏

どうしてAppDynamicsに転職したのですか?

ITソリューションの中のモニタリングという部分はこれまで非常に縦割りで、おのおののサイロに閉じこもっていてインフラもアプリケーションもバラバラにモニタリングを行っていました。非常にシンプルでモノリシックなアプリケーションであれば、そのようなサイロごとのモニタリングでも足りていましたが、現在の複雑なアプリケーション構成になるとバラバラに追いかけていては役に立ちません。実は最近のWebネイティブなアプリケーションよりも、エンタープライズ企業が持っているアプリケーションのほうが厄介なのです。このように過去のレガシーなアプリケーションやデータが複雑に絡んでいて、それをOSやミドルウェアなどのコンポーネントごとではなく、ビジネストランザクションと捉えて包括的にモニタリングする。そういうアーキテクチャーを持っているのがAppDynamicsだけだった、ということですね。

AppDynamicsのプロダクト戦略について伺います。IT業界ではプロダクトのポートフォリオを拡げるための買収が当たり前ですが、AppDynamicsにおいてはそれがあまりないのはどうしてですか?

実は、いくつかの買収は行っています。ただ我々が他と違うのは、単に製品を買収してそれを製品ラインに追加するのではなく、買収した会社のエンジニアと一緒にその機能を最初から書き直して、AppDynamicsの製品とインテグレーションするようにしているというところでしょうか。つまり製品そのものを取り込むというよりも、それを開発したエンジニアを取り込んでより強固に統合することを優先しています。

IoTについて、フットプリントが少ないエージェントが2日目のデモでも紹介されましたが、それはこれから製品として出てくると考えても良いのでしょうか?

今はプロトタイプですが、まずIoTデバイスからのデータを受け取るゲートウェイという形で開発を進めています。さらにIoTデバイス向けの小さなエージェントも、同様に開発を進めています。

今回、これまでのJavaやC++に加えてGoのサポートがベータという形で発表されましたが、それ以外の言語やコンポーネントについての計画を教えてください。

AppDynamicsはJava、.NET、PHP、Node.js、C++、Pythonなどの言語をサポートしていますが、それに加えて今回Goのサポートをベータとして展示ブースで紹介しています。他の言語についても、C++のエージェントにラッパーを加えることで対応を拡げていこうと思っています。ただコンパイルが必要な言語についてはソースの修正が必要になってしまいますが、それもデバッガーが利用するインターフェースなどを応用することで、なるべくソースを変えずに利用できるようにしていく予定です。他の様々なITリソース、例えばAWSやMongoDBなどはExtensionを使う形で今でもモニタリングできます。

これからの予定として、ネットワークのモニタリングはExtensionで実施していますが、次はストレージのモニタリングを考えています。ネットワークの場合とも同じで様々なストレージベンダーごと、製品ごとにエージェントを作るのではなくストレージが稼働しているOSのレベルでモニタリングを行うことで、より広範囲なストレージ製品をカバーできるようにするつもりです。

AppDynamicsにとってのチャレンジはなんですか?

組織として、また製品としてもスケールすることですね。それは顧客からのニーズに応えることでもあります。ある顧客からは「これまでの数倍の規模でモニタリングをやりたい」と言われると同時に、別の顧客からは新しい機能を要求される。これはスケールすることを選択するか、新しい方向に尖ることを選択するか、という問題です。新しい機能を開発する労力を、規模を拡大しても安定して稼働する方向に向ければ良いという考え方もありますが、同時に新しいことにも挑戦しなくてはなりません。IoTやVR/ARなどへの取り組みはまさに新しい方向ですが、ジェネラルセッションのデモでも紹介したように、新しいインターフェースやIoTは我々がやらなければならないことのほんの一部だと思っています。それを実現するために、従業員も毎日増えていますね。今日もAppDynamicsに入って3日目という社員に会いましたよ。こういう風に常に社員も増えていますし、これから製品も拡がって成長を続けていくと思います。

元ガートナーのリサーチャーだけあって非常に論理的に話をすすめてくれたKowall氏。買収した製品をそのまま使わずに書き直すという部分に、テクノロジーを寄せ集めただけのソリューションとは異なるインテグレーションに対するこだわりが感じられたインタビューであった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

連載バックナンバー

AI・人工知能インタビュー

Red HatがAIに関するブリーフィングを実施。オープンソースのAIが優れている理由とは

2024/4/19
来日したRed HatのAI部門の責任者らにインタビューを実施。オープンソースのAIが優れている理由などを訊いた。
クラウドインタビュー

CloudflareのデベロッパーリレーションのVPが来日、デベロッパーアドボケイトのKPIを解説

2024/3/26
CloudflareのVP来日に合わせてインタビューを実施した。デベロッパーアドボケイトのKPIやAIのためのゲートウェイについて訊いた。
設計/手法/テストインタビュー

生成AIはソフトウェアテストをどのように変えるのか 〜mablに聞く、テスト自動化におけるLLM活用の展望と課題

2024/3/1
2024年2月22日、E2E(End-to-End)テスト自動化ソリューションを提供するmablは、Co-Founderの1人であるDan Belcher氏の来日に合わせミートアップを開催した。日本市場に力を入れるmablは、生成AI活用に向けてどのような展望を描いているのか。

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています