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  インタビュー

アプリケーションパフォーマンス管理のAppDynamics、シスコ買収以後も変わらない姿勢を語る

2018年1月17日(水)
松下 康之
アプリケーションパフォーマンス管理のAppDynamicsのCTOにインタビューを実施。シスコによる買収後の状況、今後の製品開発計画、マイクロサービスへの対応などを尋ねた。

アプリケーションのパフォーマンス管理によるアプリケーションインテリジェンスを掲げて製品開発を行うAppDynamicsが、AppJamというプライベートカンファレンスを2017年12月11日に開催した。それに併せて来日したCTOのバスカー・スンカラ(Bhaskar Sunkara)氏にインタビューを行った。

AppDynamicsは2008年に創業し、2017年初頭にIPOの直前まで行ったが、その前にシスコに37億ドルで買収されたユニコーンと言っても良い超有望なベンチャーだ。現在はシスコの一部ではあるが、独立の組織として運営されている。事実、日本においても「名刺にシスコの表記が入っただけ」とインタビューに同席したアップダイナミクスジャパン合同会社のカントリーマネージャー、内田雅彦氏は語る。製品開発などにおいて、シスコからの干渉は最小限、そして顧客からのリードはシスコの営業部隊を通じて大量に来ているということを考えると、シスコとAppDynamicsの今の関係は、良い付き合い方だと言って良いだろう。

AppDynamicsの特徴は、アプリケーションの性能モニタリングをエンドツーエンドで行えるところだ。例えばスマートフォンから航空券予約システムにアクセスし、Webサーバー、ロードバランサー、ミドルウェアそしてバックエンドの様々なアプリケーションに至るまでのトラフィックを可視化し、どこで遅延が起きているのかを検知できる。またスマートフォンのアプリケーションがクラッシュした時に、それを検知してレポートを上げるなどスマートフォンという厄介な端末を管理する方法として、ゲームメーカーなども採用しているのは記憶に新しい。CTOそして製品部門のトップとしてスンカラ氏が何をしようとしているのかを尋ねてみた。

CTOのバスカー・スンカラ氏

CTOのバスカー・スンカラ氏

シスコに買収以後、CTOとして何か変わったところはありますか?

特に変わってはいませんね。組織としては独立して運営されていますし、製品開発も同様です。シスコ製品とのインテグレーションについては、私の組織の中にある1つのグループが専門的にやっています。それ以外は全く変わっていません。AppDynamicsは組織としては成長を続けています。サンフランシスコのオフィスもこれまでは1フロアを借りていただけでしたが、他の階を借りないと収まらなくなってきています。今、計画しているのは、1つのフロアをエグゼクティブブリーフィングセンターにしようということです。お客様に対してプレゼンテーションを行う際には、シスコがサンノゼに持っている施設も使えますが、「サンフランシスコ市内でやりたい」というニーズも強いのです。

サンフランシスコからシリコンバレーへのあの渋滞を考えると、そういうものが必要ですよね。

そうですね。最近、渋滞はさらに悪くなっていると思います。

シスコは買収を多く手がけていますが、買った技術や製品が上手く育った例が少ないように思います。AppDynamicsは今のところ、独立しているのでその辺は大丈夫といったところでしょうか?

そうですね(笑)

エンタープライズのアプリケーションがモノリシックな仮想マシンベースものから、コンテナをベースとしたマイクロサービスに向かっています。これに対応することは可能ですか?

我々の製品は、どんなアプリケーションであっても対応は可能です。つまり仮想マシンベースのものであってもコンテナや複数のコンテナがオーケストレーションされたマイクロサービスでも管理できます。ここでのポイントは、仮想マシンかコンテナかという粒度の問題ではなくて、ルースリーカップルド(loosely coupled)、つまり疎結合されたサービスによって構成されたアプリケーションを可視化し、管理するという部分です。ビジネスがきちんと機能するためにはインフラだけでもアプリケーションだけでもなく、その2つがちゃんと協働して動くことが必要なのです。そのためにはアプリケーションデベロッパーとインフラストラクチャーのエンジニア、そしてビジネスオーナーが同じ視点でシステムを総合的に管理する基盤が必要だと思います。AppDynamicsは、それを提供しているのです。

アプリケーション管理者とインフラ管理者が会話を行えるようにするのがAppDynamicsの効力

アプリケーション管理者とインフラ管理者が会話を行えるようにするのがAppDynamicsの効力

モノリシックなアプリケーションであってもコンテナの上で構築されたアプリケーションであっても、同様に管理ができるわけですね。

エンタープライズアプリケーションには様々なものがあるのは理解していただけると思いますが、そのポイントは「疎結合」されているということです。それらが1つのワークフローとしてビジネストランザクションを実行している、その状態をいかに管理するのか? がポイントであって、コンテナなのか仮想マシンなのかというのはビジネスからみたら問題ではないのです。我々のシステムであれば、ベアメタルのシステムからOpenShiftやCloud Foundryなどのアプリケーションフレームワークの上で稼働するシステム、それにクラウド上のものであっても同じように管理ができます。

最近のバズワードに人工知能や機械学習などがありますが、AppDynamicsとしての取り組みは?

シスコが今年買収したPerspicaという会社があります。これは機械学習を利用してオペレーション分析を行う企業で、30名くらいのエンジニアがいますが、それが今、私の組織の下で機械学習をアプリケーションインテリジェンスの中に組み込もうとしています。あるサーバー単体のプロセスに何かのトラブルが起こった際に、それをドリルダウンすることは今のAppDynamicsでも可能ですが、Perspicaの技術は本当の原因、Root Cause Analysis(根本原因解析)を行うために、機械学習の力を使おうというものです。ある1つの現象から1つの原因を見つけるだけではなく、複数の現象からそれを引き起こしている本当の原因を見つけることができるようになります。複数のサーバーをまたがったフローに対して、機械学習による根本原因解析を行うのは将来の計画に入っています。

最新バージョンの4.0ではIoTデバイスの管理、そしてネットワーク機器の管理も可能になりました。これによって、ネットワーク管理者もインフラ管理者やアプリケーション管理者と同じモニタリングを利用することが可能になりました。

IoTデバイスを管理するということは、リソースに制限のある小さなデバイス用のエージェントがあるということですか?

IoTデバイスについては、CやC++などの言語から呼び出すAPIを用意したということです。IoTデバイスは性能や仕様に制約がありますので、なるべく負荷を減らすような仕組みになっています。

日本のビジネスはどんな状況ですか?

内田:日本国内でも順調に成長しています。近い将来、人員を3倍に増員する予定です。様々な引き合いがきていますし、シスコの営業部隊からの引き合いも非常に多くなっています。これから営業、カスタマーサポート、プロフェッショナルサービスなどを増強していく予定です。

プロフェッショナルサービスはAppDynamicsのように自動化が進んでいるツールにとってはそれほど必要ないのでは?

実際には顧客が持つ様々なレガシーなアプリケーションとの統合に関して、カスタマイズが必要なこともありますが、究極的にモニタリングとは何かが起こった時にそれを確実に見つけて伝える、つまりインフラエンジニアからアプリケーションエンジニア、さらにビジネスオーナーに対してもそれを通知することが必要になります。

その時に、これまでの「インフラはこの部門、ビジネスに関してはこの部門」というやりかたではなくて、組織のあり方まで見直す必要が出てくるのです。ですのでプロフェッショナルサービスが行うことの1つは、その企業の文化を変えたり、組織の構成を変えたりする必要さえ出てきます。意外かもしれませんが、技術的な側面よりもそういった場面が多いというのも、AppDynamicsの特徴かもしれません。

シスコによる買収以降も独立した組織として運営されているAppDynamicsだが、シスコが買収したPerspicaによる機械学習は、よりプロアクティブなモニタリングとして期待できる部分だろう。また創業者のJyoti Bansalは、すでにAppDynamicsを離れてCI/CDのサービス化を実現する新たなベンチャーを立ち上げているが、ここでもAppDynamicsとの連携が実現されているようだ。

Jyoti Bansalが手がける新しいベンチャー:Harness

モニタリングだけではなく、様々なベンダーとのエコシステムを構築しようとしているAppDynamics、今後も注目していきたい。なお、2016年にラスベガスで開催されたプライベートカンファレンスのレポート記事は、こちらを参照されたい。

アプリケーション性能管理のAppDynamics、プライベートカンファレンスを開催

フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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