マルチクラウドのDBaaSを抽象化するAivenの製品担当VPにインタビュー
Aivenはパブリッククラウドを活用してデータベースをサービスとして提供する(DBaaS)フィンランドのベンチャー企業だ。以前に日本の代表にインタビューを行い、ビジネスの概要や差別化のポイントを聞いた。今回はKubeCon+CloudNativeCon Europe 2023にスピーカーとして参加していたVP of Product StrategyのJonah Kowall氏にアムステルダムでインタビューを行った。以前のインタビュー記事は以下を参照して欲しい。
●参考:パブリッククラウドを使ったDBaaSを展開するAivenの日本代表にインタビュー
Kowall氏はJaegerのコントリビュータとしてKubeConに参加しており、過去のKubeConにも何度もJaegerに関するセッションを行っている。Jaegerに関するベテランのエンジニアと言えるだろう。今回のインタビューには、AivenのDeveloper RelationsであるSebastien Blanc氏も同席して行われた。
自己紹介をお願いします。
Kowall:私はAivenでプロダクトのストラテジーを担当しています。まだAivenに入社して半年くらいですが、以前はLogz.ioやAppDynamicsで仕事をしていました。以前、あなたにインタビューされたこともありますよ。このインタビューの話が来たときに「この名前に見覚えがある。以前どこかでインタビューされたはずだ」と思いました。確か、AppDynamicsの時にインタビューをやっているはずです。
そうですか。私はすっかり忘れていました。教えて頂いてありがとうございます。あれはラスベガスですね。今回はJaegerのセッションを担当していますが、今日のインタビューはAivenについてお願いします。Developer Relationsのセバスチャンさんにも参加いただいてますが、セバスチャンさんの自己紹介もお願いします。
●参考:AppDynamics、アプリケーションモニタリングの次はネットワークとストレージ
Blanc:私はAivenのデベロッパーリレーションを担当しています。以前は、Red HatでJava関連の製品の仕事をしていました。Red Hat Mobileなども担当していましたが、今はもうメインの製品ではないんですよね。
Aivenはパブリッククラウドのデータベースサービスを抽象化してユーザーが簡単に使えるようにするのがミッションだと思いますが、デベロッパーリレーションの意味は?
Kowall:Aivenは、パブリッククラウドをまたいでデータベースを自由に使えるようにするというのが主な仕事ですが、顧客が求めているのはビジネスに使えるアプリケーションです。なのでデータベースだけがあっても意味がなく、どうやってスムーズにアプリケーションを構築するのか? という点がポイントになってきます。なのでデベロッパーリレーションの仕事はこれから重要になってくるんです。データベースはインフラストラクチャーだと捉えるとわかりやすいかもしれません。
Blanc:データベースだけを使うならAivenのUIから操作をするだけで使えるようになりますが、実際にアプリケーションに組み込んで使う時にはAPIを使う必要がありますので、その部分だけでもデベロッパーリレーションの役割はあるわけです。いわゆるインフラストラクチャーのレイヤーのデベロッパーリレーションよりは遥かに簡単なので、デベロッパーに説明するのも楽ですね。今はこの仕事を楽しんでいます。
日本代表の嘉門さんにインタビューした際、パブリッククラウドにとってAivenは良いお客さんだと言っていました。それは変わりませんか?
Kowall:パブリッククラウドベンダーとの関係は一言で言えば、Love and Hate(愛と憎しみ)ですね。パブリッククラウド上に大量のデータを使う顧客を連れてきてくれるという意味では彼らはAivenを愛してくれますが、簡単に他のパブリッククラウドに移行できてしまうということで顧客がいなくなってしまうことを意味しています。なのでその部分では憎まれています。ただこれはAivenのビジネスの根幹なので仕方ないですね。
Aivenのビジネスはサービスとして提供することですが、オープンソースソフトウェアとの関係を教えてください。
Kowall:我々の提供するサービスに関連するソフトウェア開発については、オープンソースソフトウェアであることを徹底しています。これは顧客をロックインしたくないからというのが主な理由ですが、それはAivenの創業以来変わらない想いでもあるんですよ。パブリッククラウドのデータベースは往々にしてオープンソースを使っていながら、そのプラットフォームのサービスと接続するために独自のAPIを使います。これはロックインに他ならないと思います。我々は顧客がロックインされないことを望んでいます。オープンソースを使う、貢献するというのは、私自身の考えではなく創業からの思想なんですよ。ですから社内にはOpen Source Program Officeが組織として設置されています。そこには25名くらいのエンジニアがいますが、彼らの仕事はオープンソースソフトウェアに貢献することだけです。私がJaegerにコントリビューションしているのは言ってみれば私の趣味ですが、Aivenの思想とはとてもマッチしていると思っています。
オープンソースソフトウェアに企業としてコミットしていることはわかりました。でもマイナスとなる部分はありませんか?
Kowall:あるとしたらイノベーションの速度が遅くなることかもしれませんね。クローズドでソフトウェア開発をすれば、社内や部門の承認をとれば何かを決定するのは簡単です。でもオープンソースソフトウェアにおいてはコミュニティとの合意が必要です。多くのコントリビュータの合意を取ったうえで開発を進めるために、全体として開発の速度が遅くなることが欠点の一つでしょうね。しかしソフトウェア開発においてはオープンで行うことが最適であると思っていますので、Aivenはこの方向で行くと思います。
オープンソースコミュニティへのコミットに関しては何か社内でルール化されているんですか?
Kowall:今のところ、そういうものはありませんね。まだ社員全員で500名くらいの会社なので全員の顔と名前が覚えられますし、社内のコミュニケーションは良好ですのでまだ特に必要ないと思います。
今回のKubeConではWebAssemblyがバズワードになっていますが、Aivenとして何かコメントはありますか?
Blanc:WebAssemblyは確かに今回すごく盛り上がっていますね。前日のWASM Dayも盛況だったと聞いていますし、私はWebAssemblyのチュートリアルのコースに参加するつもりです。デベロッパーリレーションとしてはとても興味があります。
Kowall:個人的には興味はありますが、AivenとしてはまだPythonなどの言語を使ってプログラミングを行う顧客が多数だと思いますので、まずはそういう顧客をサポートしていくことが大事だと考えています。その部分をさらに強化していきたいと考えています。
リサーチャーからAppDynamicsやLogz.io、そしてAivenのVP of Product Strategyというキャリアから、落ち着いた口調でインタビューに答えてくれたKowall氏だった。フィンランドが本社のAivenで働くことについて、冬にフィンランド本社を訪れた時は余りに気温が低くて驚いた、でも宿泊しているホテルの部屋にサウナがあって毎晩利用していたと語ってくれた。今は温暖で海があるマイアミの暮らしが気に入ってるという。KafkaやOpenSearchにも貢献を行っているというAivenが、アプリケーションレイヤーでどのようなイノベーションを起こしてくれるのか期待したい。
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