DWHの定着化とBICC、活用促進
分析専門集団からBICCへ
数年前から、BICC(Business Intelligence Competency Center)という概念が流行しています。
市場調査会社の米Gartnerが2008年あたりから提唱していますが、BICCとは、分析専門集団を、企業としてもっと組織的・専門的に進めた形態になります。
BICCのミッションは、「エンドユーザーからのニーズに応じたDWH分析作業の代行」と、「エンドユーザー部門へのDWH活用の啓発活動」です。
ユーザーに代わって分析作業をするわけなので、業務内容を十分に理解している必要があります。
また、業務知識以外に、以下の3つを必要とします。
- 各部門から流れ込んでくる大量データをうまく加工する知識と技術
- 統計解析の知識と技術
- データ・マイニングの知識と技術
BICCは、企業組織内での位置付けが重要
BICCは、IT部門寄り、ユーザー部門寄り、その中間、という風に分かれます。それぞれに長所と短所があります。
筆者が訪問したユーザー企業では、どの部門の発言権が強いかによって、BICCのポジションが決まっていました。
重厚長大な業種/業態ほど、ユーザー部門の権限が強く、BICCとしての役割も持ち、IT部門はホスト・コンピュータのお守りに徹(てっ)していました。
しかし、最近では意識も変化してきて、IT部門の中にBICCとしての役割を持たせようとする企業も多くなってきました。
IT部門の中にBICCを設置した場合、システム面の課題はよく整理され、解決に向けてのアクションが取りやすくなります。この反面、BIツールの機能面の比較検討だけに陥りやすく、ユーザー部門の真のニーズに気付かず、使いにくかったり、即時対応できなかったりといった問題が起こりやすくなります。
ユーザー部門の中にBICCを設置した場合、業務的な目線で情報を分析できるメリットがあります。その反面、データの整合性がとれなかったり、あるいはBIツールの選択がばらばらになってしまったりする危険性があります。
IT部門とユーザー部門の中間にBICCを設置した場合、その人選にも注意が必要ですが、IT部門と業務内容がバッティングする可能性があり、業務的なコンフリクト(衝突)が発生する危険性があります。常に、お互いの目的をはっきりさせた上でコミュニケーションをとる必要が生じます。
もう1つ、部門横断的なBICCを作る方法もあります。強力なリーダーシップを持って全社的にBICCを進める場合には、非常に早く組織が立ち上がって効果的ですが、分析内容が散漫化/分散化してしまう可能性があります。また、各部門に担当者を置いても、責任の所在や目的が不明確になってしまい、尻すぼみになってしまう場合があります。
DWH活用を促進して事業を成功させる
第1回の冒頭で、学校教育などにおいてもDWHが活用されている点に触れましたが、人口動態の変化によって少子高齢化が進み、顧客層が変化してきたことで、ビジネス・チャンスの切り口も多様になり、ビジネスの解が非常に見えにくくなってきています。
DWHは今後、ますます巨大化し、その活用方法は多様化していきます。
すでに、地図情報との連携は当たり前です。例えば、住所の番地はまったく違うのに、実は通りを隔てて向かい合わせの場合も多く、その対応によってCRM(顧客関係管理)のあり方も変化しています。
このように、世の中にあるデータの8割は、非構造化データ(文章、画像、映像、音楽等)です。これらと構造化データ(数値データ)と合わせた分析が進んでいます。
社内に目を向ければ、提案書や各種ドキュメントの傾向を分析し、売り上げに貢献している「提案内容」や「キーワード」を洗い出し、“KnowWho”(その内容について、誰が一番詳しいか)を共有しています。
コンタクト・センターでは、大容量のDWHとテキスト・マイニングを連動させ、目の前にいる顧客に関する最新の取引状況を表示しながら、推奨すべき商品を表示しています。これをアクティブDWHと呼びます。
本連載は、これで終わりですが、今後、DWHは、大容量、超高速、リアルタイムへと、さらに近づいていきます。このための技術がアプライアンスなどによって簡素化されていきます。
こうした中、DWHが常に重要であり続けるのは、「情報活用」と「情報の融合」です。企業が成功できるかどうかは、さまざまなデータをアイデアと各部門の協力によって組み合わせることができるかどうかにかかっています。