事例で見るBlackBerryの導入効果第3回

Web開発の注意点とポイント

先述した通り、Webアプリケーションの開発だけであれば、RIMから提供されている開発ツールを利用する必要はありませんが、BlackBerryシミュレータを用いたテストや、プラグインを用いたJavaScriptのデバッグなどによって、開発効率が上がります。

BlackBerryのWebブラウザはフル・ブラウザです。このため、解像度の面では、PC用のWebアプリケーションを開発する場合と同様になります（図2-1）。

ただし、BlackBerryのWebブラウザは、Internet ExprolerやFirefoxなどと完全に互換性があるわけではなく、独自の実装を持っています。PC用のWebブラウザで利用できるWebアプリケーションが100％利用できるわけではありません。

よって、シミュレータもしくは実機での動作確認を実施することを推奨します。また、BlackBerryのWebブラウザの処理系は、Internet ExprolerよりもFirefoxに近いものとなります。筆者も、BlackBerry向けのWebアプリケーションを作成する際には、初期段階では Firefoxを多用しています。

既存のWebアプリケーションを新たにBlackBerryに対応させた場合、一般には、更新されたサーバー側のデータにアクセスするためのURLをメールでエンドユーザーに通知します。ただし、この方法では、データを利用したいときに端末が電波の圏外のエリアにあると、アクセスできません。

ここで、BlackBerryでは、Webアプリケーションであっても、Webブラウザのキャッシュという形で、Webコンテンツ（HTML、 JavaScript、CSSなど）のプッシュ配信が可能です。Webアプリケーション（コンテンツ）をBESに読み込ませておき、そのコンテンツ自体を BlackBerryのWebブラウザのキャッシュとしてプッシュ配信するという方法です。ユーザーが気付いた時には、端末上ではすでにキャッシュされているため、圏外であってもユーザーは更新情報をオフラインで読み取ることができます。

BlackBerryのWebブラウザがサポートしているタグやJavaScriptなどの仕様は、RIMのWebサイトで公開しています。日本語に翻訳されたものもあります。

Javaアプリ開発のポイント

Webアプリケーションの形態は、開発工数を抑えることができる反面、主にWebブラウザを経由したサーバー側での実行となるため、利用できる機能に制限が出てきます。また、BlackBerryの各種アプリケーションでは利用できている、ショートカット・キーによる快適な操作感も実現できません。

制限が少なく、利便性を追求したい場合は、BlackBerryの機能を最大に引き出せる開発手法として、Java言語によるクライアント側アプリケーションの開発が必要になります。

BlackBerryのクライアント開発は、モバイル用のJava規格であるJ2ME（Java 2 Platform, Micro Edition）がベースになります。これに加え、BlackBerryが自前で用意している各種機能のAPI（Application Programming Interface）を公開しているため、これらを組み合わせてコーディングを行います（図2-2）。

BlackBerryが用意している独自APIは、Javaのスキルがあれば簡単に利用できます。ただし、UI系のコンポーネントに関しては、そのフレームワークに沿ってコーディングを行わないと意図した通りには機能しません。BlackBerryの開発が未経験の場合は、サンプルを確認しながら段階的にスキルを習得する必要があります。

ある程度BlackBerryの独自APIに慣れると、開発した業務アプリケーションと端末の各種機能を簡単に連携させることができます。メールや PIM情報、電話機能との連携のほか、各標準機能のメニューに独自のメニューを追加して標準機能を拡張するためのAPIも用意しています。

なお、Javaアプリケーションを作成する際には、BlackBerry標準のメールやWebブラウザなどが採用している、標準的なショートカット・キーやメニューの配置などを参考にして実装することを推奨します。

マルチプラットフォーム展開をしているソフトウエア・ベンダーの中には、すべてのプラットフォームで同様の操作感を実現している場合もありますが、一般的には、BlackBerryのユーザーが慣れているUIデザインやショートカット・キーを利用できるようにした方が、最終的にはユーザーの評価も高くなります。

次ページでは、BlackBerry端末と業務サーバー側のネットワーク接続アーキテクチャの設計と開発について、ポイントを解説します。