ディープラーニングでビジネスする企業の事例が大集合 ーDeep Learning Labイベント
ディープラーニングに関する開発事例や最新技術動向を発信するコミュニティ「Deep Learning Lab」は、4回目となるイベント「Deep Learning Lab コミュニティ イベント 第4回」を10月24日に開催した。
実際にディープラーニングでビジネスしている企業や、そのためのプラットフォームを作っている企業などから、リアルなユースケースが語られた。
- MicrosoftのAI関連の最新情報
- キカガクによるディープラーニングの教育事業
- ALBERTの画像分類やチャットボット、類似図形商標検索システムの事例
- 日本ディープラーニング協会のG検定とE資格の試験
- クラウドでHPCクラスタを簡単に構築できるXTREME DNA
- UEIの子会社としてAI人材育成の株式会社AIUEOを設立
- PFNのディープラーニングよもやま話
- Ridge-iの彩色AIとAIの課題
- NVIDIAのGPUラインナップとディープラーニングやHPCへの適性
MicrosoftのAI関連の最新情報
日本マイクロソフト株式会社の畠山大有氏は、9月に米国で開催されたイベント「Microsoft Ignite」で整理されたMicrosoftのAI関連のサービスや製品を紹介。特に、学習済みのAIを使えるCognitive Servicesの話題は省略し、ツールを中心に解説した。
まずは、データサイエンス仮想マシン(DSVM、旧名ディープラーニング仮想マシン)が紹介された。データサイエンスや機械学習に必要な環境をプリインストールしたMicrosoft Azureの仮想マシンで、最近ではChainerもサポートしている。
続いて、AzureのGPUインスタンス。新しくNCシリーズにTesla P100を積んだ「NCv2」が追加され、またTesla P100を積みInfiniBandネットワークに対応した新「ND」シリーズが登場したことが紹介された。
ここで畠山氏は、データサイエンスの現場の動向として、データサイエンティストのほかに開発者がAIに取り組み一部はデータサイエンティストを目指していることなどを挙げた。また課題として、データの準備が8〜9割の工数をとること、モデルの管理、モデルについての責任などを挙げた。
これらに対応したものとして、モデルのデータを管理する機能を持った「Azure Machine Learning Workbench」を畠山氏は紹介した。MacとWindowsのデスクトップツールだ。Azure Machine Learning WorkbenchはAIツールの中で、コードファーストのツールとして作られたという。特徴としては「使い慣れた環境とツールを使える」ことを畠山氏は語った。
実際にAzure Machine Learning Workbenchを畠山氏はデモしてみせた。いろいろサポートされたデータソースの中でAzure Blob Storageを選んでインポート。まず1000件をサンプリングし、missingのある項目を加工したり、データのGPS情報を地図にプロットしたりしてみせた。
さらに、日付のフォーマットがばらばらなのを、1件について変換後の値を入力するとほかのデータについても推測してくれる「例をもとに加工」の機能も実演した。
キカガクによるディープラーニングの教育事業
株式会社キカガクの吉崎亮介氏は、ディープラーニングの教育事業の成果について紹介した。同社は主に機械学習の教育をメインにした会社で、創業10か月でオフラインで指導した人数が1,000人にのぼるという。
同社では、本を読んだだけでは挫折しやすいという考えから、手を動かしながら学ぶ方針をとっている。特に、プログラミングだけでなく手書きで数学も学び、原理原則を理解するという方針だ。
また、実装から入るのではなく、画像処理やテキスト処理といった前処理の段階から学ぶことで、実践的なカリキュラムとしているという。
「To Be」としては、「講師となる新人に教えるだけでは効率が悪い」と吉崎氏は言い、新人が先輩のフォローを受けながら講師を務めることで、アウトプットしながら知識の質を向上させる計画が語られた。
ALBERTの画像分類やチャットボット、類似図形商標検索システムの事例
株式会社ALBERTの上村崇氏は、ディープラーニングによる画像分類を使ったビジネスについて紹介した。同社では、コンサルティング、モデルチューニング・精度検証(PoC)、プロトタイプ開発、システム化の4つのステップで顧客企業のビジネスを支援するという。
上村崇氏は、2015年に開始した画像分類サービスの事例を紹介した。大手アパレル通販企業の事例では、商品写真からメンズ、レディース、キッズなどに自動でタグづけた。
そのほか、自動運転のためにカメラ画像から車両や構造物を検出する応用や、建造物の劣化診断、医療分野での細胞のクラス分類、ペットの皮膚科の獣医を派遣する企業で事前に写真からAIで診断する例などが紹介された。
自社ブランドでのプロダクトやサービスとしては、まず自動ターゲティングサービス「Gripper」が紹介された。顧客が過去に買ったり見たりした商品だけでなく、製品の見た目や特徴を学習してターゲティングするものだ。事例としては、アパレル通販の「FLAG SHOP」では、カタログ送付先を親和度の高い人に絞ることで広告効果が1.6倍になったという。
続いて、AIチャットボット「Proactive AI」。チャットボット型接客ツールで、プロアクティブ型サポートが可能になるという。事例としては、渋谷区のOne to One子育て支援サービスや、ワイン選びができるキリン株式会社(メルシャン)「ワインすき!」が紹介された。そのほか、社内利用として、数千人いる営業マンからの商品についての問い合わせに答える事例もあるという。
また、類似図形商標検索システム「Deepsearch Logo」は、ロゴから既存の商標登録されている類似ロゴを検索するものだ。これは、東京オリンピック・パラリンピックのロゴが問題になったとき、インターネット上で話題になった。
日本ディープラーニング協会のG検定とE資格の試験
一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)の岡田隆太朗氏は、10月4日に設立が発表された同団体について紹介した。設立目的は「ディープラーニングによる日本の産業力向上」で、理事は東京大学の松尾豊氏。
活動分野は5つ。産業での活用促進を中心に、社会提言、社会との対話、人材育成、国際連携に取り組むという。
産業での活用促進の分野では、ノウハウ不足に対して事例の共有を、事業者不足に対して業界連携を、スケール不足に対して組織化をはかる。
人材育成の分野については、2020年までに不足が見込まれるAI技術者が4.8万人いるという。そこで、事業に応用できる人材の「G(ジェネラリスト)検定」と、実装できる人材の「E(エンジニア)資格」の2つの資格を設ける。これにより、自習のための体系化や、企業研修でのカリキュラムなどへの効果を見込む。資格取得者としては、2020年にG資格を10万人、E資格を3万人の目標が語られた。
クラウドでHPCクラスタを簡単に構築できるXTREME DNA
「スパコンの民主化」を掲げるエクストリームデザイン株式会社の奥野慎吾氏は、クラウド上でHPC(スーパーコンピューター)環境を簡単に使えるサービス「XTREME DNA HPC Cloud」、特にその中で分散深層学習フレームワークChainerMNのテンプレートを紹介した。
同社はもともと、スーパーコンピューターのアーキテクトとクラウド屋(奥野氏のこと)の2人で起業し、クラウドを利用した仮想スーパーコンピューターを提供している。
奥野氏は、マルチノードでの並列処理の難しさとしてハードウェア、クラスタ構築、プログラミングの各レイヤーの難しさを語った。そして分散深層学習においては、プログラミングをChainerMNが、ハードウェアをMicrosoft AzureのGPUインスタンスが簡単にするとして、「クラスタ構築はXTREME DNAにお任せください」と語った。
XTREME DNAでは、10分程度でクラスタを構築して、必要なときに何度でも作れるという。あくまでSaaSではなく、IaaSをChainerMNなどの「テンプレート」でラップした「Nx-SaaSモデル」で提供している。
奥野氏は実際にその場で、Webダッシュボードにログインしてクラスタを作成し、sshログインやJupyter Notebookで利用してみせた。
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