分散処理に対応より「Chainer」が大幅な高速化へ、「iOS用Chrome」オープンソース化、ほか

2017年2月3日(金)
吉田 行男
OSS界隈に造詣が深い吉田行男氏が、この一週間に起きたOSS業界の注目すべきトピックをセレクトして、お届けします。

こんにちは、日立ソリューションズの吉田です。

2月に入り、そろそろ梅の便りが届く季節になってきました。1月は例年より寒さの厳しい日が続きましたが、確実に季節は春に近づいているようです。

今週もOSSに関する注目すべきトピックを取り上げましたので、ゆっくりとご覧下さい。

レッドハット、3scaleのAPI管理ソリューションを国内販売

レッドハット(株)社は1月27日、API管理ソリューション「Red Hat 3scale API Management Platform」を国内で正式に販売開始しました。Web APIのモニタリングやセキュリティ、トラフィック管理、課金などのためのソリューションで、2016年6月に米国レッドハット社が米国3scale社を買収してラインナップに加えました。2016年秋からレッドハットブランドで販売しており、以前からの顧客を含めて700社以上の顧客がいるそうです。

(参照記事:http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1041368.html

レッドハット、コンテナプラットフォームの最新版「Red Hat OpenShift Container Platform 3.4」をリリース

レッドハット関連のトピックをもう一点お届けします。米国レッドハット社は1月26日、コンテナアプリケーションプラットフォームの最新版「Red Hat OpenShift Container Platform 3.4」を発表しました。「Red Hat OpenShift Container Platform」は、コンテナ型仮想化技術「Docker」と、Docker管理ツール「Kubernetes」を用いて構成されるコンテナアプリケーションプラットフォームで、最新版のバージョン3.4では、複数の異なるストレージタイプに対して動的にプロビジョニングする機能を備えます。またKubernetesも、最新版のKubernetes 1.4に刷新されました。

(参照記事:http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1701/27/news070.html

AWSの深層学習フレームワークMXNetがApacheソフトウェアの一員に 対TensorFlow戦略の一環

米国Amazon Web Services社の推奨ディープラーニングフレームワークMXNetが1月30日、Apache Incubatorに加わりました。このインキュベータに受け入れらることは、オープンソースのプロジェクトが米国Apacheソフトウェア財団(ASF)の一員になるための第一歩です。ASFは、何千人ものデベロッパーによる、世界中のさまざまなオープンソースプロジェクトのメンテナンス努力を支えています。今後はMXNetも、Apche流儀の実績豊富なオープンソース方式を採用し、またApacheのコミュニティにアクセスできる利点も享受していくことになります。MXNetは、デベロッパーによるディープラーニングモデルの構築を助ける、今や数多いフレームワークの一つで、それらを使えることによってデベロッパーは、ユースケースごとに「車輪の再発明」することを避けられます。

(参照記事:http://jp.techcrunch.com/2017/01/31/20170130mxnet-accepted-to-the-apache-incubator/

PFNの深層学習フレームワーク「Chainer」が大幅な高速化へ、分散処理に対応

(株)Preferred Networks(以下、PFN)社が開発するディープラーニングフレームワーク「Chainer」が間もなく、分散処理に対応することで大幅に高速化する予定です。PFNの西川徹社長が、1月26日に米国サンフランシスコで開催された「Deep Learning Summit 2017」で明らかにしました。現在の「Chainer」は、マルチノードでの学習に対応しておらず、1台のノード上で複数のGPUを使用する場合も、どのGPUでどの処理を実行するのかをプログラマーが記述する必要がありました。PFNはマルチノードでの学習に対応した分散バージョンの「Chainer」を開発中で、社内ではテストも始められています。この分散バージョンの「Chainer」では設定を変更するだけで、マルチノード環境やマルチGPU環境に対応します。分散バージョンの「Chainer」は、ノードの台数に比例して性能が向上するそうで、PFNの検証では、32ノード/128GPUの環境で分散バージョンの「Chainer」を使って画像認識を学習したところ、1ノード/1GPUの環境で20日以上かかっていた学習が、4.4時間で完了したそうです。

(参照記事:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/012700269/

Google「iOS用Chrome」をオープンソース化、エンジンの違いを克服

米国Google社は1月31日、iOS用Chromeブラウザのオープンソース化を発表しました。現在、Chromiumプロジェクトのリポジトリで公開されています。ChromeはBlinkをレンダリングエンジンとしていますが、iOS版だけはiOSプラットフォームの制限でSafariが採用するWebKitを用いており、ChromiumにiOS版を加えることは、BlinkとWebKitの両方をサポートすることを意味します。ここ数年にわたり、iOS用ChromeをChromiumプロジェクトのアップストリームとするのに必要な変更を加える作業が進められていました。iOS版のChromiumは他のプラットフォーム向けChromiumと同じようにコンパイル可能で、チェックインされたコードをすぐに試すことができます。Chromiumコミュニティ全体がiOS版Chromeのテストに参加できるようになったことで、開発スピードの向上が見込めます。

(参照記事:http://news.mynavi.jp/news/2017/02/01/030/

SAPジャパンなど3社、Hadoopでのビッグデータ活用を容易にするアーキテクチャーを開発

SAPジャパン(株)とマップアール・テクノロジーズ(株)(MapR)、レノボ・ジャパン(株)の3社は1月31日、Hadoopでのビッグデータ解析を容易にするレファレンスアーキテクチャーを発表しました。SAPのインメモリー処理製品で構築した基幹系システムと、MapRの高速なデータ処理製品を組み合わせます。SAPジャパンとMapR、レノボの共通パートナーを通じて、ホワイトペーパーを無償で提供します。3社が発表したアーキテクチャーは、質の異なるシステムから得た大量のデータを高速に分析するシステムを構築するためのもので、会計や在庫管理といったSoR(Systems of Record)と、スマートフォンやSNSを介して消費者にサービスを提供するシステム群であるSoE(Systems of Engagement)を連携します。3社は同アーキテクチャーを開発するにあたり、SoRとSoEを想定したシステムを構築、両者を連携させて動作状況を検証しました。

(参照記事:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/013100313/

編集後記

編集後記米国ではトランプ大統領が就任早々次々と大統領令を発令し、いろいろと物議を醸し出しています。特にIT業界では、外国人の入国に関する大統領令に、敏感に反応しています。まだまだこの騒ぎは続くと思いますが、その影響でIT業界の発展が阻害されることにならないよう祈りたいと思います。

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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